「僕、あなたを好きになってしまったようなんですが」





 なるべく重く受け取られないように、
 少しでも引かれたらいつもの冗談ですよって笑おうと思って、
 普段通りの笑顔で、言いました。








 場所は文芸部室。時刻は18時26分。
 涼宮さんたちはとっくに帰宅をしています。
 明日の準備をすると張り切って出て行かれました。
 明日は公園で大運動会を実施するんです。
 くじや横断幕を作る作業を毎日していましたからね、
 僕も明日を楽しみにしていますよ。



 今日、部室で出来る作業は早めに終わり、
 その後は彼と二人でお茶をすすりながらゲームをしていました。
 涼宮さんの機嫌がいいおかげで、彼と毎日、
 ゆっくり一緒に過ごすことができました。
 そこは男子二人でやって! と涼宮さんに指令を受けることも多く、
 彼と力を合わせて準備作業を頑張りました。









「お前はいつも、よくやるよな」




 ゲームを始めてしばらく経って、僕が次の手に悩んでいるときに、
 不意に彼がそう言ってきました。



「ゲームの話ですか?」
「違う。作業をだ。お前と一緒にやってると感心するぜ」
「感心、ですか。あなたに言われるとくすぐったいです」
「はっ、何だそりゃ。とにかく、お前はよくやってるよ。
 なんとなく今日は褒めてやりたくなった」








 そんなことを、好きな相手に微笑んで言われたら、
 好きですって、言いたくなります。
 言ってはいけないと、心の内に秘めておくつもりでした。
 僕もそのくらいの分別はあります。
 男同士ですし。
 常識的に考えれば、ありえない話です。



 なのにうっかり言っちゃいましたよ。







「ん?」
「あ、いえ、何でも」
「そうか。茶、入れてやろうか」
「はい、ありがとうございます」








 急須から注がれる緑茶。
 淹れたのは僕なので、いつもより少しだけ、濃い味がします。
 喉が渇いてしまって一気に飲み干しました。




 聞かなかったことになったんでしょうか。
 僕が何を言ってるのか、理解できなかったんでしょうか。




 そうですよね。
 好きだなんて言われても困りますよね。分かってます。
 ちゃんと、すぐに諦めます。




「お前の負けだ」
「……はい。また、負けました」






 悲しくなんてない。泣きそうになんてなりません。
 すぐにゲームボードと湯飲みを片付けました。







「一緒に帰るか」
「いえ、僕はまだ用事がありますので、お先にどうぞ。鍵は戻しておきます」
「そうか? 分かった。じゃあ、また明日な」
「はい」
















 見回りの教師が来るまで、その場を動けませんでした。





 忘れてください。



 僕が、あんなことを言ったのは、
 決して嘘ではないけれど、忘れてください。


 怒られなかっただけでもましだと思わなくては。
 気色悪いと嫌われたら、それこそおしまいです。
 思いが通じることはなくても友人という立場でいられさえすればいいんです。
 友人が望みすぎなら、SОS団の団員、だけでも。



 明日は何もなかったように話しましょう。
 せっかくの楽しい大運動会なんですから。





古泉、ちょっと来い!






「じゃー早速、チーム分けからするわよ。赤と白に分かれてるから、確認してっ」






 涼宮さんの願い通り、本日はすっきりと晴れた空に恵まれました。
 公園で体操着姿で集まって、
 いつもの5人だけでなく鶴屋さんや彼の妹さん、
 彼のクラスメートの方々も着ているので賑やかで楽しい気持ちになりますね。


 くじを引いたところ、彼とは違うチームになりました。
 少し残念ですが、あまり距離が近くない方がいいかもしれない。
 昨日の今日です。
 彼はいたって普通に話してくれますが、
 僕もそのように努めていますが、
 近ければ近いだけ、彼に気を遣わせることになる。







「涼宮さんは白でしたよ。普段は相性がいいのに、くじになると悪いですね」
「俺は一向に構わん」






 彼には彼女がいる。自覚しなくては。
 僕が好きになっていいような、想いを伝えていいような相手ではありません。











 
 最初の競技は鶴屋さんと彼が対戦する様子です。
 僕の出番はしばらくないでしょうからここで大人しく見ていましょう。
 涼宮さんの興味関心は彼に集中しているので、僕が呼ばれることもない。








 昨日思い直したはずなのに、
 彼に会った途端に話がしたくて、
 傍にいたくて、
 目で追ってしまう自分がいます。

 諦めないと彼に迷惑をかけるだけだと分かっています。
 それでも、彼の昨日の笑顔や声が忘れられない。
 僕だけに聞かせてくれた優しい声。



 好きです、駄目だけど、好きです。
 頭を冷やしましょう、日差しは暑いけれど、気合で。




 そう思ってぼーっとしていたんです。









「古泉っ」







 彼に名前を呼ばれたのは、
 脳内であまりにも彼のことばかりを考えていたせいで
 幻聴がリアルに耳に届いたのかと勘違いをしました。




「ちょっと来いっ」






 腕を掴まれるまでは。







「えっ……」









 彼が、彼の指が僕の腕をぎゅっと掴んで、引っ張っている。
 引かれるままに走りました。
 そして一緒にゴールテープを切ったんです。



 何でしょう?
 今は何の競技ですか?
 あなたは赤組、僕は白組。だから一緒に走るなんて、ありえないはずです。



 近くで彼女が一枚の紙を読み上げる。
 何を言っているか僕にはよく聞こえませんでした。








「じゃ、古泉」









 これが現実なのか空想なのかはっきり分からない状態で、
 彼にじっと見つめられました。




 だんだんこれが現実だと分かってきた、まさにそのタイミングで、です。










 肩に置かれる手。
 真面目な顔。
 まっすぐな目が、僕を動けなくさせる。











「好きだ」












 ……え?













 好き?
 僕を?
 す、す、好き?













「へ?」
「多分今、ここら辺にあるはず。心の壁が」
「……」






 彼女の体がふらりと傾いて、地面に落ちる前に、鶴屋さんが抱き止めてくれた。
 僕がそうしなきゃいけなかったのに、動けなかった。







「おい、ハルヒ? 大丈夫かよ」
「んー、ちょっち気を失っただけみたいさねっ」
「涼宮さあん、大丈夫ですかあっ」




 彼も慌てて僕から手を離して、彼女に駆け寄る。










 彼は僕に何て?
 好き? 心の壁? 何ですか、それ?











 彼女の手から落ちた一枚の紙には、心の壁、と書かれています。
 そして長門さんが小さな声で、今のは借り物競争だったと教えてくれました。









 ……携帯電話が震えてる。










 見ると、今までに観測した中で最大の閉鎖空間が発生したという報せが入っていました。
 僕も、行かなくては。










「そういうわけで、特大の閉鎖空間が発生できてしまったので、行ってきます」
「悪かったって」















 ……からかったんですね。
 僕の心を弄んだんですね。
 僕が好きだって言ったから、
 あんな風に皆さんの前で茶化して……
 鶴屋さんが向けてきた気の毒そうな視線、とても耐えられません。
 そそくさと逃げるようにその場を離れ、閉鎖空間へ急ぎました。











 ……ときめいてなんていません。
 一瞬どきどきしたなんて、そんなこと、ありませんから。
 冗談でも嬉しかったなんて、僕、そんな馬鹿な人間じゃありませんっ。
























「古泉、今日は絶好調ね」
「閉鎖空間だけじゃなく、神人もいつもより大きめだけど、
 動きは大人しいなあ。戸惑ってるような感じさえする」
「ええ。涼宮ハルヒに衝撃があったのは確かだけど、
 ストレートに怒りをぶつけられない何かだった様子だわ」
「森さん、裕さん、終わりました」
「お疲れさま、古泉」
「一樹くん、夕飯一緒に食べていくかい」
「はい、そうします」











 特大の閉鎖空間に特大の神人でしたが、倒すのはさほど難しくもなく、
 むしろ普段よりも早めに片付きました。
 体もなんとなく軽いのは体操着だからでしょうか。
 ご飯を食べに行くなら着替えなくては。
 







 裕さんの車に揺られて森さんと3人で向かった先はファミリーレストランです。
 途中、大運動会は無事に終わったと長門さんからメールがありました。
 よかった、皆さん、無事で。
 もう帰られたんでしょうか。





 彼は、何を考えているんでしょう。
 僕をからかったこと、どう思っているのかな。
 少しは僕のことを気にかけてくれているなら……







「古泉!」



 おや、彼に似た声が僕のような名前を呼んでいますね。







「あら、古泉くんじゃない。そっちにいるのは、確か古泉くんの知り合いの劇団員の……」
「森です」
「多丸です」
「こんにちはぁ」






 なんと皆さんがちょうど出てくるところでした。
 偶然ですね、ちょうど突発のアルバイトが終わってお二人と夕食を想って来たところなんですよ、
 と説明すると、すぐに納得して、その場で改めて解散式をしてくれました。
 お一人、彼のクラスメートの方がいない気がしますが……用事が出来て先に帰られたんでしょうね。














「それじゃ古泉くん、今日はお疲れさま」
「まったねー!」
「はい、また月曜日に」









 駅へ向かう皆さんに手を振って、
 森さんと裕さんとファミリーレストランに入ろうとしたところで、です。




「森さん、多丸さん、古泉を借りてもいいですか」





 入り口の手前で腕を引かれました。



 振り返ると、彼がいる。

 え、僕、ですか?






「どうぞ。今日の用事は終わりましたから」
「苛めないであげてね」
「あ、あの、ちょっと」
「行くぞ。あっちに別の飯屋がある」
「え、ええっ」
「一樹くん、またねー」
「行ってらっしゃい」









 森さんと裕さんは何も迷わずに僕を託しました。
 にこにこと笑顔で僕を見送り、二人だけで店内に入っていく。
 その背中には追いかけてくるなと書いているように見えました。











 本日の神人のごとく戸惑う僕を、彼はまた引っ張っていきます。
 妹さんはどうしたんですかと聞くと、今日は朝比奈さんの家に泊まるのだそうです。
 早足で進んで連れられた先は、
 ……今日大運動会をした公園でした。
 ご飯を食べに行くんじゃないんですね。
 あなたは、食べ終えたんですもんね。

















 昼間は家族連れでにぎわう公園も、夜になると人影がない。
 彼はその中でも誰も通りかからなさそうな、
 象の形をした滑り台の中に僕を入れました。
 真っ暗です。
 街灯の明かりも、月明かりもほんの少ししか差し込んでこない。









 僕をここに閉じ込めて何をするんでしょう。
 もしかして怒っているんですか?
 僕が、好きだと言ったこと。
 皆さんの前で恥ずかしい思いをさせるだけじゃなく、
 もっと痛い目に遭わせてやろうとしているとか。






 暖かい夜なのに寒気がしてくる。
 彼はなぜか、僕をここに入れたら「待ってろ」と言ってどこかへ行ってしまいました。
 彼の言うことを聞かないという選択肢はない。
 このまま戻ってこないかもしれない。
 ずっと待たせて風邪を引かせて、
 そして明日の夜に見に来てまだ待っていた僕を嘲笑って……









「古泉、ほら」
「うわ!」
「何だよ。ビビリすぎ」
「す、すみません、すみません」
「だからビビリすぎだ。腹減ってんだろ、悪いな、今はジュースで我慢してくれ」






 手渡されたのは、果実入りのみかんジュース。
 あなたはこれを買ってきてくれたんですか。
 僕を置き去りにするのではなく。









「わ、わ」
「怪我はしてないな」
「してませんっ……」








 急に顔を触らないでください。
 あなたに触られるとどきどきする。
 僕の心拍数ばかりが上がって、恥ずかしくて顔が赤くなってしまいます。






 近づいてきた彼から体を離しましたが、
 彼はまた近寄ってきて、
 ついには端まで追い詰められてしまいました。







 何なんですか、怒っているならはっきり言ってください、
 土下座しろと言われたら、しますから。











「こら。逃げるな」
「ち、近いですっ」
「いつもはお前の方から来るくせに何だ」
「うう……」








 あなたが好きなんです。だから近くにいきたい。
 その気持ちが行動に出てしまったこと、
 何度かあったことは認めます。
 謝ります。
 ごめんなさい。
 もうしませんから、許してください。







 そのように謝りたい、のですが、
 彼があまりにも近くで僕の両腕を掴んで押さえてくるので顔を上げられません。





















「悪かったな、今日は。柄じゃないが浮かれてたんだ。反省してる。許してくれ」
「ご、ごめんなさい」
「お前が謝るなよ。聞いてるか?」
「うう、ごめんなさい」
「おい。またわけの分からん勘違いをしてるな……。顔上げろ、人の話を聞け」









 彼の声が聞こえてきますが、頭に入ってこない。
 何を言ってるのか全く分かりません。

 すると彼は息を吐いて僕をその場に座らせ、
 両手を頬に当て彼のほうを向かせたんです。






「あっ……」
「そのままでいろよ」












 滑り台の中は真っ暗です。
 彼の顔もぼんやりとしか見えない。
 




 でも、こんなに近くに来られたら、見えます。






 あなたの、閉じられた目。
 く、くちびる、が……












「ん、う」
「………………分かっただろ」














 唇に熱がこもる。
 指で触れると、びっくりするくらい、熱くなっています。
 今のは……
 い、今のは……まさか。














「古泉」
「き、す」
「だな」
「あなたが、僕に?」
「それ以外の人間はいない」












 はい、いない、です。
 だから、あなたが僕にキスをしたのは、事実。
 これは夢じゃない。
 夢の中でも閉鎖空間の中でもない、現実の出来事。










「俺もお前が好きだ」
「あれは、嘘じゃ」
「ない。あの言い方が悪かったのは、本当にすまなかった」







 彼は心から申しわけなさそうに言いました。








 嘘でも、からかいでもない。
 彼が僕を好きだと言ったのが、本当のこと。
 まさか。そんな。あなたが僕を? どうして?










「お前がかわいいから」
「かわっ……!」
「あれだけ好きオーラを出されりゃ俺だって意識するさ」



 す、好きオーラなんて、そ、そんな、出したつもりはありませんっ。




「そうか? 分かりやすかったぞ。
 昨日お前に言われなくてもいずれ俺からと思ってたけどな、
 お前に先に言われて、予想外だったが、嬉しかった」








 信じられないことに、
 話している間彼は僕の頭を撫でたり額に口を付けてきたり、
 だ、抱き締めたりと、
 僕の心がとても追いつかないほどの愛情表現をしてくれました。







「古泉、好きだ」









 嬉しいとか、それすら考えられません。
 どきどきしすぎて、失神しそうです。
 あなたが僕を好きだと思っていてくれてるなんて、
 想像もしていませんでしたから。
 現実だと分かっていても実感がわかないんです。







 どうしよう。
 頭の中ぐちゃぐちゃで、整理できません。







 でも……
 やっぱり、う、嬉しいです……っ。





























 僕はいつの間にか気を失ったようです。
 気付いたとき、自分の家のベッドの上にいました。
 でも、毎朝見ている天井は見えません。

 彼が至近距離で見つめていたから。










「目が覚めたか」
「あ、あれ、僕……」
「余計なことは考えなくていい。……古泉」
「ん……」








 彼に告白されたこと、
 気持ちを受け入れてもらえたこと、
 夢かと疑う隙はない。
 

 すぐにキスをされました。
 何度も何度も数え切れないくらい。











「俺と付き合えよ」
「僕で、いいんですか?」
「お前がいいんだ」
「……僕も、あなたがいいです、あなたじゃなきゃ……」
「ああ」

































「ん、んっ」
「古泉……口、閉じるなっていつも言ってるだろ」
「す、すみません」
「そのまま開けてろ。怖くないだろ?」
「は、はい、……あ、あう」






 あの時に彼から正式にお付き合いを申し込まれて、
 今も僕たちはこうして仲良くしています。





 僕が思ったよりもずっと、彼は僕を、大好きなようです。




 なんて言うと僕が自意識過剰のように聞こえますが、
 そうじゃないんです。本当なんです。とても、そう感じるんです。






 毎日キスをしようと言ってきて、
 慌てる僕をぎゅっとするといっぱいキスしてきて、
 びっくりして口を閉じたままにしていると今のように開けさせて舌を入れてくる。





 何度しても慣れません。
 こんな、どきどきする行為は。
 キスをするときに自然と口を開くのも、とても難しいことです。
 舌が触れるとたまらなく気持ちよくなりますし……。








「う、ううっ」
「あー、しがみついてていいから、力は抜け」
「頑張りますっ……」
「おう」







 こんなに気持ちのいいことばかりされたら、体
 が反応してしまいます……。
 強く抱き締められるから、
 僕がどうなってるか彼はすぐに分かるはずです。
 何も言ってきませんが、感づかれていると思うと、恥ずかしい。









「はあ、はあ、あう」
「んー……」
「んっ、ん、んう、う」
「…………」
「ううう、ん、あっ……」
「なあ……」
「ふ……」










 前髪をかき上げるように撫でて、また唇に軽いキスを繰り返す。
 もう、気持ちよすぎて、おかしくなりそうです。
 あなたのキスは、誰と比較するでもありませんが、
 とても、上手だと思います。
 こんなに気持ちよくなること、他にないです。








「お前さ、すごいよな」




 耳元でぞくぞくする声で言われました。
 何がすごいんでしすか?






「感じ方が。日に日に増していってないか」
「え!!」





 か、か、感じっ……!



 見れば彼の足が、僕の両足の間に入り込んできてる。



 恥ずかしいです!
 逃げたいのに、彼ががっちりと腰を押さえていて動けない。
 頭に血が上ってきてくらくらする。









「バカにしてるんじゃないぞ。そんな、泣きそうになるな」
「ですがっ……」
「かわいいと思ってるんだ。お前がいいなら、今以上のこともしたいんだが」








 い、今以上? どういう意味でしょう?
 あなたの腕の中にいると思考能力が半減どころではなく下がるんです、
 どきどきして、何もまともに考えられなくなっちゃうんです、
 だからあなたが何を言っているか、分かりません。








「だから、こういうことだ」
「わあ!」
「俺が帰ってすぐトイレに駆け込むよりは、よくしてやれると思うけどな」







 な、な、トイレになんて、駆け込んでませんっ!
  どきどきしすぎるからあなたと別れた直後は呼吸を元に戻すだけで精一杯です、
 悶々とした気持ちになるのは夜眠る前で、
 そのときは、
 あなたの声とか指を思い出すだけで、
 その……







「そうか。古泉は俺でオナ」
「わー、わー!」
「なんだよ」
「恥ずかしいことを言わないでください!」
「おいおい……高校生にもなって何を恥じらってんだ」







 恥ずかしいですよ、平気で言える方がどうかしています。
 あなたはまさか教室でも、そういう話を大っぴらに言えるんですか?
 ああ、そういえば、そんな感じのご友人がいらっしゃいました。
 僕は違います。
 あなたが僕をそういうタイプだと思っていたなら心外です。







「うむ……そう言われればそうだな。けど、一人でやらないわけじゃないだろ」
「うっ……」
「どうなんだ。俺に隠し事する気じゃないよな?」


















 あなたに、隠し事なんて、出来ません。
 森さんから、絶対に言っちゃ駄目だと念押しされた機密くらいしか。

 僕自身の事なら何でも言える、言いたい、分かってほしい。
 あなたは僕の気持ちを受け止めてくれた人だから。
 僕を、好きになってくれた人だから。
 あなたには僕の全てを知ってほしい。











「し、します……」






 でも、こんなこと、別に言わなくてもいいんじゃ……
 言ってしまった今となっては遅いですが、
 あなたのにやけた顔を見たら、余計そう思います。









「俺で?」
「……そうですっ……」
「そうかそうか」







 彼は嬉しそうに僕の頭を撫でてきました。
 うう、僕は嬉しくありません。
 恥ずかしくて抗議をしようとしたらいきなり体をうつ伏せにさせられて、
 その姿勢のまま、服を、太股まで、脱がされました。





 え、
 えええ!










「正直に言えたご褒美をやろう」
「ちょ、ちょっと、待ってください! ななな」
「見られるのは恥ずかしいだろ、だから今日は後ろからな」





 気を遣ってくださってありがとうございます、じゃなくて!
 ぼ、僕の、を、彼の、手が……!
 無理です、駄目です、どきどきしすぎて、涙が出ます……!








「ふ、う、うっ」
「大丈夫だ。怖くない」
「でも、でも……!」
「俺もよくお前でやってるから、慣れたもんだ」







 い、意味が、分かりません。
 頭の中で、ですか?
 それとこれとは違います、これは、現実の出来事なんですよっ。





 じたばたしても無駄でした。
 彼の指がそこに触れると、動けなくなる。
 しきりに耳元で優しい言葉をかけながらゆるやかに擦られて、
 その声と行為が、気持ちよくないはずがなく、













「古泉、かわいいな」
「う、うう、あううっ……!」













 自分でするときだってこんなに早くないのに、


 数分と持たずに……



 シーツに……











 このままどこか遠くへ行きたいですっ……!



「裸のままでか? そりゃまずいだろ」




 そういうことじゃありませんっ!
 

























 あの告白から、彼とこのような関係を築くようになるとは、
 予想もしていませんでした。
 別の意味での心の壁はありますが、
 彼が言うには僕は潔癖すぎるらしいので、取り払えるように、
 頑張りたいと思います。







「ん、んうっ……」






 でも、部室でえっちなことをするのは、だ、だめじゃないでしょうか……






 い、いいの、かな……










thank you !

ハルヒちゃん7話で盛り上がって書いた話でした。
途中からただのいちゃいちゃになってますが^q^
あの話はいろいろ妄想できる!

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