※最初からやっとります。痛々しい話です。甘くないです。










「んんんっ」

唇の力を緩めた瞬間、舌の侵入を許してしまった。
流されてばかりではいけないと、いつも思っているのに。
抵抗したい、こんな不毛なことはやめてほしい、
こんな辛い思いなんてしたくないんです。


「はあ、はあ・・・」


長い間口付けられて、息が上がる。
苦しい。
かちゃかちゃと音がして、ファスナーを下げられる。
苦しい。



もどかしい距離



「お前、反応くらいしろ」

萎縮したままの僕を見て、不満そうに彼が呟く。
無理です。
痛いだけの行為が行われるというのに、
どうしたら反応できるんですか。


反応させるような気もなかったようで、
彼は僕の答えを聞くことなく、
液体の入った半透明の瓶を鞄から取り出す。
ベッドについた両腕が震える。
やめてください、何度そう言っても、やめられたことはない。


「うっ・・・」

冷たく、ぬるぬるした液体が塗りつけられる、乱暴に。
まだ何の準備もできていないのに、強引に突き入れられる指の感覚に、
自然と涙が滲む。情けないと分かっているけど、耐えられない。


「痛い、です・・もう少し、やさ、しく」


本当に、苦しい。


ただ彼の欲望のためだけに、体が侵される。
僕の言うことなんて聞いてもらえない。
優しくされたことも・・・キスは、少しだけ、優しいときもあるけれど。


「もう、いいだろ」


良くなんかありません。僕はまだ、全然駄目です。

それでも、
彼の侵入は拒めない。
舌も、指も、何もかも。


「あ、あああっ!」
「声がでかい、うるさい」


枕に顔を押し当てて、歯を食いしばる。
それでも完全に声は殺せない。
腰が打ち付けられるたびに、苦しくて、悲しくて、
胸が痛くなる。心臓が強く掴まれたみたいに、痛い。


耐える。
彼が全て吐き出すまで。


「んっ・・・こい、ずみ」


背後から聞こえる声。
名前を呼ぶ声。
僕を呼ぶ声。


「こいずみっ・・・!」


体が反応する。
呼ばれただけで。
余裕のない声が、僕を呼んでいる。
僕を求めている。

苦しいのに、どうしてでしょうか?


それが嬉しいなんて、
名前を呼ばれるだけで、たまらない気持ちになるなんて。


「古泉、古泉っ」
「あ、ああっ、う、んっ」

腰に添えられている彼の手が、汗ばんでくる。
爪を立てられて、痛いけれどその痛みは、嬉しい。


「も、駄目だ・・」

動きが早まると、痛みも強くなる。
必死に枕を握り締めて、堪えて、彼を受けとめる。
彼は最後に、いつも、何度も、僕を呼ぶ。
それは他の誰でもない僕を相手にしてそうしているということを、
彼が意識しているんだと思うと、体の熱が急上昇する。


***


金曜日の夜。
彼は自宅に一本電話を入れて、
今日は友達の家に泊まる、そう言って今は隣で眠っている。


背を向けて眠っている彼の髪に触れる。
起こしてしまわないように、少しだけ。
隣にいること。
それが嬉しい。


「あなたが・・・好きです」


静かな寝息が聞こえてくる、眠っているのは分かっている。
普段は言えないこと。
言ってしまったら、あなたはきっと困ってしまう。
僕の気持ちには十分気付いているけど、
僕が伝えたら、あなたは何かを僕に言わなければならないと、
そう思うでしょう。あなたは、そういう人だから。


「好きです・・・」


目が覚めていても、眠っているときも、
腕を回して抱きしめることもできない。
いつも体を重ねても、こんなに近くにいても、
どれだけ深い口付けをしても、
一番大切なことは伝えられない。


だから僕も背を向ける。

この距離さえ守っていれば、あなたは僕から離れない。



thank you !

見事にgdgdですね!
キョンは古泉好きですよ、好きなんですよ・・(2度目)
DV夫を見限れない駄目嫁みたいになっちゃってごめんなさい。本当ごめんなさい。



inserted by FC2 system