授業を終えて、 今日は平和に過ぎるといいなというささやかな希望を抱きながらSОS団…… もとい文芸部室に向かっている時だった。 誰もいないはずの廊下で突然、 後ろから鈍器のようなもので殴られ、 俺はあっけなく気を失った。 「ん……?」 目を覚ました時、すぐにここが異空間だと言うことが分かった。 なぜなら北高にいたはずが、 ピクニックでも楽しめそうな春の陽気うららかな草原にいたからである。 向こうには花畑まで見えるが……まさか天国じゃないだろうな。 まだ死ねないぞ、俺は。 立ちあがろうとしたが、それも無理だった。 足にも腕にも何かが巻きついている。 緑色の、ツタのようなもの。 すぐに切れそうに見えて引っ張ってみてもうんともすんとも言わない。 これは何だ? 「うう……」 「はっ!」 そこでようやく俺は、隣に別の人間がいることに気がついた。 見慣れた栗色の髪の毛、長い睫毛。 潤った唇に綺麗な白い肌。 「古泉!」 「う……、あ、あれ……ここはどこですか……?」 捕えられている様子が絵になる奴だ、 などと感心している場合ではない。 古泉も一緒だったのか。 「キョン?」 が、そこにいたのは、俺たち二人だけではなかった。 俺たちだけならこの空間が何なのか、議論を交わすことが出来た。だが。 「谷口、国木田」 「か、会長まで」 話を聞かれるわけにはいかない一般人(ただし、今のところ)が、三人も紛れ込んでいたのだ。 いったい何だというのだ、この不測の事態は。 誰の仕業だ?
「古泉、これはいったいどういうことだ!」 「すみません会長。僕も囚われの身でして、何とも」 「キョンー! 帰ろうと思ったら誰かに襲われたんだよ! くそ、女子も一緒ならまだしも、男だけかよーっ!」 「僕を殴るなんていい根性してるよね。どこの誰かな?」 「とりあえず落ち着け、主に谷口」 古泉とはアイコンタクトで会話しながら想像を張り巡らせる。 やたらメルヘンチックなこの場所。 メルヘン、といえば朝比奈さんにぴったりのお言葉であるが、 彼女がこんなことをする理由はどこにもない。 空間隔離、そんな真似が出来るのはヒューマノイドインターフェースの連中くらいだ。 長門? いや。長門が俺に相談もなしに大胆な行動に出るものか。 じゃあ……朝倉涼子? まさか。もうあいつはこの世界にはいないはずだ。 と、なると。 「皆さん、お目覚めみたいですね」 ちょうど頭の中に予想していた人物の声が聞こえてきた。 声だけ聞けば、管楽器のような美しい音である。 もちろん見た目も、斜め前方にいる谷口が無条件で涎を垂らす程でもある。 「きっ……喜緑くん」 最初に名前を呼んだのは、会長だった。 それもそうだ。 彼女は生徒会で書記をやっている。 最も近い立場にいるのはあの男だろう。 古泉をちらりと見やると、 「わけがわかりません」と言いたげに眉を下げて失笑していた。 なるほど、お前にも分からないとなると、彼女の出方を見るしかない、な。 「手荒な真似をしてごめんなさい。でも、これが手っ取り早いかな、って思ったんです」 「あのー、お名前は」 「喜緑江美里です。よろしくね」 「ハイッ! 俺は谷口っていいます! よろしくお願いします!」 谷口。 お前は少し、黙ってろ。 「喜緑さん、だよね。僕たちに何をするつもりなのかな?」 「私ね、暇だったんです。だから皆さんに遊んでもらおうと思って。……この子たちと」 一瞬の間でよぎったいやな予感は見事に的中した。 巻きついていたそのツタがぬめりけを帯びて、衣類の中まで入り込んできたのだ。 「あっ、やだっ」 そして真っ先に声を上げたのは古泉である。 古泉、頼むから我慢してくれ。 お前の体が敏感なのは誰よりも俺が一番よく分かっている。 お前の感度を上げてしまった責任が俺にあることも。 だが、これだけで声を出すな。 俺限定だろ、それは。 他の奴がいるんだから、頑張れ! 「す、すみません」 俺の言わんとしていることが分かったのだろう、謝ってから、唇を噛んでいる。 「喜緑さん! これはどういうことですか!」 古泉を守るのは俺の役目なので、 とはいっても勝ち目はどこにもなさそうだが、抗議をしておく。 「うふふ。前にちょっと試したらね、この子達にとって何よりも人間の男性の体液が一番おいしいんですって。 だから今日は皆さんからいただいちゃおうって、思いました」 天使のように純真な笑顔で言われてしまうと、 そうですか、と納得しかけてしまうが、 今まで不思議な出来事には何度も直面している俺である。 この程度のことで感覚が麻痺したりはしない。 「そ、そうなんすか」 谷口、納得するんじゃない! 喜緑さんに直接触られてるならお前も本望だろうが、こいつは全くの別物だぞ。 「喜緑くん、このような馬鹿なことはやめたまえ。冗談にしてはたちが悪すぎる、っく」 会長、格好よく諌めるのはいいんですけど、最後でちょっと感じてる面を見せるのは勘弁してください。 俺、古泉以外の男が喘いでるのとか見たくないし、聞きたくもないです。 「へえ、なんだか面白そうだなあ。言っておくけど僕は手ごわいよー」 「あら。楽しみだわ」 国木田。お前は何を言っとるんだ。 真っ向勝負かよ。地味に自慢のように聞こえるのは俺のひそかなコンプレックスのせいか? ぬるぬるとしたそれが、上半身だけでなくついに下半身にまで伸びてきた。 ベルトを外されて、脱がされはしないが緩くなった腰のあたりから滑りこんでくる。 まずいな。 上半身は全く性感帯を持ち合わせていないが下半身となると話は別だ。 「ひゃっ、あ、ああっ」 「こ、古泉!」 三人のそれぞれの馬鹿な発言に気を取られていたせいで、古泉を見ていなかった。 突然高い声が聞こえてきたので慌てて視線を向けると、 俺より三倍ほどの量のツタに絡まれていて、体中のあちこちを這ったりつつかれているのが、見て取れる。 俺のよりも、太いし。ツタどころじゃない。 木レベルに太いもある。股間付近に。 「なんで、なんで、僕、だけっ……あ、ああっ」 「ふふっ。あなたが感じてくれるから嬉しいみたい。我慢しないで、いっぱい出してね」 「はう、あう、ごめ、なさい、ごめんなさいっ」 俺に、謝ってるんだよな。 すまん。古泉。謝るのは俺の方だ。 わけのわからんモノたちに絡まれて感じてるお前を見て、勃起しちまった。 「くそっ……」 そして俺に絡まってる奴らも、それを見逃すわけがない、と。まずいな。 「ふえっ、あっ、もう、だめっ……出ちゃい、ますっ……!」 普段もう少し我慢することを教えておけばよかった。 男共の前で一番最初にいかされる羽目になるとは。 古泉、ごめんな。これからはもっと持続力を鍛えるために、頑張ろうな。 大丈夫だ、あとであいつらの記憶がなくなるように俺が後頭部を鈍器で、 「くううっ……!!」 「えっ?」 「ん?」 古泉のフィニッシュを間近で見ようと体を前のめりにした、まさにその時であった。 俺の斜め後ろから聞いたことのない声が聞こえてくる。 低めの、なんだか、情けない声だった。 古泉もあっけに取られてそちらを見ているので俺も振り返ってみると、 「びっくり。会長って、早いんですね。そんなに感じやすいならもっと早くこの子たちのお世話をお願いしておけばよかった」 「は、はあ、はあ、はあ」 「そんなに気持ちよかったんですか? ふふ、じゃあ、もっとよくしてあげますね」 「うっ!? 喜緑くんっ、やめたまえ……っ!」 見たくもなかったが、会長の制服がずりおろされ、さらに、そいつらにうつぶせに押し倒され、 「げっ……」 「わあ、これは大変だね」 「キョンー!! 俺、逃げる! 逃げる!」 国木田や谷口もビビらざるを得ない行為に発展した。 つまりは、まあ……あれはどのくらいだろうな。 俺ほどじゃない、ハルヒの手首くらいか。 そのくらいの太さの緑色の長い物体が、会長の……そこに、入っていったのである。 「あ、ぐあ、あっ」 「会長初めてですか? でも、すぐによくなれそう」 「き、み、どり、くっ」 「大丈夫ですよ。一番最初に出したご褒美だから、優しくしてあげます」 「あ、あんっ」 「お? し、しまったっ……古泉、ばか、勝手に出すな!」 会長に気を取られている隙に、古泉がいっちまった。 なんてことだ。 見たくもないものを見たせいで、一番大事な瞬間を逃すなど。 古泉が出す瞬間は欠かさずに見ることにしていたのに、こんなところで、そのチャンスを逃すとはっ……! 「ごめんなさい、ぼ、僕……あっ、ま、まだ?」 「あなたは慣れてるみたいだから、相手をしてあげてね」 「ふ……あっ、す、すごいっ」 古泉! お、俺以外の何かを突っ込まれて、そんな顔を、するんじゃないっ! くそ、この巻きついてくるものさえなければ俺が気持ちよくしてやるのに。 不可抗力だから後で叱りはしないが複雑な気分だ。 そしてもっと、複雑な気分にさせるものが、ある。 「はあ、う、ううっ……」 残されたのは俺と谷口と国木田の三人。 谷口のアホが会長の痴態には目を背けたくせに、古泉の姿を見て顔を真っ赤にしてる。 気持ちが分かるだけに、まずい。 古泉には、 男に興味などもちろんまったくどこにもなかった俺ですらふらふらと墜ちてしまうような魅力がある。 谷口もどうやらそれに気付いてしまったらしい。 そりゃ、目の前で、こんなかわいい顔で喘いでりゃ、そうもなるよな…… 国木田の視線は観察対象として見ているそれのようなので安心した。 「古泉、すげえ、な」 「こら、あまり見るな」 「んなこと言ったってよ」 「この子が気になるの? もう少し近くで見せてあげますね」 「へっ! うわ!」 谷口の体が宙に浮いた。 おお、お前も普通の人間じゃなかったのか、鳥人みたいな…… と現実逃避をしかけたがもちろん浮いているのは喜緑さんのおかげである。 絡まるたくさんのツタが谷口を持ち上げて、古泉の近くまで連れて行く。 まさに特等席だ。 古泉の、真上、って。 「こ、これは」 「ん、んう、谷、口さん、見ちゃ、だめですっ……!」 「見えちまうんだけど、すまん」 「あっ! ああう、ふ、ふえっ」 「うっ……」 「古泉ー! こらー!!」 俺はなぜか国木田の方まで引っ張られ、古泉からどんどん離される。 そうこうしているうちに谷口と古泉の体は密着させられて、 ツタの先から出るどろどろの液体で擦り合わされ、見るからに、……気持ちよさそうだ。 「素敵な眺めね……」 喜緑さんもご満悦な様子でうっとりと眺めている。 こんな状況、俺は認めないぞ! 時間をかけてやっとの思いで古泉を手に入れたのに、簡単に、やられてたまるものか! 谷口、避けろ、今すぐにそこから離れてくれ、頼む。 「キョン、大丈夫? 泣きそうになってるけど」 国木田の優しい声がさらに涙腺を刺激する。 泣きたくもなるさ。 好きな奴の下半身を別の男の体で擦られて、お互いに声を上げてる姿を見れば。 「古泉、すま、んっ……!」 「谷、口、さん、ふ、ああ、僕も……!」 悪くない。 古泉も谷口も悪くない。 すべてはあの、二人を絡ませめちゃくちゃにしている、もののせいだ。 二人が同時に駄目になる瞬間は目を硬く閉じた。 そしてその時に流れる一筋の涙を、彼女は見ていた。 「ごめんなさい。もしかして、あなた、彼が好きなのかしら」 一発でばてた谷口はその辺に放置され、 ぐちゃぐちゃに濡れた古泉だけが引きずられるようにして俺の前に連れて来られる。 多少、腕に巻きついていたツタがゆるんだので、すぐに引き寄せて抱き締める。 古泉は焦点の合わない目で見つめてきて、俺だと分かるとすぐに、謝罪の言葉を口にした。 「ごめ、なさい、僕……我慢、できなくて……」 「いいんだ、お前に責任があるわけじゃない。大丈夫か?」 「う……まだ、体の、中に……」 「な、なんだって」 見てみれば確かに古泉の体の中には、先ほどの太いものではなく、 細い管が何本も入り込んで中でうねっているのが見てとれる。 動くたびに古泉は、あ、とか、ん、とか声を上げては口を緩ませて、 そのたび、ごめんなさいと謝る。 引き抜こうにも、そうしようとすると腕が拘束され、出来ない。 「キョンと古泉くんってそんな関係だったんだー」 心から感心しているような国木田の言葉には、耳を貸さないことにする。 「古泉、古泉っ……」 「お腹の、中、あっつい、です」 「……毒、とか、ないですよね」 「大丈夫です。人畜無害な子ばかりだから。ね、あなたも一緒に遊んであげて?」 ここまできてしまえばどうしようもない。 彼女はまだしも長門がこの事態を放置するとは考えられないので、記憶は失われるものと信じて意を決した。 「はっ……ん、んう」 「古泉、今、楽にしてやるからな」 「はいっ……」 引き抜く以外の動きなら許されるようだ。 古泉の腰を持ち上げて、……勇気を出して、ツタの這う古泉の体の中へ侵入していく。 「ぎゃっ……」 「あああっ、そ、んな、すぐにっ」 「俺のせいじゃないっ……!」 敏感になっているしかわいそうだからゆっくりしてやろうと思っていたのに、絡まるそれらに一気に奥まで持っていかれた。 古泉に入るってだけでも十分だ、 だが、さらにそいつらが先端に吸い付いたりぬるぬると締め付けてくるから、 腹立たしいが非常に気持ちがいい。 古泉も訳が分からないくらい気持ちがよくなっちまってるらしく、 せっかく大金をはたいて生徒会長に仕立て上げた男が向こうで今の古泉以上に大変な目に遭っているのにも気付かない様子だし、 さっきまで一緒になっていた谷口にも目を向けず、 にこにこと古泉よりもどこか黒さを感じさせる笑顔でこちらを眺めている国木田も気にせずに腰を上下させたりして、 なんだか、もう、な。 どうでもよくなってきた。 そもそも俺だけが先のことを憂うのも、不公平じゃないか。 こいつらは皆こんな状況でも楽しんでいやがるのに。 「あっ、ああ、すごい、です」 「もう、どうにでもなってくれ」 「う、うあっ、い、っちゃう……!」 「く……っ!」 ぎゅうう、と、そこも、背中も、締め付けられる。 抱き締めあう俺たちを更に密着させようとたくさんのツタが巻きついてくる。 ただ、古泉から出てきた体液はそいつらが吸い取ってしまったため、俺の体にはつかない。 そして、俺のも、古泉の中に出してやろうと思ったのに、全部、奪われた。 「うぐぐ……」 吸い取られる、って、きっつい、な。 古泉、お前何発目だ? ああ、でも、お前はいつも俺にやられてるから慣れてるのか。 「あとはあなただけ、です」 「そうみたいだね」 「この状況じゃ興奮できないかしら」 「あいにく僕はキョンや谷口の痴態を見せられても、……まあ、面白いけどそういう意味での興味はないから」 喜緑さんの興味はすっかり国木田に移ったようだ。 体が解放されたので、ぐったりと体を預けてくる古泉に膝を貸してやり、目を向ける。 谷口も這うようにこちらにやってきて、国木田と喜緑さんの戦いを見守り始めた。 会長は、……見てやらない優しさ、って、あるよな。 「私がお相手をするのはどう?」 「あはっ、光栄だなあ。こんなかわいい人にしてもらえるなんてさ」 「ふふっ」 「……なあキョン、あいつ、何者?」 「知らん」 谷口が指すあいつとは国木田である。 俺は中学時代から一緒だったが、あいつがここまで肝の据わった男だとは知らなかった。 しかし、面白いけどそういう興味はない、とは、深い。 俺は古泉が好きで古泉を抱くような関係になってから普通とはいえない性癖を身につけてしまった。 そして、谷口もすっかり古泉に魅了されてしまったし、 会長は、ああなってるってことは、元々そんな素質があったのだろう。 国木田は違う、なら、あいつが一番普通の人間なのかもしれない。認めたくはないが。 「この辺かしら? どう?」 「うん、もう少し力入れてくれる?」 「こうね」 「そうそう。上手だね」 ……前言撤回。やはり認められん。 何を指導しているんだ。喜緑さんを相手に。 その人は、長門と同様……どころかそれ以上の何かを秘めた方だぞ。 「いいなあ、国木田のヤツ」 まだ言うか谷口。 「ん……、いい、感じ」 「本当?」 「うん。いきそ、かも」 「嬉しい。私が飲んじゃおうっと」 「きっ……喜緑、くっ……!」 彼女の舌が伸びる瞬間、 あちらで転げまわっている会長が焦ったようにずれた眼鏡を直して何かを叫んだようだったが、 すぐに絡まってくるやつらに大人気で奥の方へ連れて行かれた。 かくして、国木田もようやく果て、 「思っていたより美味しくないのね」 複雑そうに笑う喜緑さんが、しかし満足したらしく、 お互いに健闘を称える握手を交わした後に、 突然ぐらぐらと視界が回り気を失ったその後には元の空間に戻れていた。 「今日さ、すげーかわいい先輩を見つけたんだよ」 後日、昼飯の途中に谷口が嬉しそうに言ってきた。 「緑っぽい髪の色で、透明感があるっつーの? 色白で物憂げな感じでさ。守ってやりたいっていうのかな」 むせる俺。笑う国木田。 あの空間での出来事を覚えているのは、俺と国木田の二人だけだ。 俺が覚えているのはまだ分かる。 なぜなら、あの空間を壊して助けに来たのは長門だったから。 「あなたは覚えていて」 まっすぐに見つめられて言われれば頷くしかない。 そしてそれは、国木田だけが覚えているという事態を防ぐためだった。 喜緑さんは唯一認めた相手の記憶を消すことを拒んだのだ。 そして俺は調整役に選ばれた。 またこうして気を遣わなくてはならなくなるんだ。これが俺の人生、か。 「今度声かけてみよっかなー」 「いいんじゃない」 「やめとけ、どうせすぐに振られるのがオチだ」 「んだよ、キョン!」 アホ谷口の相手をする分には構わない。 だが国木田の確信犯的な笑顔に、果たしていつまで耐えられることか。 「どうしたんですか? お疲れの様子ですが」 だが、俺にはこいつがいる。 教室を離れて部室へ行けば、古泉に会える。 谷口と古泉の記憶が失われたのはよかった。 下手に気をもたれたりしたらたまらん。 「色々あってな。癒してくれ」 「おや。学校であなたがそのようにおっしゃるとはめずらしいですね」 「うむ……」 あれ以来古泉へのスキンシップは増すばかりだ。 古泉が他に気を取られたりしないように。 せっかく一緒になったんだから、きちんと、繋ぎとめておかなくては。 「甘えん坊さんですねえ」 「気色悪い言い方をするな」 「すみません」 お前だって俺の膝で寝てたときは、と言いかけて口をつぐむ。 ……また、膝枕くらいなら、してやってもいい。 「そういえば」 「ん?」 「一週間くらい前から、会長の様子がおかしいんですよ。心ここにあらずというか……たまにぼうっと誰もいない空間を眺めているんです」 「…………。あいつも疲れてるんだろ」 「そうなんでしょうか」 「お前が癒すのは俺だけだからな」 「ははっ。分かってますよ」 あんなことがあっても、 古泉のこの笑顔さえ見られれば、 すっかり日常生活を送れるようになっちまった俺は、 やはり、 ハルヒに興味を持たれるような人間、なのかもしれない。
1年半くらい前のをアップしてみました・・(2010年2月時点)
酷過ぎて改行するのすらためらわれたよ!!
なんというか、まあ、喜緑さんが好きなんです、すごく・・・。