「はーい、古泉くんの分のプリン!」 「ありがとうございます、おいしそうですね」 「うんっ。 ・・・あれ?」 「どうしました?」 彼の家に遊びに行き、 彼がジュースを買いに出かけている間、 妹さんと一緒に待っていたのですが。 プリンを渡しに近寄ってくると、 足を止めました。 「古泉くん、キョンくんとおんなじにおいがする」 「えっ!」 「なんでかなあ・・おんなじシャンプー使ってるのかなあ」 「そ、そうかもしれませんね」 ビニール袋を片手に戻ってきた彼は、 僕の隣に座ると、 不思議そうに顔を覗き込んできます。 「どうした? 顔、赤いぞ」 「最近、一緒にいすぎなんでしょうか」 「は?」 「言われてみれば、毎日僕の家に・・・お風呂も、ベッドも一緒で、 あなたと同じようになってしまうのも、分からなくもないですが」 「何を一人でぶつぶつ言ってんだ」 「それ、僕のプリンです」 「食ってないから俺が食う」 使いかけのスプーンを使って、 食べかけのプリンを食べられる。 ほら、 またそうするから、 僕とあなたの、 同じところが増えてしまう。 うれしい、です、 とても。
「い、妹さん、が」 「もう出かけた」 「ご両親、は」 「夜まで帰ってこない」 「んっ・・・」 プリンを食べ終えた彼は、 空いた容器をゴミ箱に放り投げると同時に、 僕へと体重をかけてきました。 彼の、ベッド。 僕は一人暮らしだから、 僕の家に来ることが圧倒的に多い。 彼の家に、こうして遊びに来ても、 ベッドに乗せられて、 迫られることは、 あまりないから、 これだけ毎日していても、 どきどきします。 「んっ、うっ・・・」 「古泉。昨日もやったのに、ずいぶん反応がいいな」 「なっ・・・、や、やめてください」 「やられたいくせに」 彼は、意地悪です。 普段は、こんな風に言わない。 僕の気持ちを気付かれて以来、 二人きりでいる時間になると、 ・・・惚れた弱みだから、 文句は言えませんけど・・・ 少し乱暴な言葉と、 押しつけられる足。 気持ち良くなってしまう僕が悪いのは分かってます。 でも、もう少し、優しくしてくれても、いいのに。 「あ、あっ」 「えろい声だな」 「っ・・・!」 「顔も」 「み、見ないでください」 「明るいんだから、見えるだろ。目つぶりながらやれってのか」 「うう・・・。はっ・・・あ、う」 あなたに触られると出る声も、 たまらず歪んでしまう表情も、 聞かれるのが見られるのが、 嫌じゃない。 あなたになら。 でも、でも・・・ あなたがどう思っているのか、 想像すると胸が痛くなる。 あなたは僕に付き合ってくれているだけ。 こういうことをすると、 あなたも少しだけ気持ちがいいから、 してくれるだけ。 分かってます。 それだけで満足しなくちゃいけないのは。 これ以上求めるなんて、贅沢すぎる。 「脱がすぞ」 「は、い」 「上は自分で脱げ」 「え、全部、ですか」 「暖房ついてんだから、寒くないだろ」 「は、はい・・・」 男の僕の裸、見たって、楽しくないのに。 汚してもいいように、かな。 分かってます。 分かってるけど、 「んうっ・・・あ、あう」 肩とか、腕とか、腰とか、 舐められると、 僕の体が見たいのかもしれない、 触れたいのかもしれない、 この体でも、 気に入ってくれるのかもしれない、 なんて、 自分勝手な期待を、してしまう。 「う、ううーっ・・・!!」 「こら。まだ触ってもいないぞ」 「く、びっ、よわい、んです」 「知ってる」 あなたが寝ているベッドの上で、 家族がいない間に、 服を全部脱がされて、 あなたに、触られて、舐められて、 耳元で、声が聞こえる。 それだけでじゅうぶん気持ちいいんです。 早く、してくださいっ・・・ 抱き締めた体から、彼のにおいがする。 僕の体の、 中に入って、 出て、 また、入って、 顎を伝った汗が、落ちてくる。 暖房、効きすぎました? あなたはいつも、脱がないから。 でも、動くのは、あなただから、 熱くなりますよね。 「お前、ん中、あついな」 「んっ、ん、んううっ・・・!」 それとも、僕のせい? 「痛く、ないか」 「きもち、いいです」 「そうか」 「あなた、は・・・?」 「聞くなって」 「すみません・・・、ん、ん」 するたびに、聞いてくれる。 このときだけは、 あなたの優しさを感じます。 だって、あなたは触っていれば、 入ってしまえば、 僕が、痛いか気持ちいいかは、すぐに分かるでしょう。 それなのに聞いてくれるから、 僕はいつも正直に答えるんだけど、 彼は口の端を緩ませるだけで、 自分がどうなのかは教えてくれない。 でも、答えた後に、 動きが速くなって、 彼の表情に余裕がなくなる。 僕も気持ち良さで頭が真っ白になりそうになるけど、 頑張って目を開けて、 僕を気持ち良くしてくれている、彼を見ながら、 きっと気持ちがいいんだと解釈して、 彼にしがみついて、 腰を出来る限り彼の動きに合わせて、動かした。 「う、ああっ、も、だめっ・・・!」 「古泉っ」 「あっ! や、やだっ」 「もう少し我慢しろ」 「ううっ、は、はいっ・・・」 いきそうに、なったのに、 彼にぎゅううと押さえつけられて、 強制的に我慢をさせられる。 彼はまだだから。 彼が、出したくなるまで、 我慢しないと。 「す、ごく、きもちいい、です・・・っ」 「みたいだな」 「いき、たい、です」 「ああ」 「んう・・・! あ、ああっ」 でも、彼とするのは、 とっても、 気持ちがいいから。 長くは我慢できません。 お腹に力を入れても、 数分間が限度です。 我慢している間も、あなたは気持ちいいことばかり、 してくれるし・・・ 額に彼の汗が落ちて、 彼の声が、僕を呼ぶ。 動きがさらに早くなって、 すごく、すごく、気持ちがよくて、 手を離してくれたらすぐに出せるのに、 もっともっと気持ちがよくなるのに、 彼は強く握るばかりで、 「一樹っ・・・!!」 「あっ・・・!」 「く、う・・・・」 僕の中に、 あたたかいものを出してからも、 余韻に浸りながら、 離してくれなくて、 「あー・・・くそっ・・・」 何か悔しげに呟いた後、 泣きそうなまま、 早く出したくて、 何も言えずに唇を開いたり閉じたりするしかない僕を見て、 はっと気付いたように手を離してもらって、 僕はやっと、解放されるんです。 いつも、先に気持ち良くなるのは僕で、 気持ちいいまま焦らされるのも僕。 先にいくのは彼で、 僕は彼の後。 「う、うあ、ああっ・・・!」 「出したか」 「は・・・い、気持ち、よかった、です」 「だろうな」 でも、いいんです。 このやり方で。 気持ちいいから、 あなたと一緒になれて、嬉しいから。 出した後は、二人でベッドにくっついて横になり、 暑いだのうざいだのと言われるものの、 彼は僕を追いやったりはしません。 あなたのベッドは僕の家のものより、大きいですね。 でも、いつもより近くにいかせてください。 「顔が近いっ」 「すみません。あの、ひとつお聞きしたいことが」 「なんだ」 「先ほど、僕を名前で呼んでくれましたよね」 「ん?」 「嬉しくて、どきどきしてしまいました」 こんな言い方だと、 否定されるかな、と思いましたが、 彼は僕を突然強く抱き締めてきました。 な、な、何が起きたんですか。 「名前くらいいつでも呼んでやるよ」 「え、え!」 「お前、思ってたより単純だな」 「それは、どういう」 「悪くないって意味だ。お前を見てると、取り繕うのがアホらしくなってくる」 言い終えるなり、 何度も何度も、 顔や体のあちこちにキスをされて、 僕の頭の中は、 かなりの、混乱状態です。 終わって、少し休んだら、 すぐに服を着ていつものあなたに戻るのに、 僕に夕飯を作れとか、茶をいれろとかいうのに、 こ、こんな、 優しくしてくれたこと、ないのに。 「そんなに俺が好きか」 「!!!!!!」 「目、丸いぞ」 「だ、だって・・・、一度も、聞かれたこと、ありませんし」 「聞かなくても分かってたからな」 「ではどうして今さら、」 「いいから言えよ」 「・・・好き、です」 「ほう」 「大好きです」 乱暴な聞き方じゃなく、 耳元に優しく、 昔、 誰かが絵本を読んでくれたみたいに、優しく聞いてくるから、 今さらの告白を、しました。 彼は声をかみ殺すようにして笑って、 また恥ずかしい思いをさせられたことに泣きそうになったら、 「泣くな泣くな。俺も好きだ」 え? え? ・・・・え? 「こら。何か言え」 「あ・・・あ・・・う、え」 「嬉しいか」 「は、はい、はい、はい」 「はいは一回でいい」 「はい」 「一樹」 「いっ・・・! ま、ってください、だめ、だめです」 「何が?」 「心の準備、出来てません」 一度も、考えませんでした。 あなたが僕を、好き、なんて、そんな。 ただ少しでも気持ちがいいと思ってくれれば、 それだけで、十分だったのに・・・ 好きって言ってもらえるだけじゃなく、 言葉だけじゃなく、 あなたの声や、 僕を撫でてくれる指が、 本当に想ってくれているように感じて、 僕と同じような気持ちだって伝わってきて、 どうしよう、 僕はまだそれを全部受け止められるだけの心の準備が、 出来ていないんです。 あなたが少し優しくしてくれるだけでも、 僕が出すときの顔を見てくれるだけでも、 あなたのにおいと同じになるだけでも、 幸せ、だったんですよ。 これ以上幸せに、なってもいいんでしょうか。 幸せすぎて、死んでしまうんじゃないでしょうか。 「ぼ、僕・・・」 「どうした?」 「あなたと生きていく自信がありません・・・」 「そうかい」 「あっ! 今のは、そういう意味ではなく、ですね」 「何でもいいさ。俺は自信あるからな」 ああ、やっぱり、幸せすぎて、死んでしまいます。 だって顔がこんなに熱くって、 心臓が、ありえないくらいどきどきして、 ああ、もう、駄目です。 ・・・大好きです、大好きです、 これ以上どきどきしたらおかしくなってしまうから、 そんな優しい顔で、見つめないでください・・・。
これが正真正銘のやおいですね!!!