※まさかの谷×古です
※しかもまさかの古泉誘い受です
※ベ・・・ベースはキョン古・・・・









彼の声が聞こえる。
僕に向いている声じゃない。
僕の手元にあるゲームは途中で終わっていて、
向かいで遊んでくれていた人は、
彼女に引っ張られて部室を出て行った。



窓の外から聞こえる声。
ふざけるな、と叫ぶ声、
怒っているのに少し楽しそうで、
僕は胸が苦しくなる。


部室の中にただ一人、
小さな部室なのに広く感じて寒気がした。
ゲームをさっさと片付けて鞄を持って鍵をかける。
鍵を戻しに行く途中、
彼の教室の前を通った。







発情







もう生徒はみんな帰宅している時間で、
その教室にも誰もいない。
ふと、教室の扉を開けた。
よほどの用事がないとここには来ない。僕のクラスからは少し、離れている。



「・・・」


9組とは違う匂いがした。
彼を、感じる。
席は、窓側の、後ろから2番目。
彼女の目の前の席。



「ここ、ですね」



うらやましいな、
彼女は毎日ここで彼の背中を見れるんだ。
こんなに近くにいられたら、僕はきっと普通じゃいられない。
こんなに近い距離で彼の匂いを感じていたら、
ふらふらして勉強なんて手につかないに決まってる。


椅子を引いて、彼の席に座ってみる。
僕が使っているのと同じ机と椅子なのに、
そこはすごく特別なように感じられた。


  
  「悪い古泉、授業中寝ちまってさ、
   ここの訳教えてもらっていいか?」
  「ええ、僕のクラスではもう終わりましたから、何なりと」
  「サンキュ、助かる」



いつもここで眠っている、んですね。
腕を曲げて、頭をのせて、きっとこんなふうに。
窓の側だから暖かくて気持ちよく眠れそうです。
ああ、やっぱり、彼の匂いがする。
すごくドキドキして、体が熱くなってくる。



  「お前、香水つけてる?甘い匂いがする」
  「つけていませんよ、気のせいでは・・・?」
  「いーや。絶対お前の匂いだ」




ゲームを始めてすぐのとき、彼が身を乗り出して言ってきた。
香水なんて、つけてない。
机をはさんで離れたところに座っていたのに、
そこまで届くなんて・・・
甘いお菓子を持っていたわけでも、
家にそんな香りがするものを置いているわけでもない。
それでも彼はそう言った。
しかもいい匂いだと言って、すごく近くに寄ってきて、
僕は逆に彼の匂いでドキドキしてすぐに離れたくなった。



意識しすぎてる。
僕だけが勝手に。
いつからか分からないけど、こんなにドキドキするようになった。
教室もひんやりとした冷たい空気だ、
だけど息が上がって、熱も上がる。



「・・・、さ、んっ・・・」



名前を呼ぶと胸が急激に熱くなってきて、
しまった、と後悔する。
毎日毎日、どんなときにも彼のことを考えて、
体がどうしようもなくうずくけどどうしたらいいか分からない。
苦しくて苦しくて泣きたくなる、
だけど考えるのが止められない。
今日も早く帰ればよかった、
それなのにこうして彼の机に触れてしまっている。



苦しい。
この熱を冷ます方法を、知らない。





目を閉じて、寝る前のように彼を思い浮かべる。
僕より低音の声。
さらさらの黒い髪。
黒い目。
手は、僕より大きい。
指も長くて、
・・・きっと、触れられたら、心地がいい。




触って欲しい、
いろんなところに触れられて、口付けてもらって、
彼と混ざって溶けてしまいたい。
何をされてもいい、
何でもしてほしい、
僕の甘さなんて全部かき消して、
彼と同じにしてほしい。



「・・・っ・・・」



苦しい。
足が震える。
ここから立ち上がれば、
彼の匂いから離れれば逃げられる、
こんなどうしようもない熱から逃げられる、
そう分かっているけど立ち上がる力が入らない。




助けて、
僕を、
僕を、








「今日も忘れ物〜・・・って、うわ!」
「・・・・・・??」



廊下に突然響いた足音。
直後に扉が開く。
不協和音と一緒に、
誰かが教室に入ってきた。



重たい頭を上げて見ると、
見たことのある顔。
だけどよく、思い出せない。
彼と同じようにブレザーのボタンを外して、
ネクタイが緩んでいる。
彼?
違う。
彼じゃない。
分かってる。



「お前、何やってんの?具合でも悪いのか?
 びっくりさせんなっての。あ、ちなみに俺は忘れ物を
 取りに来たんだけどよ」



机をがさがさと漁り、何かを鞄に入れている。
僕は頭を預けながらぼーっとそれを見ていた。
彼とは違う、もっと明るい声。
聞いたことがある。



「おいおい、大丈夫か?キョンみたく、涼宮に毒されたか」



彼の、名前を、
彼女と一緒に出さないで、ください。


腕が近づいてくる。
額に手のひらが当てられて、
その人はうーんとうなり声を上げた。



「熱っぽい。風邪だな、風邪!
 俺が思うに、家に帰って寝たほうがいいぜ!」



あれ。
同じ匂いがする。
彼と、同じ。
この教室の匂い?





どっち?





外から戻って来たらしく冷たいその手が心地よくて、
自分の手を重ねて頬まで引き寄せた。



ああ、やっぱり、僕の好きな匂いだ。




小さく、名前を呼ぶ。
その手はびく、と僕から逃げようとしたから、
少し力を込めて押さえる。



「何なんだいきなり、俺はキョンじゃなくて谷口だっつーの」
「・・・谷口、さん」
「お前、古泉だろ?涼宮一味の。確か9組だったよな。
 キョンの忘れ物でも取りに来たのかよ」
「忘れ物・・・・・・」




こもっていた熱と、
冷たい手、
頭がくらくらしてくる。
ふわりと香るだけなのに、
机と彼の匂いが、全ての感覚を支配する。




  「いい匂いがするな、お前」



至近距離まで近づいてきた彼。





いつも、
キスが、したかった。







「・・・へ?」




顔を上げてその手を引く。
熱かった唇に、
冷たいものが触れる。






「・・・・・・何だ、今の」
「・・・もう一度、」





触れるたびに温度が移っていく。
冷たい唇が、気持ちいい。
呆然としている彼に僕は繰り返しそうした。





薄暗い教室、
もう夕日は落ちかけている。
こんな時間にこんな場所で、
大して話したこともない、
ましてや彼でもない相手とこうしてる、
いつもなら絶対にしないことだ、
なのに今日はおかしくて、
なんとかしてほしくて、
でも誰でもよかったわけじゃない、


似ていたから。
ネクタイの、緩み具合も。
匂いも。
手の大きさも。






突き飛ばされてもおかしくないと思っていたけど、
彼はそうしてこなかった。
ただ驚いた顔で僕の行為を受け入れてくれて、
僕が少しずつ唇を舐め始めると、
おずおずと同じようにそうしてくれて、
また体が熱くなる。





きっとただ、心地よかったから。
はじめてのその感覚が、気持ちよくて、
それでいて、全身が震えそうなくらいドキドキする。
同じ気持ちを共有してるような、気がする。
だんだん僕の体に手が伝ってきて、
僕も自分の指を彼の髪に絡める。
唇を重ねれば重ねるほど力がこもって、
髪を乱してしまった。


うっすらと目を開けると、
いつもと雰囲気が全然違う彼がいる。
前髪、
おろしていたほうが僕は好きです、



だってもっとあの人に近づくから。






大丈夫?
とだけ聞かれて、
ドキドキも、
足の震えも、
熱も、
ちっとも大丈夫じゃない、
だけど頷いた。




体が持ち上げられて、彼が、その席に座る。
僕はその上に跨って、
抱きつきながらキスを繰り返す。




しながら、ボタンが外されていくのが分かった。
そして熱を帯びた指が触れてくる。
さっきまで、冷たかった、
いつの間にあなたまで熱くなってしまったんでしょう?




「ふあ、あ・・・・・・」




体がびくびくする、
どこを触られても気持ちがよくて、
もっと、と言うかわりに舌を伸ばす。





  「ちゃんと飯食ってんのか?」
  「また痩せただろ、古泉」
  「そんなことじゃ、ハルヒの面倒見切れねえぞ」
  「俺一人じゃ相手できないからな」





彼の声が頭に響く、
熱くなってくるといつも聞こえる、
他の誰でもなくて僕に向けてくる声、
その頻度は、高くはない。
優しい声ならなおさらだ。
彼女達に向けられるような声も、
視線も笑顔も、


・・・僕には滅多に、




「もっと、もっと、してくださいっ・・・」



だけど全部、覚えてる。




「マジで、平気?」
「大丈夫、大丈夫です・・・だから、早く」




少し、逡巡したのちに、
唾液で濡れた指で撫でてくる。



体をつなげるだけでいい。
言葉なんかいらない。
気も、遣わなくていい。
好き同士じゃないんだから。
興味とか一時の気の迷いで構わない。
僕がどうしてもしたかっただけだから、
それでも少しでも、楽しんで、くれたら、嬉しいです。



「あう・・・!!いっ・・・」
「い、いてえ?」
「きに、しないで、ください」
「気になるって・・・お前、もしかして、こんなの、
 やったことねーんじゃ、」



体の中に何か入ってくるって、
想像してたよりも痛い、んですね・・・。

指でこれだけなら、
これ以上されたらどうなるんでしょうか、
ちゃんと我慢しなくちゃ、
痛いって言わないようにしよう、
せっかくこうしてくれているのに、
更に余計な気を遣わせてしまう。




「平気です、あなたと、したいから・・・」
「っ・・・そ、そうかよ」





お互い方法なんて詳しくは分からない、
それでも本能みたいなもので、求め合う。
ああ、
彼とこんな風に出来たら、
僕はすぐに頭がおかしくなってしまうだろう。
触れられたいけど、
触れられたら、
心臓が壊れてしまう。
何度も何度も大好きだと伝えて声も出なくなる。
でもとても幸せで、
一度だけでも死んでいいと思うくらい幸せで、
僕はそれを、
望んではいけないことだと分かってる、
夢に見るだけで、終わること。



考えちゃ駄目だ。
彼のことを考えちゃいけない。
僕は今、
違う人と。


彼ではない、
違う人と。




「・・・、っく・・・・・・」
「ちょ、こい、ずみ・・・っ、泣くなって」
「ごめ、なさっ」



痛いのも、
苦しいのも、
熱いのも、





「すまん、痛いよな、すまん」



この人が優しいのも、
彼がたまに優しくしてくれるのも、



僕には全部嬉しい。




「・・・、抜く?」
「だ、いじょうぶ・・・、少し、このままで、」
「わ、わかった」




彼だって辛いはず、
椅子に座って僕の全体重を支えてくれてる。
余裕なんてないはずなのに僕の心配してくれる。



これからはもっと話したい、
今まで何も知らなかった、
もしこれで僕を嫌いにならなかったら、
今度はちゃんと話をしてみたいです。


・・・無理、かな。




「はあっ、はあっ・・・」
「あのさ、そろそろ」
「はい、力・・・抜けます、だいじょうぶ・・・」



ゆっくり、腰を持ち上げる。
体の中がえぐられるみたいに、熱くて痛い。
気持ちよくはない、
最初からよくなるわけがない、
僕だってそのくらい知ってる。



でも痛いだけじゃないです。
ずっとずっとずっと、
こうしたかった。




「はっ、あ、あ、ううっ」
「ああ、な、んか、キツ・・・」
「もっと動いて、いいですよ・・・っ」
「お、おう・・・そう、する」





僕も、頑張って、動く。
そのたびにずきんと体の奥が痛い。
涙が零れて床に何滴か落ちる、
・・・明日には乾くから大丈夫。




「古泉・・・結構、きもちいい、かも」
「よか、った・・・。もう少し、うごき、ますね」



名前、呼ばれるの、嬉しいです。
彼じゃなくても、嬉しいです。
僕だって分かって、
こうしてくれてるんですね。
僕は、


彼のことばかり考えてる。



失礼、ですよね。




「ああ、あ・・・」
「谷口、さん、谷口さんっ・・・」
「!」
「僕で、もっと、気持ちよくなってください・・・」






せめて、
僕に出来ることを。







「あ! あうっ、あ、やっ・・・!!」
「すまん、も、むりっ・・・い、く・・・!」
「は、はいっ、はい、はいっ・・・!」














会う前にそうしていたように、
机に体を預ける。


彼の机も椅子も汚れていない。
そうしないようにだけは、気を付けた。
また教室には僕一人。
すっかり夕日は落ちて、
教室の中は真っ暗だ。



いつ、
彼が帰ったのか、
最後に何を言ったのか、
覚えていない。






熱かったはずの体が今はすっかり冷めている。




後悔してるわけじゃない。



けど、



いつここから離れられるんだろう。


熱を解放すれば逃げられると思ったのに。






  「古泉」
  「古泉」
  「古泉」




あの声から逃げたいのに。






「・・・・・・好き、です・・・」




言えない、
絶対に伝えることは出来ない、
触れてもらうことも、
それを願うことも許されない。





また熱が上がって、
どうすることもできなくて、
どうしようもなく苦しくなったら、





また、お願いしてみよう。






thank you !
鶴古に引き続きカオスなカプでお送りしました!
もうマイナーを極めてみようかな、ベースはキョン古で。
てかこれキョン古じゃないだr(ry

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