僕は、天使です。 天使の国に生まれ、たくさんの優しい天使たちに育てられ、 一人前になってからは師匠について人間界に住む人々の安全を守るために、 毎日がんばっています。 具体的には、 探し物をしている人にそれを見つけて届けたり、 野菜に害虫がつかないよう見張ったり、 綺麗な花が咲くように歌ったり、 担当している町に近づくモンスターを追い払ったり、 というようなことをしています。 モンスターを一人で倒すにはまだまだ力が足りず師匠に助けてもらっていますが、 これからは一つの村を一人で守ることになったので、 鍛えなければ、と思っているのです。 師匠に助けてもらいながらゆっくりマイペースでやっていきましょうとのんびりした気持ちでいたのですが、 それも束の間。 天使の国を襲った大地震で、 僕は羽を広げることも出来ず地上に落ち、 大怪我をした挙句天使の力を失ってしまったのです。
「へえ、故郷を探してるんだねっ。 記憶を失って、自分が天使だとか言っちゃって、面白い子だなあ、あははっ」 僕が天使の頃、僕の姿は誰にも見えませんでした。 でも今では人間の皆さんに見えているようで、 依頼を受けて助けた女性には同情までされています。 「でも、探すのは良いけど、いつきくん一人じゃ不安にょろ? あたしのとこに来るといいさっ。 ちょうどいい仲間、紹介してあげられるかもしんないよ」 彼女は名を鶴屋さんといい、大きな街の宿屋に併設されている酒場を切り盛りしているそうです。 僕が守っていた村に留まっていればいつか師匠が迎えに来てくれるかもしれない。 でも、それを待っていては天使の名がすたります。 自分の力で戻れたなら、師匠も長老も僕をほめてくれるはずです。 鶴屋さんの好意に甘えさせてもらいましょう、 仲間がいてくれるなら、心強いです。 「こっちがみくるんで、こっちが有希っこ。みくるんは回復系が得意なのさっ。 で、有希っこは攻撃魔法。あとは、そっちにいるのがキョンくん。 戦士タイプで、力はあるけど動きはちいっと遅いのさっ。 どうだい? 他の人も、紹介できるけど」 彼女の酒場まで行くと、3人の方を紹介されました。 一人は朝比奈みくるさん。 僧侶の職についていて、傷を癒す魔法を使えるそうです。 助かりますね、一人で旅をしてきた今、腕も足も擦り傷だらけですから。 そして、その右隣が長門有希さん。 長く魔法使いをしていられるそうで、なんともうレベルが60を越えています。 とても頼りになりそうです。 僕なんてまだ5ですから……長門さんから見れば赤ん坊のようなものでしょう。 最後に。壁に寄りかかっている、剣を携えた男性。 彼はキョン、というあだ名をつけられ、 名乗ろうとするたびに鶴屋さんの笑い声で横槍を入れられ言えず仕舞いです。 男性が一人はいたほうが気が楽ですし、ご一緒しましょう、戦士さん。 「なら、一緒に行こう」 「そうかいっ。じゃあそうしよっか。 もし嫌になっちゃったらいつでもここで別れられるからねっ」 「鶴屋さん、そんな、不穏なことを」 「まあまあいいじゃないかっ。頑張ってきておくれよっ」 「はあ」 仲が良いんですね。楽しそうでうらやましいです。 僕も師匠と冗談を言い合うような仲になりたいと思っているのですがまだ実現していません。 皆さんと、どのくらい長い間一緒にいられるか分かりませんが、 仲良くなれると嬉しいです。 「で、いつきだっけ。お前はどこに行きたいんだ」 「上、の方だと思うんですが」 「上? 北ってことか?」 「ええと……」 「そんなら関所を通る通行証が必要になるな。城まで行って、王様にもらってこようぜ」 「はい」 「いつきくん、これから、よろしくお願いします」 「……よろしく」 「はいっ」 どうやら、上手にコミュニケーションが取れていないかもしれません。 でもそれは、これから一緒に旅をするうちに、何とかなりますよね。 王様に会いに行くと、 お姫様が怪しい騎士に狙われているから騎士が指定してきた時間にその場所へ行き、 倒して来いと言われてしまいました。 倒せたなら通行証でもなんでも発行してやると。 なので、僕たちは装備を整えて騎士指定の湖まで出かけることとなったのです。 「お前さ、足元寒くないのか、その格好で」 「風は入ってきますが大丈夫ですよ。それに装備を買うお金もありませんし」 「その辺の雑魚倒して金集めるしかないな」 布を巻いただけの格好を見て、彼は眉をひそめています。 心配してくれているんでしょうか? 優しい方ですね。 戦闘が終わるたびに足を撫でたり、 服のボタンを外して体を見てくるのも、 怪我をしていないか確認してくれているんですよね。 「……イオナズン」 とはいっても、長門さんが戦闘開始直後に強力な呪文でモンスターを殲滅してくださるので、 僕は攻撃を受けることなく経験値とお金を手に入れているんですが。 途中立ち寄った町で、 彼は僕にうさぎの耳がついたヘアバンドを買ってくれました。 人の家にお邪魔したときにツボやタルを割ったりタンスを覗いてはお金を奪って、それを貯めて、買ってくれたんです。 盗むのは良くないと思いましたが人間界ではそれが常識だということです。 知りませんでした、僕。 まだまだ人間のこと、理解していませんね。 一人前の天使になったと思い込んでいましたがまだまだのようです。 「似合いますか?」 「かなりな」 「よかった。ありがとうございます、こんなに素敵なものを買ってくださって」 「……今日はもう遅いから宿屋に泊まろうぜ」 「そうしましょうか。朝比奈さん、長門さん、お二人は同じ部屋でいいですか?」 「は、はいっ」 「構わない」 では、僕とあなたは男同士なので同じ部屋、ということで。 「あの、何、してるんですか」 「お前に色気をつけてやろうかと」 「いろけ?」 「つけりゃ、レベルが低くてもモンスターが見惚れて攻撃しなくなるんだぞ」 そうなんですか、それは初めて聞きました。 師匠に以前プレゼントしてもらったネグリジェをすっかり脱がされてしまいました。 あちこち、撫でたり、舐めたり。 こういうことすると、いろけが付くんですね。 優しいだけではなく物知りなんですね、 人間を守っているつもりでしたが実際に降り立つと、 守られてばかりです。 あなたが言うとおりいろけを付けて、 少しでも気を引いた方が役に立てそうです。 僕に出来ることを一つずつでもやっていかなくては。 「んっ」 「どんな感じする?」 「くすぐったい、ような、おなかがきゅってなるような、感じです」 「ああ、それでいい」 「ん、んうう……」 変な感じがして、彼の背中に手を伸ばしてしがみつきます。 彼は吸血鬼みたいに首筋に歯を沿わせて、 血を吸いはしませんがちくりとするくらいの強さで噛んでくる。 そして、その後にぺろぺろと舐めるんです。 背 筋がぞくぞくとして、どこから出たのか分からない、高い声が出てくる。 ちょっぴり恥ずかしいですが彼は目を合わせるたびににやりと笑って大丈夫だと囁くから、 これで、いいみたいです。 体を預けたままにしていると数分後、彼の手が下半身まで伸びて、 そこも撫でられてしまいます。 き、きもち、いい、です。 体の作りは人と同じで、人がどんな風に子どもを作っているか、 どうしたら気持ちがよくなるか、勉強はしました。 僕たちもいずれは子孫を残さなければいけません。 彼が僕にしてくれてることは、たぶん、それに近いこと。 人との間に、子どもを作ってもいいんでしたっけ? そんな前例はありませんよね。人間に触られた、すら聞いたことがないのに。 それに、僕、男だから、男の人とじゃ、出来ないようにも思えます。 「あっ、あ、ん、んん」 「いつき、気持ちいい?」 「はいっ……気持ち、よくて」 「よくて?」 「おしっこ、出ちゃいそうです」 「多分それ、違うから」 違うんですか、何か、出そうなのに。 これ、何でしょう。 ベッドの上で出しちゃ駄目ですよね、汚しちゃうから、宿屋の人に申し訳ないですし。 「いいぞ。俺が飲むし」 「えっ! き、汚いですよ、う」 「汚くない。舐めるのだって平気だ」 「あう! あ、ああ、やっ……」 そんなところを、舐めるんですか! 人は想像のつかないことを、平気でするんですね。 すごいです。僕、感動して、涙まで、出てきました。 気持ち良いです、 あなたの舌が動くたびに、 指で擦られるたびに、 気持ちが高ぶってきて、 「だ、だめっ……!」 彼の言うとおり、おしっことは全然違うものが、 違う感覚で、出てきました。 それはとてつもなく気持ちが良くて、 口をつけて待ち受けていた彼の頭を力いっぱい押し付けてしまうほどで、 全部出し切ってからその事実に気付き慌てて手を離したのですが、 彼は満足そうに唇を舐めて僕の頭を撫でてくれたのでした。 出したらとたんに眠気が襲ってきます。 今日はたくさん歩いて、皆さんとも出会って、話して、 モンスター退治も(ほとんど長門さんが、ですが)しましたし、 疲れていたようです。 ごめんなさい、あなたが抱きしめてくれる腕の中があまりに暖かくて、 気持ちがいいから、寝ちゃいそうです。 「おやすみ、いつき」 「おやすみなさい……」 優しい声。 どことなく、師匠の声に似てる。 安心します。いい夢が、見れそうです。 おやすみなさい。 翌日僕たちは、騎士が悪い人ではないことを知り、 お姫様や王様の誤解を解くために奔走しました。 ややこしい話になったりもしましたが最終的には和解し、 お姫様や王様にお礼を言われ、北の街への通行証を手に入れられたんです。 でも、本当は北じゃなくて天使の国へ帰りたかったんですが、おかしいですね。 いいんでしょうか、北でも。 「いいわけないでしょ。流されちゃってるんだから」 「すみません」 「ま、どの道このままじゃ箱舟は動かないし、 いつきくんには頑張ってもらわなきゃいけないけど」 「はい。いいことをして皆さんに感謝してもらって、 ありがとうの気持ちをたくさん集めればいいんですよね」 「説明くさい台詞だけど、その通りよ」 「いつき、何を一人でぶつぶつ呟いてるんだ? 行くぞ」 「あ、はいっ」 僕が今話していたのは、 旅の途中で知り合った天使にしか見えない存在の、涼宮ハルヒさんです。 だから彼女と話していると僕は宙を見て一人ごとを言っているようにしか見えず、 彼や朝比奈さん、長門さんには不審がられています。 彼女は天使の国と神の国を結ぶ天の箱舟という乗り物の運転士をしていて、 箱舟は故障中なのですが人の感謝のオーラを集めてその力で満たせば動くのではないか、 という仮説を立てています。 オーラは僕も天使の力があれば形になって見えるのですが、 今はどれほどか、分かりません。 涼宮さんが言うには、 常に戦士の彼の周りにはオーラが漂っているそうですが……。 僕は何もしていないのに、なぜでしょう。 ただ毎晩気持ちのいいことをしてもらっているだけで、 あとは彼が貯めたお金でかわいらしい装備をもらって、 ……僕が感謝こそすれ、彼に感謝されるようなことは何一つしていないのに。 不思議なものです。 「でも、あいつのオーラだけが溜まるなんて癪だわ。 だからちゃんと、いろんな人のオーラを集めなさいっ!」 「分かりましたっ」 そんなわけで僕たちはまた色んな町を転々とすることになるのでした。 「お前、本当に天使だったのか」 「そうなんです」 「……行っちまうのか」 「はい。戻って皆に無事を伝えないといけないので」 「また来るよな? 無事だって言ったら、また、俺たちに会いに来るんだろ」 旅を続けるうちに、人助けをするうちに、僕は天使の力を微量ながら取り戻しました。 そして涼宮さんと一緒に箱舟で天使の国へ帰ることが可能になったのです。 意気揚々と帰ろうとしたところ、 それを伝えたら彼が泣きそうになって、 僕の手を掴んできて、 引きとめられてもう数時間が経過しています。 朝比奈さんと長門さんも若干呆れ顔です。 涼宮さんも、怒っていますし……。 そろそろ手を離してもらわないと。 「人間界には来ますよ。でも、僕が完全に天使に戻ったら、もう皆さんの目には映らないんです」 「なっ……! お前はそれでいいのか!」 「でも、仕方ないですよね」 「馬鹿野郎っ……」 「ええ?」 「もう、知らん。さっさと帰れ」 穏便に済ませようと思ったのですが、彼は怒って走ってどこかへ行ってしまいました。 追いかけようかと思ったのですが涼宮さんに腕を引かれ、箱舟に乗せられてしまったので無理です。 残念ですがお別れの挨拶なら十分しましたし、いいですよね。 さあ、天使の国へ帰りましょう。師匠や長老に無事だと伝えなくては。 「いつき!」 僕が姿を見せるなり走り寄ってきた彼に、痛いほど抱きしめられています。 天使の国へ戻った僕は、地震によってぼろぼろに変わり果ててしまった故郷を見て愕然としました。 師匠は僕を探しに出たまま戻らず、長老もがっくりと肩を落とすばかり。 天使の力を取り戻すことも出来ませんでしたが、 大昔から僕たちを見守ってくれている大きな木、世界樹に、 失われた黄金の果実を実らせれば必ず道が開けると長老に言われ、 またも僕は人間界へ黄金の果実を探しに行くことになったのです。 涼宮さんの運転で箱舟に乗り込み人間界へ戻ると、早速皆さんが迎えてくれました。 ほんの一日しか離れていないのに彼はよほど寂しかったようで、人目もはばからずに抱きしめ続け、 「あの、僕、探さないといけないものがあって」 「いくらでも手伝ってやる。けど、今日はもう遅いから寝るぞ、ほら、こっちに来い」 「は、はい」 あれよあれよという間に宿屋の一室に連れられてしまいました。 そしてあっという間に服を脱がされて、いつものことをしてきます。 でも、今日はなんだか、焦っているように感じます。 脱がし方も強引だったし、僕の体を押さえつけてくる手の力がとても強いです。 そんなにぎゅって押さえなくても、僕、逃げませんよ。 「いつきっ……」 「ふ、あ」 「もうどこへも行かないでくれ」 「えっ?」 「お前を、放したくない」 僕の頬に手を当てると、何回も何十回も、唇を重ねてきました。 繰り返すたびに体中が熱くなって、唇がとろけそうになる。 僕を想ってくれている気持ちが、溢れんばかりに伝わってくる。 どうしてそんなに僕を? あなたは人で、僕は天使で、出会ったのは、ついこの間なのに。 ああ、でも、この人の温度を、この人の腕の中の心地よさを、 僕はずっと前にどこかで知ったような気がする。 どこか分からないけど、とても、大切な…… 「いつき」 「あ、はい」 「今日、しても、いいか」 「何をですか?」 「今までやったより、もっと、気持ちいいこと」 今までよりも、もっと。 今までだってすごかったのに、あれ以上があるとは。 何をするのか分からない不安よりも、 好奇心の方が大きくて、 彼と見つめ合ったまま首を縦に振りました。 そうしたら、もう、そこからは、大変でした。 頭がおかしくなるくらい何度も何度もあそこから液体を出させられて、 やめてほしいと訴えても何を言っても聞こえていないようで、 途中からは声をあげて泣くくらいしか出来なくなりました。 泣いたのは、辛いから、だけではなく、 あまりにも彼がしてくることが気持ちよかったからです。 舐めながら体の中に指を入れられた瞬間は一瞬意識が吹き飛びました。 外側だけじゃなくて、中まで彼に触れられてる、 それは、少しだけいけないことのように思えました。 でも、あなたにされるのは怖くない。 毎日触られているからか、 それとも遠い記憶で同じことをしていたのかは、はっきりしないけれど。 「いいよな、もう」 「ん、んっ、んうう」 「少し、痛いかもしれんがすぐ良くなる。我慢してくれ」 「はい……はいっ」 経験はなくても彼が何をするつもりなのか、途中からぼんやりと想像していました。 子どもを作る行為に似たこと。 男同士じゃできないと思っていましたが、 彼に指を入れられてるところ、ここで、するみたいです。 足を持ち上げられて、彼は、履いていたブーメランパンツを脱ぎ捨てます。 露になった体は、直視するのが同性の僕でも恥ずかしいほど、 す、すごいことになっていました。 天使の国がある方向にまっすぐに伸び……、 あっ、 そんなことを考えているうちに、 彼が、 ぼくの、 なかにっ…… 「あう、す、すご、い、ですっ」 「いつき、痛いか、ごめんな」 「だい、じょぶっ……う、あ、あっ」 指でいっぱい触ってもらっていたおかげなのか、 彼のが入ってきても失神するほど痛くはありません。 それでも、モンスターから痛恨の一撃を食らったくらいの痛みはあります。 明日の朝、朝比奈さんにベホイミをかけて回復してもらわないと…… 「いつき……っ」 あなたも、汗びっしょりで、大変そうです。 二人でこんな、瀕死状態になりそうな行為をして、 涼宮さんにはバカみたいって笑われるかもしれない。 でも、どうしてでしょう、 あなたと一緒になれるのが、とても、うれしいです。 最初は痛かった行為も、続けるうちに痛みに慣れ、その代わりに気持ちよさが生まれました。 彼が僕から離れたり、 入ったりするたびに、 体の奥が熱くなって、 頭の先まで熱が走る。 言葉にならない声をひたすら上げてまた液体が飛び出して、 気持ちよさで頭がくらくらしてきたら、 急に体内に生暖かいものを感じて、彼の動きが止まりました。 僕が出したものと同じのを、出されたようです。倒れこむように僕に抱きついて、耳を噛んできます。 「いつき、いつき……」 「はい……ぼくです」 「はは。分かってる」 「背中、びちゃびちゃですね」 「お前の腹もな」 あなたのは汗で、僕のは違う液体ですが、おんなじ、ですね。 「涼宮さん。僕、どうやったら人間に生まれ変われるんでしょう」 「はあっ!? まさかとは思うけど、あいつのためにそうなりたいなんて言い出すんじゃないでしょうね」 「さすがは涼宮さん。その通りです」 「……方法がわかっても教えてあげないっ」 「どうしてですか?」 皆さんと一緒に旅を続け、黄金の果実も五つ目を手に入れました。 あと二つ集まった頃に天使の国へ果実を届けに行こうと思っています。 願いを叶える竜の玉も七つ集めろと言いますしね。 「いつき!」 彼は全力で、いつも僕を守ってくれます。 モンスターが襲ってくると僕の前に出て攻撃を受け、 彼が毎日履いていた防御力の高いブーメランパンツも譲ってくださいました。 彼の体温が残っていて一枚で履いても寒くないんです。 涼宮さんには例のごとく叱られてしまいましたが、僕はいつも、彼女が怒っている理由が分からないのです。 「はいっ」 「果実のうわさを聞いたぜ。早速向かおう」 「ありがとうございます、行きましょう」 彼が差し出してくれた手を握り、僕たちは走り出しました。 天使の力が戻って、 あなたが僕をその目に映さなくなっても、 触ってもらえなくなっても、 今度は、 僕があなたを守ります。 あなたがどこにいても。 他の誰かと一緒にいても。 でも本当は、僕がそうなりたい。 もし天使の力を取り戻して、 僕の願いを、神様が叶えてくれるなら、 あなたと同じ人間になって、 たとえ寿命が短くなっても、 天使の国へ帰れなくなっても、 あなたのそばにいたい。 そんな方法があるかどうか分からないからあなたには言えないけれど。 離れたくないって、思うだけなら、いいですよね。 大好きなあなたの手。 僕を、ずっとずっと、離さないでください。