彼を見ていたのは確かで、
彼を意識していたのも確かです。
ただそれは…観察対象というか、
どんなところに彼女が惹かれているか、とか、
こんなメンバーの中で順応してしまう秘訣を探りたい…とか、
そういうことだったんです。


彼はそんな僕の視線に勘違いをした。
あろうことか、僕が、彼を好きだという方向に。
そしてさらにあろうことか、
僕は、否定しなかった。
流されてしまいました。その場の空気に。


これはかなり想定外



昔からよく勘違いされることはあって、
クラスの女の子から「両思いだと思ってたの」なんて言われたことも、
何度かありました。そんなに深い話なんてした覚えはないのに。
ただただ笑って、中身のない会話をしていただけなのに。

彼とは、それと同じ、訳じゃない。
彼が特別なのは間違いありません。
能力や世界のことについて話ができる一般人など、ほかにはいませんから。


「考え事か?こんなときに」


思考回路に彼の声が入り込んできて、一時停止。
今いるのは…彼の部屋。
ああ、またその場の雰囲気に流されて、来てしまいました。
そして流されたまま、抱き合って、キスまでしている。
何度目かは分からないけれど、
今更、これを想定していなかったなんて愚かなことは言えない。


「古泉」

より深くそうすることで僕の気持ちを向けようと、
彼の舌がおずおずと入り込んでくる。
きっと彼にとって僕が初めてだろうそのキスは、
いつもぎこちなくて、可愛らしい。


なんて、余裕ぶれるほどの余裕も、僕にはないんですが。


少し痛いくらいに背中から抱きしめられて、
何度も何度も、口付けを繰り返す。
だんだん彼も僕も息が荒くなるのが、分かる。


彼の唇が耳や首筋まで滑ると、
なんともいえない快感がこみ上げてきてうずうずする。



これから先は、まだしたことがありません。
さすがに僕も男だから、これ以上の行為には抵抗があります。
この流れだと…確実に僕が下、ですよね…。


彼はいつも、僕の表情を見て、声を聞いて、
タイミングを見計らっているようで。
したくない、わけではないけど、恐怖も、ある。


「すみ…ません、今日は、もう。帰らないと」
言葉でやんわりと拒否を示すと、あからさまに不快な表情で返される。
すみません、やっぱりまだ、勇気は出ないんです。

シャツを襟まで締めて、鞄を手に取り、立ち上がる。
また明日、学校で。
笑顔を彼に向け、そう言おうとしていたのに。



「うわっ…!」
強い力で腕を引かれ、鞄は投げ出されて、体はベッドに投げ出されてる。
壁にぶつけた後頭部がじんじんと痛む。
いきなり、何をするんですか、あなたは。

「マジでもう我慢できねえ」
「はい?」
「いつまでも焦らしやがって…」
馬乗りにまたがってくる彼の顔や声が怖いくらいに興奮している、
いえ、
実際、怖いです!


「ま、待ってください、ここはあなたの自宅ですよ?!」
そう、だからいくらか、安心していたんです。

「お前が黙ってれば大丈夫だろ」
「むむむ、無理ですよ!僕、初めてなんですから!」
「俺だって初めてだ」
「それは知ってます。だからダメです!」
「うるさい奴だな、いいから抱かせろ」
「お、落ち着いてくださいっっっ」


ぐぐぐ、と腕で引き剥がそうとするも、
予想以上に強い彼の力で押し返される。
体勢的には、不利です!

「やめ、やめてくださいっ!」
「古泉っ!!」
「っ・・・」
「俺はお前が好きなんだよ。だから抱きたいんだよ。頼む」


真顔なんて・・・そんなことを言うなんて、やめてください。
本当に、本当に、そんな、覚悟をしてきてないんです。


「こい、ずみ・・・好きだ」


なのに、声を聞いていたら、
あまりに余裕のなさすぎる顔を見ていたら、
ああ、また、流されてしまいます・・・


だめ、です・・・




************




「古泉、もう、帰らないとまずいぞ、マジで」

時計の針が23時を示している。
確かに帰らないと、いけない時間です。
あなたのご家族にも、迷惑をかけてしまいます。

でも。
でも。


「無理です・・・動けません・・・」

顔を覆ってため息をついていますが、あなたの、せいです。


流されてしまった僕の責任でもあるけれど、
こんなに体が痛むなんて。下半身が・・・もう・・・


「ここまでとは、かなり、想定外だな」
「それは僕の台詞です・・・」


今日、
泊まっても、いいですか?



「別にいいけどな・・・じゃあ、もう1回」
「む・り・です!」


流されません、もう、絶対、流されたり、しませんから!


thank you !

一番悩んだお題でありました。そして予想通りのgdgd具合。すみません。
キョン←古泉が多いので逆にしてみたら玉砕です。

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