※ちょっぴりエンドレスエイトのネタバレがあります。












優しい声で囁かれるわけじゃない。
微笑んで見つめられるわけじゃない。
不器用だし、背中に回された指は食い込むくらいに押し付けられて少し痛いし、
吐息は熱くて余裕なんてなくて、
早まる鼓動がどっちのものだか分からないけど耳に響いて、

何度も何度も何度も、
呼ばれる名前、その声、

どれもが本当に愛しい。





15497回分の片思い




「大丈夫か?」


ぐったりと体を机に預ける僕の髪に、彼の指が触れる。
ゆるゆると髪を梳いて、だんだん、その手のひらが
頭を撫でるような動きに変わる。
体は重たくて動かないけれど、すごく、心地がいい。



夏休みが終わって、登校してきて、部室での、行為。
15498回の夏、
その15498回目の夏に、僕たちは初めて唇を重ねた。


**************



深夜に涼宮さん抜きで集合した時、
長門有希は詳細こそ言わなかったものの、
彼と僕を交互に見て、「今回は特別」と呟いた。
「15497回まで起こらなかった事象が発生している」


すぐに何のことか気付いて、僕は顔を上げられなくなった。


「もう絶対に、繰り返させたりしないぞ」


頼りにならない未来人、朝比奈みくるの涙が一時停止するほど、
はっきりと彼は言った。朝比奈みくるを安心させたいという気持ちも、
勿論あっただろうけれど、
それ以上に、きっと彼は僕と同じことを考えてくれていると思った。



特別な、たった一度の夏。
15497回の夏を繰り返しても、僕たちの気持ちは、通じることがなかった。
15498分の1回、この夏がなくなってしまったら、
後悔しても後悔しきれない。



結果、彼はこの夏を守ってくれた。
たった一言で。
やっぱり、あなたは、選ばれた人なんだと思います。
あなたがいなかったら、僕たちは結ばれないまま、
ただただ夏休みをまた繰り返していました。





僕たちは登校して、お互いの存在を確認するために、
授業後すぐに夏休みの前と同じように足早に部室へ向かった。


涼宮さんや朝比奈さんが早く帰ることだけを考えた。


どこか別の場所に移動する時間も勿体ない、
とにかく、早く彼に触れたくて、キスがしたくてしかたなかった。
僕の笑顔も相当、余裕がないものだったかもしれないけど、
彼はそんなことに構っている一片の余裕すらもなくて、
荒々しく口付けると僕の体を床に倒した。


**************



「はい。すみません、引き止めてしまって」


時計の短針は8を指している。
彼は家に連絡も入れていないから、家族も心配するだろう。
それなのにずっとこうして、起き上がれない僕の隣にいてくれている。


「謝るところじゃないだろ、そこは」
「いえ、遅くなってしまいましたので」
「気にしなくていいから」


いつもこのくらい優しいと、嬉しいのですが。
・・・いえ、いつもこんな調子だったら、
嬉しくて、おかしくなってしまうかもしれません。


耳や、頬や、口元を交互に、ゆるやかに、彼の指が這う。
その表情に笑みだとか優しさだとか、そういったものは浮かんでいなくて、
でも、
なんだかとても愛しく想ってくれているような。
そんな触れ方で。
そんな目で。


胸の奥が何かに貫かれたように痛い。
幸せすぎて、痛い、です。


「っ・・・、そんなに痛かったのか?」

突然慌て出した彼を見て、僕は、情けないことにどうやら泣いているらしいと気付いた。
先ほどまでの行為のせいだと思ったらしく、彼は頭を下げる。


「すまん、古泉」
「ああ、そうじゃないんです。大丈夫です」


最中には何があっても泣かなかったというのに、
こんなことで泣けてくるなんて。
椅子からようやく立ち上がってみると、どうやら、もう大丈夫そうです。


「帰りましょう」
「・・・おう」



床に投げ捨てられたままだった鞄の埃を払って、部室の鍵を取る。
準備が出来たかなと、彼のほうを振り返ると、
予想以上に彼が近くにいて驚いた。


「うわ、」
「古泉」


そのまま力いっぱい抱きしめられて、せっかく持った鞄がまた、
床に落ちる。


「ええと、どう、しました?」
「・・・・・・嫌じゃ、なかったよな?」


顔を見られまいと必死に強く抱きしめて聞いてくるあなたの声が、
また胸の奥を刺激する。顔が熱い。
今きっと、僕たちは同じような顔をしている、と思うんです。


「嫌なわけ、ないじゃないですか」
「だってお前が泣くから」
「それは、あの、嬉しかったからです・・」


ごくん、と息を飲む音が耳元で聞こえて、また鼓動が早くなる。
力の入っていた腕が背中から離れて、両手が、頬に触れる。
熱い、掌。

「古泉」


熱い、唇。


何度も何度も口付ける。
何度もあなたの名前を呼ぶ。
本当に愛しい。


こんなに短い間にこんなに彼のことを知って、
こんなに好きになるなんて想像もしていなかった。
15497回分の片想いが、一気に溢れ出てきたみたいに、
なんだかすごくたまらなくて、彼を求め続けた。


「古泉」
「好きです」
「こいず、み」
「は、あ・・・大、好きです」
「俺も、」
「ふ、あ・・・」
「好き、だ・・・」



こんな状態じゃ帰れない。
離れるなんて考えられない。
頭も心も体も全部が彼を欲しがっている。

あなたも、そうなんでしょうか?
僕を、そんなふうに、想ってくれているんでしょうか?


幸せすぎてもう何も考えられません。
これが神に背く行為でも、機関を裏切ることになっても、
構わない。
あなたは必ず、僕が守ります。


必ず。



thank you !

よく考えたらちゃんとラブラブなのないなあ・・と思って。
R-18にいたっては強キョンしかないからね、最低ですネ!
エンドレスエイトは妄想が働きすぎてやばいです。
どなたかと妄想がかぶってたらすみません(毎回ヤってるとかは見たんですが・・←こっちも好き)


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