真っ赤なまま俯く古泉と、
ぽかんと口を開けたままの俺。
いまだに状況が飲み込めない。




古泉は言った。






俺と、友達以上の関係になってもいいと。





それは、
俺と付き合ってもいい、ってことなのか?












「古泉、俺がこう言うのもあれだが・・・
 優しくしてほしいだけなら、無理に付き合わなくてもいいぞ」







こんなときほど冷静にならないといけない。
古泉に無理をさせてるんだったらよくない。
友達のままだって、
前みたいにしてほしいならする。








「お前が望むんだったらいくらでも、」
「そうじゃないんです」




古泉が俺の言葉を遮る。




「僕は、あなたとお付き合いがしたいんです」

















もう一度、衝撃が走る。
朝比奈さんとの時空旅行のときの衝撃なんて
実に甘いとしか言いようがないほどに、
めちゃくちゃに強い衝撃が。








つ、つ、付き合い、たい。
古泉が。
俺と。















「・・・あなたが好きです」
「こ・・・・・・・・・・」
「こうなるなんて想像もしていなかったけれど、好きに、なりました」
「い・・・・・・・・・・」
「ひどいことばかりしてきて、今更だって思ったら、断っても構いませ」
「断るもんか!! 付き合おう、古泉」
「は、はい」










手を握り締めて、
古泉の目を見つめる。
古泉は・・・本気の目をしていた。






諦めようと思っていたんだぜ、俺。
想いが報われることなんて一生ないと。
それでもいいから、
お前のそばにいたいと。
けどお前は、言ってくれた。
俺と付き合いたいと。
俺を、好きだと。








俺もお前が大好きだ。
ずっと大事にする、
一度も後悔なんてさせないから。






「大好きだよ」
「はい・・・」
「お前も、言ってくれ」
「え!?」
「俺を好きって」
「さ、さっき、言ったじゃないですか」





何度聞いたっていい。
何度も、聞きたい。
今まで俺がお前を想っていた分の、
ひとかけらでもいい。
お前の気持ちを実感したいんだ。






やや緊張したが、
古泉の体を抱きしめて、
耳元に口を寄せる。
古泉もびく、と体を反応させたが、
押しのけてくることはなかった。





「古泉、大好き」
「うう・・・」
「大好きだ・・・」
「耳元、はっ・・・」
「な、言って」
「・・・僕も、す、き・・・」







想いが通じたら、
途端にもっとほしくなってきた。
好きだと言われただけでは足りなくなるような、
ああ、好きだ、好きだ。









「もっと、古泉」
「すっ、好き、です」
「古泉・・・!」
「ちょ、ちょっと、待って、待ってくださいっ」










何をしたわけでもなく、
古泉を抱きしめて好きだと言い続けて、
古泉が真っ赤になって腕の中でばたばたするまで、
ずっとそんな風にしていた。






















古泉は、
色んな話をしてくれた。




最初は本当に全く持って100%、気がなかったこと。
俺に好きだと言われても迷惑に思っていたこと。


けど、
風邪を引いたときに助けてくれた。
想いを拒絶してばかりだったのに、
優しくしてくれた。









気付けば、さびしいときにそばにいて欲しいと思うようになった。
閉鎖空間から戻ってきて、
待っていてくれたのが本当に嬉しかった。
どうなってもいいと、思った。






・・・そして俺が気にかけていたことも。



















「あなたが僕の名前を呼びながら、キスしたときに」





古泉の指が、
俺の手の甲を撫でる。





愛しそうに、
ゆっくりと。















「呼ばないでくださいと言ったのは、
 すごく、どきどきしたから・・・・・・」










「頭が真っ白になるのが、怖かったんです」
















stairway last step










「キョン。顔、気持ち悪い」
「そうかそうか」
「頭のネジどこかに置いてきたんじゃないの?」
「そうかもな」
「変だわ・・・!」





部室にて。
昨日とは正反対の俺の様子に、
ハルヒはやたらとつっかかってくるが、
俺にとっては何の問題にもならない。





「ふええっ、キョンくうん、ごめんなさあい!」
「いいんですよ、朝比奈さん」





朝比奈さんがついいつものように躓き、
注いだばかりの熱湯に程近い緑茶を俺にかけてきても、
何の問題にもならない。








「手が滑った」
「構わんぞ、長門。これだろ」






長門が俺の後ろの本棚から広辞苑レベルの本を取り、
珍しいことに手を滑らせて俺の後頭部に当たろうと、
何の問題にもならない。













「バカキョンの相手をしてたらあたしまでおかしくなりそうだわ。
 それよりも・・・古泉くん、具合はもう大丈夫なの?
 顔色はずいぶんよくなったわね」
「ご心配をおかけしてしまってすみません。
 もうすっかり、大丈夫です」





ああ、古泉は元気だよ。
ただ昨日同様寝不足気味かもな。
別に昨夜ナニかやったわけじゃないぞ。
それは天に誓って言える。
そばにいて、
好きだという気持ちが通じ合って、
その状態で一緒にいられることが、
あまりに幸せすぎて眠れなかったんだ。


夜を徹してトランプで遊んでいた、
非常に健全な俺たちさ。








「キョンとは仲直りしたの?」
「ええ。そちらもご心配をおかけして」
「そう、よかったわ。・・・あれじゃどうかと思うけど」








徹夜をした割には俺も古泉も絶好調だ。
俺はこの喜びだけで聖母マリアにも匹敵するほどの、
慈愛に満ちた人間でいられそうだぜ。





今日もこれが終わったら古泉と一緒に帰るんだ。
けど、早く終われなんて思わないぜ。
この距離で見る古泉もかわいいから。
万人向けの笑顔を見せている古泉を見るのも、
悪くないからな。


その笑顔が嫌いなわけではない。
そもそも俺はそれに落ちた。
そして本当はいつも笑顔ではなく、
怒ることも、悲しむことも、寂しがることも、
泣くことも、照れることも、
恥ずかしがることも、知った。



俺はどんな古泉だって、
全部、
いつまでも、
好きでいられるだろう。
そんな自信があるんだ。






「きっと何かいいことがあったんですよ。それより涼宮さん、・・」




そうだな、古泉。
俺の今までの人生の中で、
最高のいいことがあったよ。
これからはお前とそれを更新してくつもりだから、
よろしくな。
























「もう・・・あなた、いつもの無表情はどこへいったんですか」
「仕方ないだろ、今日くらい」
「今日だけならいいんですけどね」




ハルヒと古泉の打ち合わせが予想外に長引き、
それでも頼れる副団長の姿ににやにやとしながら待ち、
二人きりになれてから腕を伸ばして手を握った。
向かいに座ってそうしたまま話をしている、と。





「古泉」
「はい」
「古泉」
「何ですか」
「いや、呼んだだけ」
「はあ」
「大好きだ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・僕も・・・」
「ん?」
「僕は、まあ、好き、くらいです」
「ははっ」






それでもいいよ。じゅうぶんだ。




参ったな、
すげー、
嬉しい。







「涼宮さんたちも帰りましたし、僕達も帰りましょうか」
「そうだな。手繋いで」
「駄目です。まだ他にも生徒がいます」
「・・・じゃあ、旧校舎出るまで」
「・・・2階の階段降りきるまでです」
「よし、のった」









少しでもいい。
ああ、好きだ。
手繋ぐだけで、
気持ちが溢れて倒れそうだ。
2階の階段を降りるまで、が、せいぜいかもしれない。





























話すことはたくさんあった。
主に、お互いのことについて。
今だから言えるあのときの気持ちを、
古泉の口から聞けるのが楽しかった。
わざわざ回りくどく言って俺を傷つけないようにするところが、
聞いていて笑えたし嬉しかった。


家についてからもそんな話をして、
笑っているうちにいつの間にか意識が途切れて、
朝日の眩しさで目を覚ます。

古泉の家に行くときはいつもそんなだった。










古泉と付き合えた幸せで、
俺は十分だった。




























「ちょっと、いいですか」



幸せな毎日を送っていたのに、
ある日突然古泉は真面目な顔で俺を呼んだ。
その雰囲気は今までのものとは違い、
俺を緊張させる。
古泉は思いつめたような顔をしていた。





「ん、どうした」




あえて明るく返してみたが、古泉の表情は晴れない。
今日はいつも通りハルヒの無茶に付き合って、
それなりに機嫌を良くさせて古泉も満足そうだったから、
安心してこの家に来た。
飯は俺が適当に買ってきてとっとと食って、
これもいつも通り話をしていたわけだ。
で、ベッドに寝転びながら話をしていたが、
古泉の反応が薄くなってきたので眠いのかと思い話を止めた。
おやすみ、と言おうとした時に、
逆に古泉が俺の名前を呼び、
電気をつけて向かい合っているというわけだ。







「・・・・・・」
「眠れないのか?」
「そうではありません」
「そっか、それならよかった」





ちっともよくなさそうな顔で口をつぐむ。
どうしたんだろう。
もしかして俺と寝るのがいやになったとか、
それとも、そろそろ、
面倒になってきた、んじゃないだろうな?



まさか。
古泉は順調に俺を好きになってるはずだ。
抱きしめても嫌がられないし、
たまに抱きしめ返してくるし、
好きだと言って欲しいと頼めば言ってくれる。
顔を赤くして。






「あなたは・・・」
「何だ?」
「あなたと、僕は、付き合ってるんですよね」
「そうだ」





今更再確認か、古泉。
そんなつもりはなかったなんて言わせないぜ。
言われたら俺は泣くぞ。
お前が困るくらい泣いてやる。
いや、お前を困らせるのは駄目だ。









「・・・・・・」
「古泉?」
「・・・・・・」
「どうしたんだ?」
「分からないんですか」
「・・・わ、わからん」







古泉の気に障る話をしなかったか、
今日一日の記憶を辿ったものの、
思い当たる節はない。


古泉は笑ってた。
万人向けじゃない、俺だけに向ける笑顔で。














「僕、と」
「お前と?」
「つ、きあってるのに、何も、しないのは・・・」
「何も・・・?」
「もういいです」





ぷいと顔を背けてベッドに入ってしまった。
俺は慌てて電気を消して隣に行く。




下手に話しかけるよりも前に、
頭の中で考えよう。









付き合ってるのに、何もしない。
それはどういう意味か。




すぐに、ぴんときた。








俺は古泉に手を出して・・・
いないとは言わない、
手を繋いだり抱きしめるくらいはする、
けど、それ以上のことは何もしていなかったから。


















「古泉っ」
「話しかけないでください、寝ます」
「さっきのは・・・」
「やめてください」







俺は、十分幸せだったけど、







お前、物足りなかったのか?









俺に、キスとか、されたかったのか?











「や、ちょっと・・・!」














抵抗はものともせずに腕を押さえつけて唇を重ねた。
びく、と大きく震えて、
一度触れただけで抵抗が止む。




何度も何度も重ねていると、
古泉のほうから唇を開いてきた。
じゃ、遠慮なく、
と舌を伸ばしてみると、
触れ合う瞬間が刺激的過ぎて思わず唇を離してしまった。






「ふあっ・・・・・・!」
「う、うわ」






舌の感触もだが、
離した瞬間の古泉の声にやられた。
つい驚きを声に出してしまい、
古泉はそれに気付いて唇を手で覆ってベッドから逃げ出した。



お、おい、古泉、どこに行くんだ!










そこまで広いわけでもない家で逃げる場所は決まっていて、
鍵がついてる唯一の場所、すなわちトイレに逃げ込まれた。
すぐに追いかけるも、鍵の閉まる音がする。






「す、すまん、古泉。違うんだ、お前が、
 あまりにかわいいから」










古泉の声は聞こえない。
けど、呼吸と、
何かすすっている音が、
って、
まさか、
泣いてるんじゃないだろうな!?





















「開けないならドア壊すぞ!」
「なっ・・・・・・」
「いくぞ」
「や、やめっ・・・・・・!」





体当たり音を聞かせていると出てきた。
見たことがないくらい真っ赤だ。
目元も、予想通り潤んでる。
有無を言わさずに抱きしめて、顔中にキスをした。








「ごめんな、古泉、ごめん」
「もう・・・あなたなんて、知りませんっ」
「そう言うなって。俺もさ、あんなキス初めてだったし」
 
 
 




頭を撫でてなだめてからもう一度、リベンジだ。
トイレから引っ張り出して抱きかかえるとじたばたしたが、
思いのほか軽かったので余裕で連れていくことができた。



ベッドにまた寝かせて古泉が文句を言う前に口づける。
顎を掴んで開かせて、
今度はきちんと覚悟を決めて舌を入れた。









「んっ・・・・・・!」



また、俺をびびらせる高い声が聞こえる。
けど今度は離したりせずに、触れた舌を舐めてみた。
暖かくて表面はぬるぬるとしていて熱い。
一度覚悟を決めれば、あとは求めるだけだ。





「ん、んん、ん、う」








言葉にならない声がしきりに古泉の口から漏れる。
体を密着させてキスをしているせいで、
太ももにある感触で古泉の状態を把握できた。










やばい。
古泉が俺とのキスで、こんなことに、なってる。








これが現実なのか。



古泉、
俺を、好きだと思うだけじゃなくて、
こんな風に求めてもらえるようになるなんて、
俺は一生かかっても無理かもしれないと正直思ってた。
それでもお前が好きだからそばにいることを許してくれているうちは、
隣にいさせてもらおう、くらいに。 
 













息が苦しくなってきて唇をゆっくりと離す。
どちらのものか分からない唾液が糸のように垂れて、
古泉の口元に落ちた。
涎でびしょびしょに濡れた顎を気にかける余裕もなく、
息をするのも大変な状態だ。


俺も相当どきどきしたし、興奮してるけど、
お前の敏感さ、すごいな。











 
「古泉・・・大丈夫?」
「う、う・・・だいじょ、ぶ、です・・・」
「ちょっと、させてくれ」
「え・・・? あ、あの? ・・・、あう!!」






舌を、今度は耳に持っていく。
今なら。
俺しかお前の前にはいないし、俺達は付き合ってるし、
だから、頭が真っ白になってもいいんだ、古泉。






 
「や、だめ、だめですっ・・・!」
「古泉」
「ひあっ・・・!」
「古泉、大好きだ」
「ふ、あ、ああっ」
「古泉、古泉、古泉っ」
「うううーっ・・・!!!」

















背中に力強くしがみついてくれるおかげで、
さらに俺の足に古泉のがあたり、
たいへんな熱を帯びていることがわかる。
 













・・・それに対して俺のなんと情けないことか。




古泉とのキスが気持ちいいのは言うまでもなく、
こんな状況に興奮しないわけがないのに、
緊張しすぎて何も、少しも、なんだ、

















勃たない。


















 
 
古泉に知られたらきっとこいつは傷つく。
僕だけがこんなことに、なんて言って、悲しむ。
俺がこれだけ好きだ好きだ言ってるのに勃たないなんぞありえん。








大丈夫だ、古泉の耳を舐めたり囁いたりして、
古泉の声を聞いて顔を見ていればすぐに勃つさ、
だって毎晩そうしてるじゃないか。
古泉を思うだけでいくらでも抜けるじゃないか。
本人を目の前に、
ずっとやりたかったことをやれるのに緊張なんて、なあ。












 
「古泉・・・」
「ううっ、もう、だめ、ですっ・・・」
「だめ?」
「僕にっ・・・言わせないで、ください」 











 
 
 
きゅ、と遠慮がちに足に押し付けられる。
つまりはこれを、
俺になんとかしてほしいと、そういうこと、だよな。










まずい。
非常にまずい。



















キスまでは自分でも驚くほど順調にできた。
いや、一度古泉を拗ねさせたものの、
見事機嫌を取りなおすことができた。









しかしこれ以上やれる自信がかけらもない。
緊張しすぎて、手が震えてきた。
古泉はそれに気付かず俺に抱きついて、
首筋に熱い唇を押しあててきたりしている。







考えろ、考えるんだ、









「・・・・・・・・・・・・」

















 
極度の緊張ゆえに古泉にキスを返すことも、
手で触ることもできずに固まってしまった。
何か言わないと、
何かしないと、
思えば思うほど頭が真っ白になる。
って、俺が真っ白になってどうする。














 
「あの・・・?」
 
 














ついに様子がおかしいことに気付かれてしまった。
不安そうに俺を見つめてくる。






ああ、かわいい、すげー、かわいい。





こんな古泉と、ついに、チャンスがやってきて、
古泉はこんなにやる気だってのに、
俺がこの状態とは、なんたる不覚。
ここで何もできなかったら古泉は拗ねるどころじゃないだろう。
もう二度とやる気になってくれないかもしれない。





どうしたらいい、
どう切り抜ければこの場は丸く収まるというんだ、
長門に電話をして聞くこともできない、
いや何を考えているんだ、
そもそも俺達二人のことであり長門の力を借りるような、

















「・・・・・・いや、ですか・・・」
「あ・・・古泉、その」
「分かりました。・・・すみません」







気持ちよさで潤んでいたはずの目は、
今度は悲しみで滲んでいる。
シーツを握りしめて顔を伏せて、俺から体を離した。









 
「古泉、違うんだ、なんというかだな、説明が難しいんだが」
「いりません。僕が一人で浮かれていただけですから。恥ずかしいです」
「古泉・・・!」
「馬鹿なことをしました。忘れてください」
 









布団を引っ張って、潜り込む。
その前に手の甲に何かが落ちたのを、俺は見た。
















 
古泉を傷つけてしまった。
俺が、その気にさせたのに。
緊張なんか、どうだっていいじゃないか。
古泉が、だぞ。
あの古泉が、俺に、してほしいと思ったんだ。







こんな奇跡をみすみす逃したら男じゃない。
 
















「古泉!」
「ひっ!」
「ごめんな、違うんだ。マジでこんなことになるなんて、思ってなくて」
「や、やめて、ください、耳はっ・・・」
「めちゃくちゃ緊張して何もできなくなった。ごめんな」
「う、うあっ・・・・・・」
 











やればなんとかなる。
自分のことは置いといて、
古泉を気持ちよくさせてやるくらい、俺にも出来る。
はずだ。
たぶん。
きっと。










 
手はまだ震えていたが無視をして、
耳を甘噛みしながら足に手を持っていく。




 
しかしすぐに古泉の手に掴まれた。



「やめて、ください」
「どうした」
「したくないのにしないでください」
「したくないなんて、言ってないだろ」
「手、震えてる、じゃないですかっ・・・」









おいおい、お前は声が震えてるぞ。
嫌がったが半ば強引にこちらを向かせると、やっぱり泣いてた。




これは、こたえる。




完全に俺のせいで泣いてる、泣かせた。














「本当にすまん。俺、ずっと、お前が好きだから」
「・・・」
「いざやれると思ったらこんなに緊張して」
「・・・」
「小心者のつもりはなかったんだけどな。
 どうやらそうだったらしい」


















古泉には包み隠さずに話した。
お前には、俺の情けない部分も知ってもらおう。
何も言わずになんとかしようとしたから、
こいつを悲しませる羽目になったんだ。





額にキスをしながら、白状した。
気持ちは興奮しているのにちっとも勃たずに焦ってることも、
古泉に触りたい、気持ちよくさせたい気持ちはあふれんばかりにあることも、
毎晩お前で抜いてるってことは、言わなくて良かったかもしれないが。


























「僕は・・・」
「ん?」
「あなたが好きです」


















話を聞き終えた後の一声がこれだ。


俺は勃たずしてイくかと思ったね。















「初めてキスをしたときに、すごく、そう思いました」
「古泉・・・」
「だから、ずっと、また、したいと、思っていて」






こんな時じゃなければ聞けない話だろう。
録音しておきたいが、そうもいかないので、記憶したい。
 












「今日のも・・・すごく、好きだと、感じました」
「こここ古泉・・・」
「名前を呼んでくれたのも嬉しかったから、どきどきしましたが、
 あなたはそうじゃなかったのかと思って、少し、落ち込みました」
 





少し、って顔では、なかったな。











「でも理由が分かってよかったです。すみません、怒ったりして」
「お前が謝る必要はないぜ、俺が悪かったんだ」
「いえ、あなたが、そんなに僕を好きだということを忘れてました」

















そう言って笑う古泉が、
あまりにも可愛くて。











俺は前言撤回をして、
古泉を押し倒した。
 




























「勃たない、んじゃっ」
「いや、勃った。今勃った」
「はあ・・・」










体を、擦り付けあう。
足と足を絡めて擦り付けると、
古泉も遠慮がちながらも同じようにしてくる。

すごく、気持ちがいい。
擦るたびに吐息が漏れる。










「古泉っ、古泉、古泉っ・・・!」
「う、っく、う・・・!!」
「なあ、これだけで、すげえ、気持ちいい・・・」
「はあっ、あ、う」






キスもしてないのに、
古泉の口からは涎が垂れてきてる。
絶えず出てくる生唾を飲み込んで、
そのまま続けた。
もう、これだけで、イけそう。
古泉も、同じように見えるんだが、どうなんだろう。



服着たままだけど、
お前の部屋着借りたやつだけど、
お前も同じなら、同罪ってことで、
いいんじゃないか。
















「あ、あっ、や、やあっ・・・!」
「こい、ずみ、い、きそっ・・・」
「えっ!? あ、ちょ、ちょっと、待っ」
「こいずみ、こいずみ、こいずみっ!!!!」
「ぎゃっ・・・!!!」
























古泉、古泉、愛してる、古泉、お前を、心から。
お前ほど好きになれる相手なんてきっとどこにもいない。
だから会えたんだ。
ハルヒも俺らを引き合わさざるを得なかったんだ。
運命だったから。
こうやって好きになって、お前も俺に惚れて、
お互いの体で気持ちよくなれるようになると、
最初から決まってた。



な、そうだろ。
古泉。
気持ちよかったよな。
めちゃめちゃ、
よさそうな顔してたし、
声もとろとろだったじゃないか。

























なのになぜ俺だけ。















「あ、あな、た・・・」
「あれ?」
「あれ、じゃありません!!何してるんですか!」

















体を突き飛ばされ、ベッドから落ちた。
股間が生暖かい。
で、ぬるぬるする。
非常に気持ちが悪い。




古泉は、
俺のようにはならずに、
太股のところだけを・・・俺ので濡らしている。














「気持ち・・・よかった、よな・・・?」
「よかった、ですけど、・・・これはどうかと」
「すまん」
「し、しかたありません、ね」
















恥ずかしい。
これは、恥ずかしい。

古泉も俺と同じタイミングで、出すかと勘違いしてた。
そういうものなのかと思ってた。
一緒にイこうとかさ、ほら、言うだろ。









「下着も、部屋着も、取り替えてください。
 下着は新しいものがありますから、そっちに」
「お、おう」
「シャワー浴びた方がいいですよ。タオルはここです」
「さんきゅ・・・」







てきぱきと準備をしてくれる古泉を、
俺は股間を押さえながら見るしか出来ない。






浴室に通され、では待ってます、と去ろうとする手を握った。
情けなくて赤面している自分の顔が鏡に映る。













「ごめん・・・俺、つい・・・」
「いいんですよ。・・・気にしないでください」





言い方も笑顔も、優しい。
手を繋いで引くと、近くに来てくれた。







「呆れてないか?」
「びっくりしましたけど、平気です」
「寝ないで待っててくれよ」
「ええ、分かってます」





















着替え終わると、古泉は約束通り待っていてくれた。
下は同じように履き替えてる。
俺が汚したから。
い、いたたまれない。













「・・・ぷっ」
「古泉っ」
「あなたは面白い方ですね」
「え?」
「嫌いじゃないですよ、そういうのは」







ふあ、と小さくあくびをして、
ベッドに入っていく。
手招きをして俺を呼び、いそいそと近寄ると引き入れてくれた。







「寝ましょう、もう、遅いです」
「お前は? 俺、だけ・・・なんつーか」
「ははっ。今日はいいです」
「くうっ・・・」











古泉を気持ちよくさせようと思ったのに。
最後まではまだいけなくても、
せめていかせるくらいは。
なのに自分だけ出して、しかもあんな形で。



























「まだ時間はあるじゃないですか」
「時間・・・?」
「これからたくさんです」











どうせずっと一緒にいるんでしょう、



と、



落ち込む俺の髪に指を通して、囁いた。
























その通りだ、古泉。

これからはずっと一緒だ。


俺たちは好き同士だから。



だから今日失敗しても、
情けない姿を見られても、
まだまだ大丈夫。
時間はあるんだ。










一生分。

















「古泉、俺・・・お前を永遠に幸せにする」
「永遠って、あなた」
「大好きだ。大好きで、大好きで、・・・とにかく、大好きだ」
「知ってます」
「だろうな」









俺たちのやりとりは、まるで前と変わらない。
それでも確かな気持ちを感じる。
俺がお前を心底愛してるって気持ちも、
お前から俺の半分くらいは、
同じように想われているってことも。
















「ふあ・・・。おやすみなさい・・・」
「おやすみ、古泉。また明日」
「はい、また明日」
「大好きだ」
「・・・はい」











今までいろんなことがあったけど、
これがゴールじゃなくてスタートだ、なんて、
ありきたりな言い方だよな。








惚れさせると決意したときに、階段に例えていたのを覚えている。
あの頃はやっと一段上がったところだった。
その後、早足で駆け上がることもあれば転げ落ちたこともあった。
立ち止まっても、
諦めなくて、よかった。



























「・・・僕も、好きです、よ・・・」























頂上までいかなくてもこんなとびきりの幸せが、
待っているんだからさ。


















thank you !

今までお読みいただきありがとうございました!
ひとまずこのシリーズはここでおしまいです。18禁回避!
ラブラブばんざーい!

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