テレビから大歓声が溢れるたび、古泉は息を飲んでこぶしを握る。 こいつがサッカーに熱意を持っているとは知らなかった。 特進クラスのくせに体育祭で九組がいいところまでいってたのは、 他にもサッカー好きがいたからなんだろうか。 勉強詰めじゃ却って効率が悪い。 息抜きにはいいのかもしれないが、 古泉がクラスメートとサッカー談議をしていたのかと思うと、妙な気持ちになる。 「おいっ」 「わ! びっくりさせないでください」 「うるせえ。サッカーばっかり見てないで俺に構え」 「何を子どもみたいなことを言っているんですか。九十分の試合くらいじっくり見させてください」 俺にはそんな話、しなかったくせに。 拗ねてちょっかいを出せばたしなめられ、 捕らえたはずの腕の中から古泉はするりと逃げていった。 ブブゼラを吹き出さないだけまだマシだと思うべきなのか。 いくら古泉の家でも周りの住人に迷惑をかけたくはないからな。 夜中の古泉の声ですら若干抑え気味にさせているくらいだ。 いや、それは古泉の声を誰にも聞かせたくないから、だが……。 「先制点が! 入りました! やりましたよっ!」 「ん? ああ、そうみたいだな」 「この一点を守り切れば……いえ、まだ前半戦ですから、さらに一点入れれば勝負はかなり楽に……」 すっかり試合に心を奪われちまってる。 四年に一度の世界大会がリアルタイムで見られるとなれば解らんでもないが、 普段なら甘い声を聞ける時間帯なだけに落ちつかん。 サッカーは見るよりもやるほうが好きだし、 お前を見るのも好きだが、 やるほうが……好きといえば、好きだ。 「古泉ー」 再度後ろからそっと抱き締め、柔らかい頬に口を寄せる。 しかし古泉はまったく、びた一文も俺に意識を寄せずにテレビに齧りついている。 俺に近づかれるだけで真っ赤になっていたお前はどこへいった? 付き合い始めてから一日たりとも余さずに触っているから慣れたのか。 頬を唇で挟みつつ、古泉越しにテレビを見る。 前半二十分過ぎ。ハーフタイムまでもあと二十分以上ある。 試合終了までこのまま待つのはあまりにも退屈だ。 「なあ、古泉」 「! み、耳元で呼ばないでください」 「返事しないからだろ」 「僕は忙しいんですっ」 力づくで引きはがそうとしてくるもんだから、俺もやけになって古泉に押しかかった。 「あ、わっ」 「ディフェンスがなってねえな」 「あなたのはファウルですよ」 「お前が弱過ぎるんだ」 サッカーに気を取られていたせいだろう、 古泉は簡単に組み敷かれ、 カーペットの上で封じられた足をもじもじと動かし、 ある程度の自由はある腕で必死に抗議する。 「離してください、僕は試合を見るんですっ」 「俺はお前との時間を一分でも無駄に過ごしたくない」 「無駄ではありません、四年に一度しかない、大会なんですよ」 「今日という日は二度と来ないんだぞ。俺が明日事故にあって記憶喪失になったらどうする」 「そういう話じゃ、ないでしょう、も、う」 俺にとっちゃそういう話なんだよ。 何が起きるかわからん毎日を過ごしているだろ。 ハルヒの奴がSОS団を気に入っているから俺たちが引き離される心配はないが、 思い立ったらすぐに部室への泊り込みを決めたりするからな、 そうなればお前に色々出来なくなる。 俺は、できることなら毎日ゴールを決めたいんだ。 「んむっ」 「古泉っ……」 「や……ほ、んとに、今、するんですか」 「したい」 弱点の首筋を攻めつつ、古泉の肌を覆う一枚の薄いTシャツを徐々にまくり上げる。 本気で怒られたら中断するつもりだったが、古泉の吐く息が熱くなり、腕を掴んでくる指に抵抗感はない。 これはいける。よし、俺たちの試合開始だ。 「ふ……」 「四年後は、どこでやるんだ?」 「えっ……」 「四年後なら俺たちも海外くらい行けるだろ。一緒に見に行くか」 「どういう、風の、ふき……あ、んっ」 四年後なら新婚旅行にちょうどいいかと思っただけさ。 どこで開催するのかは知らないが、 お前がその時もサッカーを好きなら、 ただしそれ以上に俺を好きでいるなら、どこへだって連れて行ってやる。 「どうして、にやにやしてるんですか」 「お前がかわいいからだろ」 「ばか、ですね……」 ちらとテレビ画面に目をやると、前半戦終了近くに相手国に二点も入れられてる。 俺も負けてられないぜ。 サッカーを見る前に風呂に入ったから、触れる肌はさらさらだ。 多少の暑さでは汗をかかない。 俺みたいに、古泉に少し触るだけで体中熱気に満ちてくる体質とは違うらしい。 「ふ、あ、う」 「サッカー終わるまで、ゆっくりやってやるよ」 「や、あっ」 お前がやだって言うときは、大体、嫌じゃないよな。 サッカーを見る時間がなくなるのは嫌かもしれんが、 時間をたっぷり使って気持ちよくなるのは好きだろ? 直に腰から背中にかけてを撫でながら、耳元に口付ける。 息をかけると体がびくつくのが分かる。 全くこいつの体は敏感で結構なことだ。 だからこそ、時間をかけて焦らしてやらんと、 脆いディフェンスが簡単に崩れちまう。 試合を楽しむためには力加減が必要だ。 「あし、が、あた、って」 「ん? このくらいなら平気だろ」 「だめ、かも、です」 「マジか」 「うう……」 加減してた、つもりなんだが……。 お前、サッカーに集中してたんじゃなかったのか。切り替え早いな。 「あなたの触り方が、いやらしいからです」 「素直にうまいって言えよ」 「言いません」 恥ずかしいとすぐ拗ねる。 口を尖らせる表情なんかこんな時しか見られないから俺もわざとやってるんだが、 古泉は俺を喜ばせているとは思ってないだろう。 「我慢は体によくないな」 「んう……」 下も膝までずり下ろすと、 古泉が真っ赤になって顔を背けるのを拝めるほどに濡れていて、 反射的に、下腹部に張り付いているものを舐めた。 「や、ちょ、ちょっと、何舐めてるんですっ」 「ダブルでお得みたいだろ、これ」 「意味がわかりません」 お前のもんなら毛の一本すら愛しいってことだよ。 理解できなくていいさ。お前が同じ行動を取り始めたら困る。 舐めて欲しそうにしている箇所には今は触らない。 飲むのは一向に構わんが、 サッカーにお前を取られそうになったんだ、取り返さないといかんだろ。な。 「ゆ、っくり、するんじゃ」 「お前だって早く入れてほしいくせに」 「そんなこと、ないです」 また拗ねた。 まったく、何でお前は俺好みの表情を無意識に見せてくるんだ。 我慢ならん、お前の柔らかすぎるディフェンスに攻め込ませてもらうぜ。 「あ、うう、あう……!」 「風呂で下準備でもしてたのか? ずいぶん入れやすいぞ」 「ば、かっ……ふ、ふあ、だ、だめ」 「ほら、もう我慢すんな」 「うう、で、でちゃ、う……!」 唇を噛もうとしたから切れないように自分のを押し当てて、 体の奥まで入り込んで、 震える体を抱き締めた。 離すと荒い呼吸を繰り返し、 その間に俺は、 古泉の額に浮かぶ貴重な汗を一滴ごと丁寧に舐め取っておく。 古泉がいっちまう瞬間にゴール、 なんて声がテレビから聞こえてこなくてよかったが、 もう古泉はサッカーを気にかけている場合ではないらしい。 「はやく、つづき、を」 「しかたないな」 「は、う、きもちいいっ……」 ああ、結局お前のディフェンスから離れられないなら、 俺は負けっぱなしなのか? 負けでもいいか。これほど気持ちのいい、 溶けそうになるくらいのミルクディフェンスは、一生かかっても突破できそうにないよな。
ギャグですよ!ギャグです!キョンがおっさんくさくてすいません
ダブルでお得ってのはKeも体液も楽しめるって意味です・・
書いててこれわからないかもとおもいました