HB
家に帰ってからはずっとベッドに横になっている。 眠くはない。 生徒会室の古泉と、部室での古泉が、頭から離れない。 夜に思い浮かべるのは朝比奈さんの天使のようなお姿だけだと決めていたのに、 どうしてこうなったんだ? 何度も携帯を開いてはメモリーを回した。 電話にしようか、メールにしようか、 古泉の名前を見ては、 かける言葉を探して伝えようと思うのに、 結局何もできない。 駄目、だ。
「寝不足?いつも授業中寝てるくせに」 翌朝、いつものように後ろからハルヒに声をかけられる。 「そう見えるか」 「クマ出来てる。そんな夜中まで古泉くんと仲直りしてたわけ?」 冗談のつもりだというのは分かってる、 けど妙に意識しちまって、落ち着かない。 もし昨日のことをハルヒに知られたら、 閉鎖空間の発生程度では済まされないだろう。 「ちゃんと仲直りしたんでしょうね」 「当たり前だろ。そもそも喧嘩してたわけじゃない」 「ふーん。ま、あたしはみんなが仲良くやれればいいのよ」 力を合わせなきゃ、世界を大いに盛り上げるなんてできないんだから、 とひとりごとにしてはでかい声で呟いて、 朝のホームルームより前にハルヒは寝る準備を始めた。 あんなことまでさせたんだ、普通に、ふつうに、接してやらないと。 そしてこんな日に限って、ハルヒに食堂に誘われ、 行く途中、 会長と古泉と、鉢合わせになった。 「あっ!あんた、またうちの団員を人質に取る気っ!?」 なあハルヒ、お前の言ってることが間違いじゃないから、 冷や冷やするよ。 俺はあまり演技がうまくないんだ。 学芸会だって、自ら進んで木の役をやった俺だぜ、 古泉みたいな自然な笑顔、出せるわけないじゃないか。 「人聞きの悪い言い方はやめたまえ。程度が知れるな」 「何ですって!」 「まあまあ・・・涼宮さん、これから昼食ですか?ご一緒してもよろしいでしょうか」 「古泉くんはいいけど、そっちはだめッ!」 「こちらだって願い下げだ」 「あー、まったく、ハルヒ、腹減ったからさっさと行くぞ。古泉も、ほら」 袖を引いてやる。 古泉は少し困ったように笑って、肩をすくめた。 「副団長が、生徒会長と仲良く昼飯ってわけじゃないよな?」 「はは、そうですね、勿論です。では会長、僕はここで」 「ふん・・・まあ、いい。食堂を荒らしてくれるなよ、涼宮」 子供っぽく舌を出して悪態をつくハルヒには目もくれず、 俺と古泉を一瞥して会長は去っていった。 放っておけばハルヒが勝手に話してくれる。 俺は適当に合わせて聞いていよう。 食堂に入って適当に定食を取り、座って、 ハルヒと古泉が来るのを待っている間、 気付いた。 「・・・な、」 部室前にいた奴ら、そして昨日、生徒会室にいた奴らのうちの、 何人もが、食堂のあちこちに座って、古泉を見ている。 ずっと見ているわけではなく、 自然に、食事中のありふれた光景の中で、ちらりと視線を動かすだけだ。 離れたところから意識して見なければ気付かない。 お前らは、ハルヒの監視が仕事じゃないのかよ、 ハルヒより、明らかに、古泉を見てるじゃないか。 あいつ、分かってるのか? 毎日、こんな風に見られてるのか? 「大盛りにしてもらえたわっ」 「さすが涼宮さんです」 「古泉くんも交渉力ってものを身につけた方がいいわよ」 「勉強になります」 その量は男女逆だろ、いつもなら、そう言える。 「キョン?大丈夫?あんた、顔色悪いわよ」 「真っ青ですね。貧血でしょうか」 「い、いや・・・何でもない」 「そうは見えないわね。保健室に行った方がいいんじゃない」 ハルヒがここまで心配するとは珍しい。 相当、顔色が悪いってことか。 確かに少し、頭もクラクラしてきた。 けど、ここで、古泉を放置出来ない。 ハルヒと一緒とはいえ、いつ飛び出していくかわからん奴だ、 昼休みが終わるまで古泉を見ててやらないと。 「食えば良くなるさ」 「そーゆーもの?」 「ああ」 「無理はしないでくださいね」 無理してるのは、お前だろ。 何で俺は、こいつとやっちまったんだ。 古泉ほどの覚悟もないのに、 逃げ出したくて、あんな、ことを。 「・・・すまん、やっぱり、ちょっと」 「次岡部だし、言っといてあげるわ」 「ああ、頼む。・・・古泉」 視線を投げる。 分かるよな、分かってくれ。 「保健室まで、僕がお送りしましょう」 希望通りのことを言って、食べかけの昼飯を、俺の分と一緒に持っていった。 耐えられない、こんな視線には。 俺なら、こんなのを毎日やられたら、気が狂う。 「保健室、こちらですよ」 「行かない」 「えっ?」 「部室、行こうぜ」 心配そうにしていた古泉の顔から血の気が引いた。 違うんだ、 部室に行くからって、 またやろうって意味じゃない。 「は、い・・・」 ・・・全部、部室に行ってから話そう。 廊下じゃ落ち着かない。 ひんやりとした部室に、また古泉と二人きりだ。 今日は部室の前まであいつらがついてくることはなかった。 俺の気分も少し、回復してきた。 後ろ手にドアを締めて、鍵までかけて、 古泉はそこに突っ立ったまま、俯いている。 「古泉」 声をかけて近寄ると、びくっ、と体を震わせて俺を見た。 なんで、そんなに怯えてるんだよ。 俺はそんなつもりじゃないぞ、 他の奴らとは違う。 もう、昨日みたいなことなんかしないから、 「わ、分かってます」 顔をあげて無理やり笑顔を作って、こちらに歩み寄り、 その、手が。 「何すんだよ!」 いきなり足の間に伸びてきて、咄嗟にその手を払った。 びっくりした顔してるけど、驚いてるのは俺だ! 何を考えてるんだよ、 お前、意味わかんねえ、 なんでそうなる。 あんなに泣いてたくせに、 嫌がってたくせに、 分かってますってなんだよ、何も、分かってないじゃないか。 「ごめんなさい、ごめんなさい・・・何からしたら、いいでしょう」 「・・・・・・・・・」 開いた口がふさがらないとはこのことか。 何から、って。 俺も俺で、 さっさと古泉の誤解を解けばいいのに、 言葉がうまく出てこない。 真っ赤な顔でどうしたらいいのか悩んでいる古泉を見ていると、 変な感情が、 ありえない感情が、 体の奥から湧き上がってくる。 「すぐに脱いだ方が、いいですか?」 考えた結果がそうなったらしく、 俺が頷いたわけでもないのにブレザーを脱いで、 ネクタイを緩めて、ベルトにまで手をかけた。 その時点でやっと腕を掴んで止めようとしたものの、 勢いがつきすぎてドアに押し付けるようになってしまった。 何、 やってんだ、 あんなに反省したのに、 もう絶対にやらないと思ったのに、 だけど、こいつの顔見てると、声を聞いてると、 普段とはあまりにかけ離れていて、 「あ、あ・・・・・・!」 緩んだ制服の襟、 そこから見える首筋を、舐めた。 真っ白で、 普段は見ることが出来ない場所。 目を凝らすと鬱血した後があって、 誰かにやられたんだろうと容易に推測が出来る。 昨日の古泉の感覚が頭に体に戻ってくる。 気持ち、よかった。 古泉の体も、舌も、指も声も、全部気持ちよかった。 頭では絶対にやらないと決めていた、それは本当だった。 なのに古泉が、あんなことを言うから、 こんな顔をするから、悪いんだ。 「あな、たが、そんなこと、しなくても・・・!」 「うるさい」 首筋を吸うわけでもなくて舐めてるだけなのに、 古泉の体は面白いほどよく震える。 立たせたままだとやりにくいから床に押し付けて、 膝を押し付けながら同じことばかり続けていると、 泣きそうになりながら肩を掴んできた。 「はあ、う、きもち、いいですっ」 俺が喜ぶとでも思っているのかしきりに声を上げて、 押し付けた膝にも自分から腰を動かしてあててくる。 バカ、ほんと、お前、バカだろ、 「っ!!!」 少し痛いかと思うくらい、力を込めて押してやる。 大きく体を揺らして、古泉が言葉を飲み込んだ。 同じくらいの力で続けて押していくと、 涙を流して、肩を掴んでいた力を強くする。 「そんな、されたら、いっちゃいます・・・!」 こんなので、出るわけないじゃないか、 大体お前、その状態で出したら制服ひどいことになるぞ? 我慢しろよ。 このくらい、いつもされてるんだろ。 平気なんだろ。 ぐりぐりと更に強く刺激しながら、 首筋にも強く吸い付いた。 消えかかっていた痕を、もう一度作ってやる。 今度は、俺が。 これは俺の、証だ。 「ご、め、なさっ・・・・・・!!!!」 古泉の体が上下に跳ねて、 直後に、膝に暖かいものを感じて、すぐに体を離した。 見下ろした古泉の姿は部室に入ってきたときとは大きく異なっていて、 目元まで真っ赤になって泣きながら荒い息を吐いて、 制服は一部分だけ色が変わってる。 マジ、かよ。 普通イかねえだろ、この状態で。 「はあっ、あ、あ・・・」 こいつはやっぱり、普通じゃない。 「ごめんなさい、僕・・・僕も、口で」 「いや・・・しなくていいから、それ、何とかしろよ」 「でも、僕だけじゃ、」 「いいって。気持ち悪いだろ、そんなの・・・」 「すみません。ありがとうございます」 小さく頷いてブレザーで隠して、古泉は部室から出て行く。 俺はおいかけることもせず、かといって教室に戻る気もない、 すっかり放心状態だ。 俺がなんとかしてやるなんて無理だ。 ここまできたら、もう、無理だ。 俺だって共犯者じゃないか、 あの忌々しい生徒会長達の。 どうなるんだ、これから。 あいつ気持ちいいんだったら、 あいつがそれを望むんだったら、 このままやってて、 いいのか・・・?
久々すぎて感覚忘れてますが相変わらず酷い内容ですみません。
古泉どんだけまわされてんd(自重