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「ば、か……」 頭を撫でると、とぎれとぎれに抗議の言葉を投げかけてくる。 頬に口づけて謝って、 古泉のと、俺ので濡れた指を、 後ろに持っていく。 「あっ……!」 「今日は、やろう、な」 「あうっ……は、はい……」 ベッドに零してしまったのもあるし、これだけじゃ心もとないので、 少し撫でただけで鞄をあさる。 持ってきたローションを手早く取り出して垂れるほどに塗りつけた。 「ぬるぬる、しますね……」 「ん……ゆっくり、するから」 しばらくは人差し指で撫でるだけで、 古泉の表情が徐々に和らいできてから、 あてがってその部分だけをくるくると円を描くようにする。 気持ちがいいのか高ぶっているだけなのか、 それだけで普段とは異なる声が出てくる。 そのたびに心臓に直撃を受けて、 それが股間にまで繋がって、もう、大変だ。 またしても抜きたくなってきたが二発続けて一人でイったらさしもの古泉でも呆れるだろう。 我慢のために腹に力を入れつつ、指先は丁寧に、だ。 少しずつ、指の先を入れてみる。 ローションのおかげか予想外にするりと第一関節まで入ってしまいびびったが、 痛がっている様子はない。 「な、これ、平気か」 「ふあ、あ、へい、き、です」 「もうちょい、入れるな」 「ん、んくっ……ううう」 さらに奥まで進める。 体の中は熱くて、指をぎちぎちと締め付けてきて、 俺のこいつが入りそうには思えない。 多少の強引さは必要だとノートにもまとめた記憶を頼りに、 腰を押さえて人差し指だけを根本まで入れていく。 古泉から漏れる声が急に高くなってやばい、と思ったが、 「だい、じょうぶ、ですっ……」 引き抜こうとした腕を掴んで、そのままでいいと、言ってくれた。 辛くても俺と最後までしたいと思ってくれている。俺はなんて幸せ者なんだろう。 今、この世に生きている人間のうち、これほどまでに自分が幸せだと思っている奴が何人いるのか。 「古泉……好きだ、古泉……」 「あ、あーっ……!」 「もう少しだけ、我慢してくれっ……」 するためには古泉に痛い思いをさせなくてはいけない。 心苦しいが、ここは越えなくてはならないところだ。 指をもう一本、中指も人差し指に沿わせて挿入する。 「はあっ、はあ、う……う、うう」 「痛いよな、ごめん」 ついにぼろぼろ泣き出してしまい俺の心はアリの心臓並に委縮した。 指だけはそのままにしているものの、動かせない。 俺が下手なのかもしれない、早すぎたのかもしれない。 古泉のことをきちんと考えていたつもりでもまだまだ甘かった。 こんなに辛そうにしている相手に最後まで、できるわけ、ない。 「だめ、ですっ……」 「え?」 「やめ、ないで、ください」 今日はここまでにしようと思い指を抜いたが、泣きながら、抱きついてきた。 泣いているせいでうまく言葉になっていない。 それでも必死に、訴えかけてくる。 「さいごまで、しますっ」 「……いや、でも、お前、」 「おねがいします……っ」 あろうことか、自ら足をあげて俺のを、あててきた。 ま、まて、まだ早い。 指だけでも痛がって泣いてるのに、こんなもん入れたら、 今、俺、完全に近いくらい勃起してるし、 入らないぞ、絶対。 焦って言葉も出ない俺に対し、 古泉は深呼吸を繰り返して、 俺を受け入れる準備をしているようだ。 「無理だ。お前の体を傷つけちまう」 「もう……いい、です」 「よくねえって」 「したいんですっ……」 おい、古泉、擦りつけるのはやめてくれ、俺の理性が吹き飛びそうだ。 お前を泣かせたくなくて、辛い思いをさせたくなくて言ってるんだぞ。 お前だってそんなのは嫌だろ? 「痛いのは、我慢します」 「それじゃ、意味ないだろ」 「あります。……僕、僕は……」 両手が、頬を包む。 暖かく、優しい触れ方で。 「あなたの、ものに、なりたいんです」
俺の気持ちを表すかのように雨音が強くなる。 窓に叩きつけるように雨粒が当たって弾け、木々も葉を揺らしてざわめいている。 まさに、今の心境だ。 幸せ死にという死に方があるのなら俺の余命はあと数秒かもしれない。 死にませんように、心から祈りながら、神経を集中させる。 俺と古泉の気持ちは同じだ。 俺が勉強している間、古泉はずっと待っていてくれた。 こうすることを待っていてくれた。 古泉、俺は、一生責任を取ってお前を大切にする。 お前さえ許してくれるなら生まれ変わっても、何代にわたってもだ。 「んっ……ん、う、ううう」 「こ、い、ずみ」 「や、っぱり……おっきい、ですね……っ」 「ばか……」 狭いところをぐいぐい押し広げながら入っていく。 古泉は、俺に心配をかけないように、喉の奥で悲鳴を閉じ込めて、耐えている。 だから俺はその気遣いに全力で答えるべく、古泉と、一つになるために力を込める。 「あう……う、うあ……」 「こいず、み、あと、すこし」 「はい……はいっ……!」 最初はきつすぎて奥まで入れるわけがない、 とくじけそうになったが、 古泉が頑張って力を抜いてくれたおかげでなんとか、あともう少しのところまできた。 かかっている負担は相当のものだろう。 声は押さえていてもあふれる涙がそれを物語っている。 拭っても止まらないからまたすぐに頬が濡れる。 謝っても謝っても足りないが、終わってから、まとめて謝ろう。 今は、こっちに集中だ。 「はっ、う、うっ」 「っく……、こい、ずみ、わか、る……?」 「わか、りま、すっ……」 「やっと……だな」 下のままじゃ、背中も痛い、ように見えるから、そのまま抱きあげる。 「あ、あううっ!」 「おー、ごめん、ごめん」 よかれと思って座らせてみたんだが、 図らずとも更に奥まで入ってしまい、またも、睨まれた。 泣きながら睨まれると、 その、 かわいすぎてますます硬くなりそうなんだが、いいのか、古泉。 抗議される前に口を塞いだ。 息がしにくいだろうから軽く口づけるだけだ。 そうすると途端に大人しくなって、潤んだ目で見つめながら抱きついてくる。 俺もしばらくは動けそうにないから、このまま、一つになった実感に浸ろう。 制服を着ているよりも脱がせると細く感じる。 実際にそうなんだろう、抱きあげていても軽い。 汗と、涙と唾液でぐちゃぐちゃなのに綺麗に見えるのはお前だけだよ。 乱れた前髪を払って、額にもキスをする。 古泉も同じようにしてくれた。 「痛かったろ」 「すこし、だけ……」 「はは。お前は……かわいいな」 涙を舐めてから、今度は深く口づける。 そうしながら古泉の腰を掴んで上下に動かして、 「ひあ、あ、んっ」 「ああ……お前、きもちいい……っ」 「僕も……僕も……」 ローションをたっぷり使ったのでだいぶ滑りはいい。 きつさもあるが、出し入れができるくらいまで慣れてきた。 こいつはこっちだけじゃ辛いはずだ、 動いているうちに余裕が出てきたから、耳や首も舐めてやる。 すると、ぶるぶる震えて自分でもおずおずと腰を動かしてきた。 「無理、するなよ」 「してません、んあっ……、はうっ!」 「古泉?」 「いま、いまの、ところ、きもちい、ですっ……!」 いまのところ? ここらへんか? 「ひゃっ……! あ、あうー……!」 「ここが、そんなに、いいのか。分かった」 そうか、ここが、お前が気持ちよくなれるところなのか。 どこにあるのか探すのも、 それで気持ちよくなるのも大変だとまとめたんだが、 古泉には素質があると。 そういうことだな、これは。 そこを狙って突いてやるのはそう難しいことではなく、 やや強めに当てても、甘い声で返してくれる。 体に力が入れられなくなってきたのか古泉の俺を抱き締める腕がだらりと下がってしまったので、 もう一度ベッドに寝かせてさらに腰を打ちつけた。 「あ、ま、また、出ちゃ……う……!」 「古泉っ……」 「ああ、あ、あーっ……!」 「こ……こいず、おまえ、きつ……!」 俺はまだまだやれるつもりだったが、 古泉のその顔を見て、 俺に突っ込まれて射精しているという事実も目の当たりにしたうえで、 ありえないほどに締め付けてくるもんだからだめだった。 古泉と一緒に達するという夢のようなタイミングには感謝したいが、 せっかく持ってきたゴムを使いそびれた。 つまり、最初から古泉の体内に放出するという失態を犯してしまったのだ。 「はあ、はあっ、はあっ」 「う、うぐ……」 ちゃんと、綺麗に、してやるから、許してくれ……。 「ああっ、きもち、いい、ですっ……!」 「俺も、すげえ、きもちいい」 「うう……好き、です……っ!」 「俺だって、大好きだ、古泉っ」 落ち着いてから中に出したことを謝って、 風呂に一緒に行こうか、と思っていたのだが。 終わってからもずっと抱き締め合って愛の言葉を囁いていると、 古泉も俺に負けじと同じ言葉を言ってきた。 古泉がこんな風に俺に気持ちをぶつけてくることは滅多にない。 いまだに、普段好きだと言うと「分かってますよ」で返されるほどだ。 それが、一つになった今では、愛しているやら大好きやら言ってくれる。 この機を逃す手はないと時折舌を絡ませて言い合っているうちに、 またなだれ込むようにやってしまっている、わけだ。 「い……いく、かも……!」 「僕も……いっしょが、いいですっ」 で、このかわいさ。 どうしたもんかね、まったく。 結局初体験にも関わらず、三回という記録を樹立した。 しかもずっと古泉の体に入りっぱなしで。 体をようやく離すと音が聞こえそうなくらい溢れてきて、焦った。 古泉が惚けているうちに掻きだしてやったが、 余韻のおかげで怒られずに済んでほっとしている。 おかしい。 ノートに書かなかったことばかりだ。 現実は勉強通りにはいかんものだな。 授業中に寝ていても人生はなんとかやっていける、そんな変な自信までついた。 「僕の体……どこかおかしいんですかね……」 「ん、どうした?」 「あんなことされて、気持ちよく、なるなんて……」 「いいことだろ。俺とやるために、そうなってんだから」 「まあ……そうでしょうか……」 さすがにぐったりと疲れた様子で、頭を預けたまま眠そうだ。 俺も、お前の素質や適応能力には驚いたが、ちっとも悪いことじゃない。 何度やってもお前が全く気持ちよくなかったらどうしようかと考えて眠れない夜もあった。 だから、本当に、よかった。 これからも楽しめそうだからな。 「眠いです……」 「いいぞ、寝ても」 「ちゃんと…………」 「ん?」 「……隣にいてくださいね」 「当たり前だ」 途中で腕がしびれても腹が減っても絶対に動かないぜ。 お前の隣を、離れたりしない。 ここが一番安心する場所で、お前は唯一、俺が惚れて大切にしたい相手だから。 お前の隣には、俺だけがいればいい。 いつの間にか雨の音は消えていた。 遠くから鳥の鳴き声も聞こえる。 カーテンを開ければ眩しいほどの光が差し込んできそうだ。 俺もそんな気分だよ。 穏やかで、晴れやかな気持ちでお前の寝顔を見ることにする。 目が覚めたら恥ずかしそうに笑うお前に言ってやろう。 最高にかわいかったことと、 最中に、俺に16回も好きだと言ったことを。 忘れたふりをしても俺は覚えてるから無駄だぜ。 そして、照れて断られると分かっていても、好きだと言ってほしいと願おう。 頼み込む俺に、 お前は優しいからきっともう一度だけ言ってくれる。 そうしたら俺はお前を抱き締めて、最大級の愛を込めて口付ける。 参ったな、こうして体を繋げた後ですらお前とまたキスをするのが楽しみで仕方ない。 お前だからこうなるんだよな。 お前じゃなきゃ、こんなに幸せな気分になんかなれなかったよな。 お前にとっても俺はそういう相手だぜ、俺が保証する。 だから俺についてこい。 ……いや、 一緒に、歩いていこう。ずっと、ずっと。
結ばれました!おめでとう!
古泉はどんな古泉でも健気で頑張り屋さんでエロい子だと思います。
あとこのシリーズの古泉は騎乗位が好きそうです(こらー!)