HB







あなたの願いを一つ叶えてあげる、と彼女は言った。
 
 









 
夢の中の出来事で、
僕が毎日見ている彼女よりも、
少し大人びた雰囲気だった。
夢だから、かもしれない。
僕の頭はふわふわとしていて、
願い事、
眼が覚めているときなら絶対に口にしない、
けれどずっと心の中にあったことを、
彼女に伝えた。
 
 












 
いちどだけでかまわないから、
彼に触れられたいです。
 
 
 
 
 



正夢




 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
目覚まし時計が鳴った音に気付かなかった。
はっと目を覚ました時には既に登校時刻を過ぎていて、
携帯電話には森さんから複数の着信がある。
慌ててかけ直すと、
学校には体調不良で休むと連絡を入れてくれたという。
 



「珍しいわね、古泉にしては。でもたまにはいいわ。今日は一日、ゆっくり休みなさい」




 
怒られないと、逆に申し訳ない気持ちになります。
いくら最近は閉鎖空間へ行く頻度が減っていたとはいえ、
携帯電話の着信にすら気付かないなんて。
気が緩んでいるんでしょうか。
・・・何か、おかしな夢を見たような気もするけど、よく思い出せない。
なんだったんだろう?
 
 
 
 










突然休みになっても、特にすることもありません。
驚いて目が覚めてしまったし、どうしましょう。
テストまではだいぶ日があるけど、
昨日の授業の復習くらいしか、することは・・・
 
 
 
 
 
 
「わっ!」
 
 
 
携帯電話が手の中で震える。
いつも、びっくりしないのに、
やはり今日の僕は気が抜けています。
出勤、でしょうか?
開いてメールを確認すると、
送信先は機関ではなかった。
見慣れない名前が書かれている。
メールをもらったこと、数えるくらいしか、ない。
 
 
恐る恐る開封ボタンを押す。
1秒に満たない時間の後、
短い文字列が表示された。
 
 
 
『食えないものはあるか』
 
 
 






・・・なんでしょう、これ。



SOS団で鍋を囲む計画、ありましたっけ。
それとも・・・?
少なくとも授業中に送ってくる内容ではありません。
彼女が命じたならまだしも。
・・・彼女の考えは未だに読めないところがあるから、
何か思いついたのかもしれませんね。
特にありません、と返しておきましょう。
 
 
 
 













 
 
 
 
彼のメールを何度も読み返しながらベッドの上をごろごろしているうちに、
眠くなかったつもりだったのに、寝てしまっていました。
次に目が覚めたのは、ドアを叩く音のせい。
新聞ならいりません・・・
 
 










「古泉ー、いないのか」
 
 





 
 
 
新聞なら・・・


 
 
え?
 
 
 
今の声は・・・
 
 
 
 
ま、まさか。
 
 
 
 
ベッドから飛び起きて走って玄関へ向かう。
チェーンを外して鍵を開け、ドアを思い切り開けると、
階段を下りようとして振り向いた彼と目が合った。
 
 
 
「おう、いたか」
「す、すみません、気付かなくて、えと、あの、」
「寝てたんだろ? 悪かったな」
「い、いえ・・・」
「ちょっと上がらせてもらうぜ」
「はい・・・」
 
 
 
 
つけたままだった腕時計は昼前を差している。
授業は、涼宮さんは、どうしてここに、
聞きたいのに、声にならない。
 
 
 
 
彼は遠慮なく部屋に入り、持っていたビニール袋を床に置く。
中からはみかんが1個、2個、3個、4個、出てきます。
これはいったい、どんな状況なんでしょう。
 
 
 
 
「風邪にはビタミンCだろ」
「ええ・・・」
「で、調子はどうだ」
 
 
 
僕が体調不良だと知って、お見舞いに来てくださったんですか?
わざわざみかんを持って。
きっと、小耳に挟んだ彼女からの命令なんでしょうが、
あなたが断らずに来てくれたのが嬉しいです。
いまさら仮病だなんて言えませんが、
今の状態なら、風邪だと騙せるかもしれない。
 



そのくらい、顔が熱いんです。








 
 
「顔赤いな。熱か」
「そうだとおもいます」
「ハルヒに言われて来たんだが正解だったかもしれんな。
俺が起こしておいてなんだが、とりあえず寝ろ」
「もうじゅうぶん寝たので眠くないんです。少し動いていた方が、楽で」
「そういうもんか? じゃ、みかん食うか」
「はい・・・」
 
 
 
 
いつもの数倍は優しい。
僕には、皮肉めいたことしか言ってくれないから。
最初は嫌われているんだと思いました。
何がいけないんだろうと悩んだ夜も数知れず、
あなたが男子なら誰に対しても同じような口調だと知ったときには、
既にあなたのことばかり考えている頭になってしまっていた。
もうあなたの言い方には慣れていたから、
急に優しくされると、
熱なんて出てないのに、
頭が、ふわふわします。
 
 
 






差し出されたみかんを手にし、
皮をむこうとすると、
不意に、
額に暖かいものが触れる。
 




 
 
 
僕の手からはみかんが転がり落ちました。







 
 
 
「落とすなよ」
「すみません」
「あんまり熱くはねーけど、ぼーっとしてるな」
 
 
 










あなたが触れるから。
額に。
急に。
びっくりするじゃないですか。
 
 











 
 
今の衝撃で思い出してしまいました。
昨夜見た夢を。
これは、正夢ですか。
僕が彼女に願ったから、
では、
このひとは、本物なんでしょうか?
 





 
いくら涼宮さんに言われたからって、
授業を抜け出して僕に会いに来てくれるとは思えない。
まだ夢の中、なのかな。
 








 
 
 
「どうした?」
 
 
 
みかんを拾った彼の手を、半ば衝動的に掴んでしまった。
彼は少しだけ困ったように眉をしかめ、
それでも、非難めいてはいない、
穏やかな声で聞いてくる。
 
 





あなたが本当に、現実のあなたなら、
僕が熱のせいでおかしくなってしまったんだと、思ってください。
でももし、あなたが夢の中のひとなら、
 
 









 
 
「もっと、触れてください」




 
 
 
僕のねがいごと、聞いてください。
 
 
 
 
 
 
 




























 
 
「ふ・・・・う、あっ」
「大丈夫か?」
「はい・・・はい・・・っ」
「無理すんなよ、させてるのは、俺かもしれんが」
「いいんです・・・続けてください」
「ん」
 
 
 
 
体温が上がった僕の体に触れる彼の手は、少しだけ冷たい。
最初はぎこちなく上半身ばかり触れていたけれど、
今は、下を脱がされて足の内側を撫でられてる。




 
気持ちがよくて声が漏れる。
抱きついている彼の耳元で。
彼は嫌な顔一つせずに触ってくれて、
たまに、小さな子をあやすように頭も撫でてくれる。
僕はまだ夢の中にいたんだ。
これが現実に起こりうるはずがない。
してほしかったことを全部、出来るはずがない。
でもこれは夢だから、
僕の願いは叶ってしまう。
 
 
 
 






「おねがい、が」
「なんだ?」
「キスをさせてください」
「き・・・キス、か」
「だめじゃないですよね」





 
 
こんなに近くにいるのに、いまさら、だめだなんて、言わないでください。
あなたともっと近付きたいです。
あなたのそばにいきたいです。
これが現実じゃなくても。
 
 






 
彼の視線はあちこちに飛んで、
しばし待て、状態でしたが、
やがて僕を見つめると、








前髪を払って、
彼のほうから、してくれました。
 
 









 
 
手は冷たいのに、
唇は、熱いんですね。
 
 
 
 
 
 


























 
 
触れ合うだけだった唇も、
やがて互いに舌を伸ばして、
体温を確認しあったら、
止まらなくなった。




後で思い返すと恥ずかしくてとても口に出来ないような言葉も、
たくさん言ってしまったように思う。
最中の記憶は、あまり残ってない。
受け止めるだけで精一杯だった。
気を抜いたら失神してしまいそうなくらい刺激的で、
幸せだったから。
 
 









 
 
 
崩れるように眠りに落ちて、
目が覚めるとまだ隣で彼が寝ていて、
いつ夢から覚めるんだろう、と、そわそわします。
これがもし現実なら?
起きた途端、彼はどんな顔をするんだろう。
自分がしたことを後悔して絶望しなければいいけど、
そうしたら、なかったことにしますから、
あなたも忘れてください。
どちらにしてもたった一度だけのことでも、
僕にとっては大切な出来事でした。
 
 
 


 

















「あー・・・」








隣で彼の寝顔を見ていたら、
彼が声を上げて、
うっすらと目を開けました。
そして僕を見るなり、
背中に手を伸ばしてきて、
抱き締める。








まだ、





夢の続き、ですか?

















「古泉ー・・・」
「は、はい」
「起きたらいなくなってるかと思った」
「ええ?」
「やっちまった後で悪いんだが、お前、古泉か?」
「なんですか、それ」
「俺の夢の中のお前かと・・・」
「え?」
「何でもない。とにかく!ここまできたんだ、付き合えよ、とことん」








なんのことですか?
あなたは、なにを言っているんです?







あなたは夢の中の人で、
次に僕が目を覚ましたらいなくなってしまうんです。
そうじゃなきゃおかしい。
あなたが僕を、
僕を、
あんなに優しく、
・・・してくれるはずが、ない。













「なあ、古泉」
「はっはい」
「もう一度、キスしてもいいか」
「え!」
「あと、欲を言えばもう一度したい」
「ええ!!」
「具合悪いならやめるが・・・平気そうに見える」








ちょ、ちょっと、待って、ください。



そ、そんな、
背中、撫でながら、

そんな、
顔で、
言わないで・・・。









すこしだけ体は痛かった。
だけど、ちっぽけなことだった。










彼に抱き締められることの奇跡と引き換えなら。














僕が頷くと彼はよし、と呟いて、
体を起こすと閉まっていたカーテンを数センチ、開けました。
外はまだ明るく、窓から日差しが入り込んできます。
 
 
「どうしました?」
「・・・見えないのは勿体無いかと思ってな」
「えっ・・・あ、ちょっと、それは、恥ずかしいので、」
「頼む。このままさせてくれ」
 
 




見えないとか、見るとか、僕を、ですよね?
あなたが見たいものなんて僕はなにひとつ持っていません。
見たって、いいことは、なにも・・・
むしろ、見られたら嫌われてしまいそうです。
気色悪いって言われそうで、怖いです。
 
 
という僕の不安はよそに、
彼は布団をめくると、
僕の体に触れてくる。
少しずつ確かめるように、首から下へ移動させて、
じっと見つめながら、口付けることも、ある。
一度した後とはいえ意識がはっきりしている今は、
とにかく恥ずかしくて、
行為に集中できません。
そんな、ところまで、見ないでください。
言いたいけれど、唇が震えて言葉に出来ない。
下手に口にしたら泣いてしまいそうで、
もしそうなったら、
男のくせに泣くなって、怒られる。
 
 
 




「古泉・・・」
「・・・・・・」
「触られるの、気持ちよくないか」
「・・・・・・」
「古泉?」
 



 
 
 
下半身を見られて、僕が、・・・して、ないから、
不安そうな声で、名前を呼ばれる。
 





首を横に振ることすらできない。
あなたに触られるのが嬉しいのに、
キスをされるのも幸せなのに、
恥ずかしくて死んでしまいそうなんです。
僕の体は綺麗じゃないから、
女性のようなものがあるわけじゃないから、
あなたが改めて見たら、幻滅してしまう。
さっきのは間違いだった、
どうしてこんな男に手を出したんだ、
そんなふうに思われたら、
僕は・・・
 
 
 
 
 
「どうした?」
 
 
 
 



そうされてもいいと、ついさっき、考えてた。
一度だけあなたに触れられたら、
それで満足できると、
これからも、あなたのために、彼女のために力を尽くせると確信していたのに、
いざ現実と向き合うと、
怖くて、怖くて、全身が震える。


















 
 
本当はあなたに嫌われたくない。
あなたの特別になりたい。
一度だけじゃなく、
これからずっと、ずっと、両手で数え切れないくらいの時間を、共有したい。
 













どうしてこんなときに気付くんだろう。
僕がずっと彼に感じていたのは、


















恋だった。
 





















 
 
 
 
「す・・・すみ、ません」
「具合悪くなっちまったか」
「・・・・・・」
「すまん、気付かなかった」
「ち、がいます・・・」
「古泉?」
 
 
 





 
諦めなきゃいけない、
彼が嫌だと思ったら、
すぐに身を引かなきゃいけない、
それが僕の立場で、
定められた道なのに、
心が言うことを聞きません。
 





 
 
 
「あなたが、すきです」







 
 
 
 
最初に抱き締められたよりも、
高い体温の体に抱きついて、
顔を見られたくないから、
耳元まで口を近づけて、
何度も、
繰り返し、
気持ちを伝えました。
 
 







言わないまま終わってしまうよりも、
言ってからのほうがいい。
後悔したくない。
こんなチャンスは二度とやってこない。
機関の意思に反しても、
彼女の意思に反しても、
あなたにこれだけは伝えたい。
 
 













 
「すきです・・・」
「古泉・・・お前・・・」
「女性じゃなくて、すみません」
「なんだそりゃ」
「こんな体で、すみません」
「おいおい・・・。何言ってんだ」
 








 
あなたの体温、心地いいです。
ずっとここにいたい。
一度きり、で、終わらせられない。
知ってしまったらまた欲しくなる。
最初からいくらでも予測できたはずなのに。
やめておけばよかった。
あんな願い事をしてはいけなかった。

 

















やがて彼は体を引き離すと、
僕の頬に両手を当てて、
視界がぼやける僕を、
まっすぐに見つめてくる。
 
 














 
「恥ずかしいから一度しか言わんが、俺は、お前の・・・その、体は、好きだ」
「え・・・!」
「待て、あのな、体だけじゃないぞ。今の言い方はよくなかった」
「・・・」
「だからつまり、俺も、お前が好きだ。謝るなよ。悪いことしてないだろ」
 
 












 
え、え、え、え、え?
 









 
あなたが僕を?
どうして?
だって僕、男だし、
あなたが好きになるような要素はどこにも、ありません。
 





責任なんて、感じないでください。
一度しただけで無理やり好きだといわなくてもいいんです。
 








 
 
「バカ。順番が違うだろ。好きでもない男とやれるかよ」
「で、ですが・・・こんな、ことは」
「なんだよ。俺だってお前が俺を好きだとは思っちゃいなかったぜ」
「これは、夢ですか。夢なんですね」
「おい、寝ぼけてんのか? 夢だったら許さんぞ」
「夢に決まってます」
「古泉!」
 
 
 
 







聞きたくない、聞けません、あなたの、そんな、
ありえない言葉を、素直に受け止められるほど、
僕は、盲目にはなれないんです。
あるはずがない。
僕の片思いで始まって、それで終わる恋なんです。
あなたの気持ちは僕には向かない。
だって、僕は、僕は・・・
 
 






 
「わざわざ面倒くさいことを考えるな!」
「う・・・」
「俺はお前が好きで、お前も同じなんだろ? その何に混乱してるんだ。わかりやすいだろうが」
「あな、たが、好きになる、はずが」
「何回も言わないって言っただろ・・・俺はお前が、好きだ、好きだ好きだ。これで分かったか」
 
 














 
やめてください、
赤い顔で、何回も、言わないでください・・・
 
 








信じたくなるから、

やめてください。
 
 





















 
「お前はそんなに俺を信じたくないのか」
「そうじゃ、なくて」
「俺はちっとも疑ってないぞ。お前の気持ちは十分伝わってきた。
 ・・・ってことは、やっぱり、俺の気持ちが伝わってないのか・・・」
「こ、これ以上は、」
「なあ、好きだ、古泉。分かってくれ、ずっと、好きだったんだ」
「だめです、だめ、頭が、おかしくなります」
「いつもお前に触りたいと思ってた。前髪とか、額とか、指に」
「だめです・・・っ」
「制服の下にも、・・・なあ、こっち見ろ」
「むりです、です」
「ですですって・・・あー、くそ、辛抱ならん」
「わっ・・!! な、何、なにをするんですかっ・・・!」
 
 







 
そんな、そんなところは舐めちゃいけません、
汚いから、だめです、だめです、だめ・・・!



どうしてそんなに必死に、
僕が止めようとしてるのに、
吸いつくようにして離れないんですか、
同じ男なのに、
舐めても、平気なんですかっ・・・







僕だって、あなたのなら、平気です。
あなたには気持ち良くなって欲しいです。
あなたが、好きだから。












・・・・・・これと、
同じ気持ちでいてくれているんですか?





















「気持ちよくなってきた、みたいだな」
「ん、ん、ううっ」
「その声、いい」
「ふ・・・」
「お前の声も、その顔も、体も、全部いい」













僕も、同じです。
あなたにされるすべてがきもちいい。








ぜんぶ、
同じなら・・・








このまま、
あなたの腕の中に、
いさせてください。













































「・・・寝た?」
「起きてます」
「俺も」
「どうしますか、これ、から」





明るかった外は、すっかり日が落ちて暗くなり、
でも僕たちは変わらずに、ベッドの中です。
あなたはもう帰らないと、
明日は僕も、学校へ行かなくちゃ。








「どうするって、そりゃ、付き合うんだろ」
「えっ?」
「反論は許さん。分かったな」
「は、はあ」
「手始めに明日の朝は改札の前で待ってる」
「一緒に、行くんですか」
「男二人で歩いてて不審がる奴はいないだろ?俺たちがSOS団員だってことは、
 残念ながらたいていの奴には知られてるし」






僕が聞いたのは今日はもう帰りますか、という話だったのですが、
違う解釈をされ、でも、それは、とても幸せな、答えです。




明日の朝・・・



改札、ですね。









「そろそろ帰らんとなー・・・」
「よろしければまた、来てください」
「よろしければじゃない。入り浸る」
「そ、そうですか」






合鍵、作っておきます・・・。


僕の熱で、溶けちゃいそうですけど・・・。







































彼が帰った後もしばらくはベッドに体温が残っていて、
そこに顔を埋めては、
彼の指の動きを、僕を見つめてくる目を、かけてくれる声を、思い出した。
それ以上はとても考えられない。
経験したとはいえ、思い返すのは、駄目です。
こんなことが本当に起きているんでしょうか?
夢にしては、
痛みも、苦しみも、喜びも、感じすぎてしまった。

































日が昇る前に目が覚めて、
痛む腰を押さえながら学校へ行く準備を、
・・・僕の記憶にも身体にも確かに昨日の出来事は残っていて、
準備が終わっても、駅へ向かう足取りが重い。






もし彼がいなかったら?
あれはやはり僕の夢で、





ああ、こんなふうに後ろ向きにばかり、考えてはだめです。
信じないと。













だけど僕は怖くて、
何分に待っていればいいのか、
メールで聞けもしない。
彼と何時何分に、と約束したのではないから、
何本目の電車で行けばいいのか分からない。
僕がいつも乗る電車を彼が知っているはずはない。
転校以来一度も朝に駅では会っていないし、
そんな話にもなったことがないし、





だから、
彼と会えるかどうかなんて、
待っていてくれても、
時間が違えば分からないし、
僕だって、
待っていていいのか、分からないし、
彼が待っていると言っていたのだから、
僕、は、
彼が来るのを待てる権利がなくて、

だから、
いなければ、
僕は、
ひとりで、

























「よう」














「おはよう、ございます」
















「お前は鳩か。で、俺は豆鉄砲撃ちか」
「はい」
「はいじゃないだろ。行くぞ」
「・・・はいっ」
























ひとりで上る坂道よりも、
ふたりで上る坂道は、
とても短くて、




長く長く抱えていた悩みも、
全部一緒に吹き飛んでしまいました。



















「お前はいちいちいちいち、難しく考えすぎなんだよ」
「性分なんです」
「言っとくがそういうのはぶち壊していくぞ」
「お手柔らかにお願いしたいですね」

































あなたを信じます、
信じて、ついていきます。











この現実を、
僕は精いっぱいの力で守ります。









こんなに幸せなことは他にはないから。













thank you !


古泉の登校時間をも把握しているキョンは古泉以上に古泉が大好きだということです(・∀・)



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