HB







彼があまりにも僕を好きだと言ってきてしつこいので、
丁重にしっかりお断りしたところ「ハルヒに言う」という恐ろしい脅しをかけてきて、
それだけは困ります、許してくださいと謝る僕に、
彼は今まで見たどれよりもさわやかな笑顔で、
じゃあ、付き合え、と、強制してきたのでした。
それが僕たちの始まりです。
つまりは、ちっとも、いい思い出ではないということです。









機関の上司はその報告を最初こそ喜んだものの、
「では、機関側の味方についてくれると思ってよろしんですね?」
「よろしくない。その気はない」
「・・・・・・」
どちらかといえば未来人、宇宙人寄りな彼の姿勢は変わることなく、
ついには上司からも
「・・・適当にやってくれ」
と放り投げられてしまいました。


















僕がこれまで現実逃避をせずにやってこれたのは、
僕自身の努力の賜物です。
好きでもないどころか女性ではない、
どこからどう見ても男性の彼とお付き合いをして、
抱き締められて、
鳥肌が立つほどの言葉を毎日囁かれて、
それでもなんとか生きてきました。
事情を知っている森さんや裕さんにさんざん茶化されて、
新川さんには同情の眼差しを向けられ・・・
でも、必死に、耐えてきたんです。













耐えてこられたのはおそらく、
彼が抱き締める以上のことをしてこなかったから。
不思議なことにあれだけ僕を好きだと言うわりに、
僕に対して手を出そうとは思っていないようです。
下手に刺激してはたまりませんので聞きませんが。
もし手を出されたりしたら・・・
ああ、考えるだけでも泣きたくなります。
それだけは、それだけは絶対に、死守しなくては。

 







夢恋人











帰りの坂道で、朝比奈みくるに駅前のケーキ屋について話していると、携帯が震えた。
見れば彼の名前が表示される。

今日、家に寄っていいか? と。




僕はちらりと彼の方を振り返り、小さく頷く。
彼は嬉しそうに口を緩ませて、
涼宮ハルヒに「何にやけてんのよっ」と指摘を受けている。







ほとんど毎日来るくせに、確認は取る。
家に帰れば機関への報告書をまとめるのに忙しく、
料理を作る暇なんてない僕に手料理をこしらえてくれて、
食べ終わると片付けまでしてから、帰っていく。















今日も同じだ。
僕が、その背中を見つめていても、
彼は真剣に調味料を選んだりフライパンを振ったりして、気付かない。
















「・・・ふう」







−彼との関係については、進展なし。
−特に問題も発生していない。








毎日同じ文字を書く。
報告するまでもないし、もう、誰も見ていなさそうだけれど、念のために。









楽しいんでしょうか。
僕と、二人きりで、こうしてここにいて。
僕のために料理をして、僕のために掃除もして。
僕は何も彼にしてあげていない。


















 
「どうだ、報告書は」
「あと少しで終わります」
「こっちも。ちょうどよさそうだな」







最初のころは今の2倍以上時間がかかっていました。
今では慣れたもので、
こうしてドライカレーに入っている野菜もきれいにみじん切りされている。


・・・全部、僕のために。







 
 


「出来ましたけど、何か手伝うことは」
「スプーンと飲み物出しておいてくれ」
「分かりました」
 







嬉しくないわけは、ないですよ。
僕のために何かしてくれる人なんていませんでした。


僕はこの力がなくなるまで、
もしかすると一生、
涼宮さんのためにすべてを賭ける必要があるんだと、覚悟していたんですが。
それでいいと言い聞かせていたというのに、
この人は。
好きだとかよく分かりませんけど、
ここまでしてくれるもの、なんですね。



















 
 
「・・・うまい?」
「はい。おいしいです」
「そか」








自分から聞いてきた割には照れてそっぽを向いてしまうのは、
・・・たまに不気味に感じますが、い、いいとします。









複雑ですね。

何も考えずに嬉しいと言ってしまうのは抵抗があるし、










 

「古泉」
「・・・」
「古泉、好きだ」













 

抱き締められるのもいまだに、いたたまれないですし。
 
 














「好きだ、古泉・・・」

 








 
同じ言葉を返したりも、できません。






















 
 
 
 

「・・・えっ!?」
「古泉、」
「ちょっと、触るのはなしだって、言ったじゃないですかっ」
「服の上からだけならいいだろ」
「駄目です」










いつも抱き締めているだけなのに、突然指が体を這ってきました。
シャツの上からとはいえ、弄るように。







抱き締められるのは許しています。
でも、それ以上は許しません。
服の上からなら、なんて譲歩してしまったら最後、
あっという間に最後までされてしまうにきまっているんです。






・・・最後、って、何、でしょうか。












 
「どうしてもだめか」
「駄目です」
「・・・分かった」
 

















あっさりと拘束を解いて、彼は、ほどなくして帰宅しました。
























 
姿が見えなくなってから胸に手を当てると、
まだ、どきどきと鼓動が早い。
 






好き、には、だいぶ、慣れた。
抱き締められるのも。
けど、触られるのは・・・また、違う。



















 
 

「ううん・・・」
 








まだ好きではありません。
恋人と呼ばれるのも抵抗があります。








でも、
体を触られると、
あんなに熱い息を吹きかけられると、
疼いてくる。
 











もちろん、触られるのも初めての経験です。




彼は僕をどうしたい、のかな。
僕の体を触って、撫でて、
服を脱がせて、
体にキスしたり、
舐め、たり・・・したい、のかもしれない。













 
「・・・うう・・・」
 
 






















眠れません。
考えないようにしたいのに思い出してしまう。
体の関係まで求められるようになったら身を投げようと、
確かにそう思っていたし報告書にも書きました。





なのに、今は、
そうされることを想像して、心臓が飛び出しそうになってる。
ただ触られただけで。
 












こんなはずじゃ、なかったのに・・・・・・。










































 
 
 
 

「古泉」
「・・・はい」
「・・・いい?」
「・・・聞かないでください、・・・いやなら、止めてます」
「ああ」







唇が近くまで迫ってくる。
僕はその体を突き飛ばすことが出来ない。
それどころか、背中に回した腕に力を込めて、
もっと近くに来てほしいと、願っているようだ。





「好きだ、古泉・・・」









普段のぶっきらぼうに見える態度からは想像もつかないような、優しい、キス。
体が一気に熱くなる。
どきどきして、体の中から、経験したことのない熱が出てきて、
 



「ん、ん」





 
絡められた舌を必死に自分からも求めた。













 

「・・・ん、う」
「・・・キス、好きか、そんなに」
「っ・・・べ、別に、そういうわけでは」
「弁解しなくても、分かってる」
「あ、・・・んん」
 










気持ち、いいです。




体も、触りたいし、触ってほしい。











もっと、もっと、僕を・・・・・・・














































 
 
 
 
 
 
 

「え!!!」
 








携帯のアラーム音で目が覚めた。
まだ、辺りは薄暗いけど、時計を見れば朝だと分かる。
 
 







・・・・・・な、なんて、夢を、見てしまったんだろう。
 




 












最悪です。
彼に、されることを願ってるみたいじゃないですか、こんなの。





自分の体の反応も、全部、否定したいですっ・・・。
 






















 
「古泉、おはよ」
「うっ! お、おはようございます」
「ん? どうした、顔色悪いぞ」
「何でもありません」









登校中に後ろから声をかけられ、
顔を見た瞬間に夢がフラッシュバックしてきて、
吐き気がします。
完全に彼に非がないとは言い切れません。
僕を触ってきたりするから、あんなことになるんです。
勝手に夢の中にまで出てこないでください。
迷惑もいいところです。
















「今日は空いてるか」
「ええ、まあ・・・」
「ハルヒ次第だろ? そこはなんとかする」
「どうも」
「じゃ、また後でな」
 
 











 
彼も同じような夢を見るんでしょうか。






それにしても・・・
自分の夢の中ですら、僕は、下、なんですね。
彼がそれを望んでいる風なのはどことなく想像していました。
だから、嫌だったのに。
夢では・・・僕は・・・・









「はあ・・・・・・」










自分が信じられなくなってきました・・・。
 
 
 
 


















 

そして今日も、彼がやってきました。
昨日断ったからか、抱き締めてくる腕も遠慮気味です。
いつもは苦しいくらいに抱き締めるくせに、
あのくらいのことで怖気づくなんて、らしくないですね。







「・・・昨日は悪かったな」
「え?」
「その、お前が嫌がることをして」
「ああ・・・」
「怒ってるのかと思った。今日、俺を避けてただろ」
「・・・怒ってませんよ」








 
あなたを避けていたのは別の理由です。
避けていた、と、意識していたのではなく、
そう気付かれていたのは意外でしたが。
動揺がすっかり態度に出ていたということですか。
これは、困りました。
 
















嫌われたくはないからな、と、
僕の髪を緩やかに撫でながら、耳元で言ってくる。





囁かれるのは慣れたはずなのに、
夢を思い出して、どきどきと、心臓が脈打つ。
彼の腕にまで伝わるかもしれない。













 

「かわいいな」
「・・・僕、男ですよ」
「かっこいい、の方がいいって?」
「あなたに言われると違和感があります」
「だろ? なら、いいよな」
 















最初はかわいいと言われるのも嫌でした。
小さい頃ならいいですが、
この年になってかわいい、なんて、
同性から言われるのは気持ちのいいものはありません。








だんだんそう言われるのも当たり前のように受け止めて、
 
 
 













「全部、かわいい」
「う・・・ん、ん・・・」
「お前の唇も、赤くなる耳も、声も、ここも」
「は、あっ・・・!」
「めちゃくちゃ、かわいい」
 
 
 















 

毎日のように、夢を見ています。
 
 
 
 
 















 
「おい、古泉」
「は・・・はい?」
「どうした。目の下、ひどいぞ」
 








鏡で見ました。
黒いクマが、出来ていました。
 



眠れません。
眠るたびにあなたが出てくる、
そして、僕を、めちゃくちゃにしてくる。
 










だから毎晩飛び起きて、
心臓を落ち着かせて、
仕方ないから高ぶってしまった熱を抑えて、
自己嫌悪に襲われて滝にでも当たりたくなり、
僕を生んでくれた両親に頭の中で謝罪をしているうちに、朝になる。
 
 
寝不足にも、なりますよ。
 










 
「機関の仕事か?」
「まあ、そのようなものです」
「無理するな。お前がそんなだと心配になる」
 











 
嘘をついていると胸が痛む。
優しくされると、別のところが痛くなる。
 
 
 





 

「今日は行かない方がいいかもしれんな」
「え・・・」
「俺といるとお前の時間がなくなるし。確か昨日の夕飯、まだ残ってたろ?」
「・・・あ、ありませんっ」
「なんだ。朝食っちまったのか」
「・・・え、ええ」
 










夕飯だけ作りに行って早めに帰る、
そう約束して、彼が僕の家へ足を向ける。




金曜日。



明日は予定がない。
 
 

期待しているのは僕だけですか?
 
 
 
 
 


















 
「古泉」
「わっ・・・」





報告書をまとめていると、
最中はいつも邪魔をしないのに、抱きついてきました。




 
「飯まだあるじゃないか。お前・・・俺に来てほしかったのか」
「・・・・・・そう、かも、しれません」
「すげー、嬉しい」
「そうですか」
 











あなたが喜んでいると僕も嬉しいです。
抱き締めてくる腕に、手を触れる。
緩くほどいて彼の指を僕のを絡ませると、
驚いたように息を飲んでいます。
 



僕も驚いています。
自分の変化に。





あなたにされて嫌だったはずのことが全部今では嬉しくて、
もっとしてほしいと、思うようになってしまいました、
 
 
 
 









「古泉、・・・もっと触っても、いいか」
「いやならいやって、言います」
「分かった」
 
 









体中が撫でられる。
彼の指が、いろんなところに伸びてくる。





持っていたシャープペンシルは床に落ちて転がって、
途切れている報告書の続きは書けそうにない。
この事実も。
僕が、こうされるのを待っていたなんて、とても書けません。
 















 
 
 
 

「キス、したい」
「・・・」
「だめか?」
「いやじゃ・・・ないです」
「古泉・・・!」
 
 





夢にまで見た、という言葉通り、
彼の唇が僕のに触れる。
待ちきれなくて口を開くと彼の方が驚いて、
繋いでいた手をびくっと震わせて唇を離した。
 









 
「驚いた」
「・・・駄目ですか」
「いや」
 
 














全然足りません。
夢の中でのあなたはもっといっぱい、
僕を求めてくれたじゃないですか。
 






 
「っ、古泉っ」
「早く・・・!」






 
首に手をかけて引き寄せる。
硬く閉じたままの唇を舐めて、何度も舐めて、
彼が何か言おうとして開けた口に舌を入れた。
 
 

「んんっ・・・!!」
 






口の中で彼の声が響く。
僕は声を漏らすのも、息をするのも忘れて深くまで届くように口づける。
 
 





















ようやく唇を離したときにはとても止められなくなっていて。
彼もいつになく真剣な目で僕を見てきて、
服を脱がされても、彼の肌と直接触れ合っても、
抵抗しようなんて気持ちはどこにもなかった。
 


























そうしてついにその瞬間がやってきました。
散々舐められて、体の中にも指を入れられて、
ぐしゃぐしゃにされているので、もう今さらです。
気持ちいいなら下でもなんでもいいです。
 







「痛かったらすぐに言ってくれ」
 











彼は、今まで以上に優しくしてくれました。
今の状態なら何を求められても僕からだって出来るのに、
お前はいいから、と。



濡らさないと痛いから、
前に彼が持ってきてくれた、いい香りのする油・・・
今後この香りを嗅ぐだけでおかしな気分になりそうですが、
それで、痛くないように、慣らしてくれました。
指が入ってきても痛くないし、
前を舐められながら触られると声が我慢できなくなりそうです。
男の声なんて聞いても気持ち悪いでしょうから、
なるべく我慢しますが。








「ふ・・・・・・」
「ゆっくり、やるから・・・」





















 
ああ、
彼の体が、
僕に、
入ってくる。





指とは全然違う。
大きくて、熱くて、硬くて・・・







夢でこうしても実感はなかった。
どんな感覚なのか想像もできなかった。
でもこれからは、これを、夢に見ることに、なりそうですっ・・・









 
「あ、ああっ、古泉っ」










意外とすんなりと体の中に、侵入してきた。
彼も声を上げて、
入れる瞬間よりも早く、焦ったように奥まで入ってくる。





余裕がなくなるのも、分かります。
僕は最初からそんなものはなかった。
だから、多少、強引でも、許します。











「古泉っ・・・、痛くないか、ここ、大丈夫か」
「んん・・・大丈夫です・・・」
「お前の体、すごいっ・・・・・・」








 
多少の息苦しさはあります。
強烈な違和感もあります。
体内に異物が入っているのですから、当然です。
でも、・・・いやじゃ、ないです。








あなたと、こう、したかったから。
 










「ん、んうっ・・・」
「動いて、いいかっ」
「はい・・・、ゆ、っくり、お願い、します」
「ん、分かった」












 

潤滑材のおかげで滑りはよくても、
出し入れをされると下腹部が痛いです。







ですが、
せっかく、出来たのに、辛いなんて思いたくありません。
枕を噛んで苦しそうな表情を見せないようにして、
彼に気持ちよくなってもらうために、なんとか、力を抜いていく。
先ほどまでは彼がたくさんしてくれたので、
今度は僕が、頑張らないと。

























「古泉、古泉、すごい、お前、気持ちいいっ・・・!」
「ふ、あ、う」
「熱いし・・・、きつい、けど、締め付けられて、やばい・・・っ」




 
 
・・・あの、
 








「う、ううっ、古泉、すぐ、いきそっ・・・」
「う・・・う、」
「マジで、気持ち、よすぎるっ・・・!」


















 
 

・・・あなた、ちょっと、
 
 











うるさいんですが・・・












 
 

どうしてされている僕じゃなくて、
あなたがそんなに、喘いでいるんですか?
 










 
「いいっ・・・お前の中、きもちいっ・・・」
「ふ・・・」
「あーっ、あ、やば、やばいっ」















 
 
僕の100倍以上、気持ち良さそうなんですが・・・・・・・・・
 
 













 
 
僕の夢の中では、あなたはもっと、違う、感じで、
寡黙に、でも優しく、見つめながら、
抱いてくれた、はず・・・







現実はここまで異なるのですか。






















「ちょっと、静かに」
「ああーっ、いく、いく、古泉、いっちまう・・・!!」
「え!?」
「中に出す、いいよな・・・!」
「ま、待っ」
「あ、あ、ああああっ・・・!!」
「ぎゃあっ・・・!」













 

 
最後は何の迷いもなく、
僕の体を揺さぶりたい揺さぶって、
僕の、中に、
大きな声を上げたまま、出しっ・・・!

































どうやら僕は間違っていたようです。
夢は夢。
現実は現実。





 


いくら夢で興奮したとはいえ、
現実にこうするべきではなかった。


















彼が、あんな、声を上げる方だったなんて。

























「古泉ー・・・」












今までに中々手を出してこなかった理由が分かったような気がします。
一人で処理するときですら声を上げてしまう人なんでしょう。
僕に聞かれまいと、
僕の受け入れ態勢が整うまで、自分からは手を出さない。
そんな彼を、僕は自ら彼を受け入れてしまった。




完全に思う壺です。
自分から腕を伸ばしてしまったために、
こうして終わってからも甘えてくる彼を拒否する権利は、
僕にはありません。














「気持ちよかった・・・ありがとな、古泉」
「は、はあ」
「体は大丈夫か? 背中、撫でてやるよ」
「ど、どうも・・・」
























何よりも空しいのは、








彼があんなにアンアンうるさい中、
僕まで、出してしまった、ということです・・・。
















これほどの無力感に苛まれたことが今までにあったでしょうか。



























「これからずっと大事にする。責任は、取る」
「はあ・・・・・・」
「好きだよ、古泉」










どうしましょう。
これからずっと、
この人に付き合わなければいけないんですか?












気持ちよかった、といえば、よかったんですが、
しかし、それでは・・・その・・・なんと申しますか。














「またやろうな」
「はあ・・・・・・・・・・・」














仕方ない、ですが・・・、









これが夢なら、覚めてください・・・・・・・・。











thank you !

すみませんでした(平謝り)
らめえキョン(喘ぐ攻め・さわたりさん命名)を書きたくて書いたものの、
漫画なら笑えるけど文字だと笑えませんね!リアルで!笑
キョンが最中喘ぐくせにそれ以外はすごい男前だとギャップに萌えます。
こんなですがさわたりさんおめでとうございます!

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