HB



深酔






やわらかい髪。
触り心地のいい、肌。
手の甲を指でなぞっても、
古泉は一定の呼吸を保ったまま、
気持ちよさそうに眠りについている。




 






田舎のじーさんが酒豪で、
俺も小さい頃から鍛えられていた。
だから、酔ったふりをして古泉にも酒を勧め、
酔わせて眠らせるのは簡単だった。

 









「古泉」








 


耳元で呼んでも返事はない。






人前でこんな姿、普段のお前なら絶対見せないだろうな。
飄々と笑いながら何でもハルヒの言うとおりにして、
たまに俺にだけ伝える言葉の節々に本音を混ぜる。



分からないんだ。




お前が、ただの胡散臭い『機関』とやらの人間で、
全て仕事と割り切ってやっていけるのか、
それとも俺に、手を差し伸べて欲しいのか。
お前を見ているだけじゃ分からない。




だから、触ってみようと思ったのさ。
意識があるときじゃうまくない。
副団長面をしたお前に抵抗されるのがオチだ。
 















あれだけ飲ませても酒の匂いがほとんどしない。
その代わりに、いい匂いがする。
香水とかじゃなくて、
自然な匂い。多分古泉自身の。
耳元へ顔を寄せると無性に舐めてみたくなって、
後ろ髪をかき上げて舌を滑らせた。
 






「ん・・・」





 
いい匂いの割には味がしないな。
当たり前か。
これでチョコレートの味がしようものなら、
古泉が人間かどうかを疑わなくちゃならん。













 
無味でもなぜか飽きることは無く、
気付くと30分ほど耳から首にかけてを舐め続けていた。
古泉は全く起きる気配を見せず、
無防備な寝顔を見せてたまに小さく声を上げるくらいで、
たまらず何度か抱き締めた。
眠っているせいか、体温が高い。
それともいつもこんなに暖かいんだろうか。
 



「古泉・・・」





 

シャツをめくって手を差し入れながら、
もう一度名前を呼んだ。
返事はやはりない。
大丈夫だな、このまま進めても。
 















露になった素肌は、
男の癖に見惚れるくらい綺麗で、
しばらくは触るだけで満足できた。
腰を撫でるとくすぐったそうに体をよじるのが面白い。






眠っていてもくすぐったいのは分かるのか。




なら、

他の感覚も分かるんだろうか。
 

















眠っている相手にするような行為じゃないと、
いくら理性では分かっていても、
こんな時でなければ出来ないのだから、
シャツを取っ払って、
俺も上を脱いで肌を合わせ、
強く抱き締めて、



小さく開いた唇に、

口付ける。

















 
 
 
 
・・・・・・ こいつはまずい。
 
 






想像以上の柔らかさだ。






 
 
 
これだけで貴重な時間を終わらせたくないのに、
これだけで満足してしまいそうなほど、
 
 
 












・・・嬉しい。











 
 
 
分からなかったんだ。



お前をどうしてこんなに気になるのか。
お前の本心を知りたいのか。
けど、お前にキスをしたら、すぐに分かった。
お前を好きだからか。
好きだから、古泉のことばかり、考えてたのか。
 
 













 
 
「古泉」
「ふ・・・」
 
 
 
 





目を覚まして欲しくないようで、
覚まして欲しい気持ちもある。
古泉の反応を知りたい。





好きだと言ったら、どう思うだろう。
表面上だけは笑って礼の一つも言うかもしれない。
それともすぐに嫌悪感を露にするか、どっちだろうな。
まさか寝ている最中に手を出されているなんて思いもしないだろ。
何度目のキスか知らんが、俺にとっては貴重なセカンドだ。
1度目とは色々な意味で重みが違う。
 













 
「古泉」
「ん、ん・・・」
「古泉」
 
 
 
 





顎を持って口を開かせ、中に舌を侵入させる。
柔らかい古泉の舌に触れると、
刺激が強すぎて触れるだけで駄目で、
絡ませるキスなんてとても無理だ、
唇を舐めるくらいが関の山だ。





 

飽きることなく続けていたが、
はたと時計に目をやると計画していたよりも時間が早く過ぎていて、
もう一度だけ口付けてから体を離し、
腰元へ両手を持っていく。










あれだけしても古泉は目を覚まさず、
もしかすると眠ったふりをしているのかもしれない、
と思ったのだが、
決心して全部脱がせても反応がないところを見ると、
深い眠りについているだけらしい。




もし、古泉が、
万が一にでも、
俺と同じ感情を抱いていたとしても、
キスくらいはまだしも、
いきなり裸にされるのは怒るよな。













実際には古泉が俺を好きになるのはありえない。
本音が見え隠れしようとも、
何かあるたびに俺に意味ありげな表情を見せてくるのも、
そうすれば俺が望まれるとおりの行動すると分かっているから、
に他ならない。














本当は気付いているんだ。
お前が誰を見ているのか、
何を考えているのか。












けど、それを認めたくない。








 

だから俺だけが知ってるお前がいても、いいだろ。
 
 
 



















「ん、ん、んう・・・」
 








古泉の体だと思えば何の抵抗もない。
足の先から付け根まで撫でて、舐めて、
ついにはそこにまで口付けると、
さすがに古泉の体が跳ねた。



最中に起きたらどうなるんだか。
どうにでもなれと半ば自棄になっているものの、
実際に軽蔑されたらショックを受けるんだろうな。
勝手なもんだ。









 

寝ている体は、鈍いものの反応を示していて、
古泉は変な夢でも見ているのかもしれない、
体をよじろうとしながら、たまに声を漏らす。
俺が体を抑えているから逃げられないせいで、
表情が歪むのがたまらなく、
自分も服を脱いで古泉の唇に吸い付きながら、
古泉の腹を白い液体で、
汚した。
 







ああ、我ながら、なんて変態的な行為だ。
ハルヒの頭がおかしいと言えないな、これじゃあ。
 

















一度出せば熱が冷めて、
古泉で抜いたことを後悔した、


ような日々はとっくに過ぎた。




翌日古泉に会って罪悪感を持っていたのも、
話しづらくなったのも過去の出来事で、
今はこうして眠っている古泉に最低の行為をしても、
罪悪感がないわけではないが、
ますます古泉に対する欲望が高まるばかりで、
このままじゃまずいと思い、
古泉の肩を揺さぶった。
 










「古泉、起きろ、古泉」
「んん・・・」
「古泉」
「ん・・・・・・?」
「目開けろ」
「ここ、は・・・? あなたは・・・」








 

強く揺すって耳元で声をかけると、
やがて古泉が目を開ける。
瞼は重そうで、ここがどこで、自分がどんな状態にあるのかは全く分かっちゃいない。
俺が体を動かしていないとすぐにでも眠りの底に落ちていきそうだ。





これが現実か夢か分からない、
古泉、お前はそれでいい。








 
 
「聞いてくれ、古泉」
「はい・・・・・・?」
「お前とセックスしたい」
「・・・?」
「わかるか」
「・・・?」














名を呼ぶよりも小声になったのが悪かったのか、
古泉は目を閉じたり首を振ってうっすら開けてを繰り返し、
意識を保とうとしているものの俺の言葉を理解出来ないらしい。





・・・もとより、許可を取る気もないが、



相手が俺だと、頭の片隅にでも知って欲しかった、




多分そんなエゴでお前を起こしたんだ。





すまん。
 













 
「ん・・・、・・・あっ?」
「痛いだろうが、我慢してくれ」
「何、ですか・・・?」
「さっき言っただろ。・・・悪いな」
「んぐっ・・・」
 








用意していたタオルで声を、視界を、塞いだ。





これからやることは、
寝ていられるほど優しいものじゃない。


多分古泉が苦しんで、痛い思いをして、
下手をすると泣かせる可能性もある。




そんな古泉は見ていられない。
・・・俺がやるのに、矛盾してるな。
 
 

























「んー、んうーっ・・・!!」
 





途中からは腕も縛らざるをえなくなった。
酒が入っていて起き抜けなら、
さして抵抗も出来ないだろうと思っていたが、
予想以上に、
やられるのは痛いらしい。



それもそうだ。
何の準備もない。
古泉の腹に出した液体だけ使ってやったって全く足りない。
俺も痛い思いをしているが、
痛くても、気持ちいいとは直結しなくても、
古泉を独り占めにしている、
優越感だけで十分満足できる。
 











早く終わらせようと動かすたび、
古泉は首を振ってタオルの奥で悲鳴をあげ、
腕を振り回そうと体に力を込めた。
そうするとさらに痛みが増す。
少しでも力を抜かせようと足を広げれば、
言葉にならない声で何かを訴えてきた。
 









古泉、
ごめんな。







俺にはこれ以外の答えが出せなかった。
 





















やり終えた後、
古泉の手首を開放しても、動かなかった。
服を着せて、目隠しはそのままに、
腕を掴んで古泉の部屋まで連れて行く。
腕を引かれなければその場から動こうとしない古泉の背に手をやり部屋に押し込み、
ドアを閉めようとすると、



緩んだタオルの端から、
 
 








俺の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
 
 
 
 





















 
 
 
 

「おはようございます、よく眠れました?」
「おう。昨夜は悪かったな」
「えっ?」
「部屋まで送ってもらって。あの後お前はまっすぐ歩いて戻れたのか?
 ずいぶん酔っ払ってただろ」
「え、ええ」
「朝飯は鶴の卵のオムレツだってよ」
「鶴ですか。はは、さすがですね」
 









翌朝、俺は最悪の気分で目を覚ましたのだが、
古泉よりは早く鶴屋家別荘のリビングへ向かった。
数分の後にやってきた古泉との会話に、
不自然なところなどない。




たとえ聞かれてもあれが俺の仕業だとは答えないし、
そもそも、古泉も聞かないだろう。
聞けないくらい酷いやり方だった。





忘れてくれ、
あれは夢だった、
悪夢だった。
お前に酷いことをする奴なんていない。
 
 
 




















 
朝食の間、古泉は笑っていた。
夜の出来事を、
俺すら夢だったのかと疑うほど、
穏やかで普段と変わらない笑顔だった。
 






しかし、
手首を見られまいと袖を気にしている様子に気付き、
その場から逃げ出したくなる。








 

本当によかったのか?
これでよかったのか?



したはずの決心が揺らぐ。
昨夜聞こえたような気がした俺を呼ぶ声、
あれが気のせいじゃなければ、
古泉はどこかで俺を疑いながら、これから接することになる。
 
 
 










 
・・・どうせ同じか。
何をしなくても信頼されちゃいなかった。
だからこれを選んだんじゃないか。


古泉につけた傷が目に見えたからってなんだ。
傷つけるのを承知でやったくせに。







 
 
 







他の誰かに見られるなよ、触らせるなよ。
俺だけが知ってるお前の傷を。



もし他の誰かにされるようなことがあれば、
次は何をするか自分でも分からないからな。





thank you !

季節はご想像の通りに・・多分皆で鶴屋さんの別荘へ・・
こういうのはヤンデレなのかな??



inserted by FC2 system