「んっ…」


両手で掴んだ顔が上下するのを感じて、目を開ける。
顔が近いと気色悪いと思っていた奴と、
こんなに至近距離…と、いうよりは、
キ、キスまでしてしまっているのに、
今は、気色悪いとはまったく思わない。



目を閉じて頬を染めて両手は俺のシャツを握り締め、
唇まで力いっぱい閉じて触れるだけのキスをしている相手は、古泉。



一人より二人で






フロイト先生も爆笑のあの一件後、
古泉はいつもの調子で恭しく礼を述べた後、
なにをとち狂ったのか、突然泣きそうな顔になって告白してきた。
超能力者です、なんて分かりきってる告白じゃないぞ。


愛の、告白だ。




「あなたが、いない世界なんて、どうしたらいいか分かりませんでした」

「戻ってきてくれて本当に嬉しかったんです」

「あなたに会いたかった、誰よりも先に」


「・・・好きなんです」

「こんなこと言われても、困りますよね」



古泉がいつもの理路整然とした様子を失い、
途切れ途切れに懸命に想いを伝えてくるさまは、
不覚にも胸が詰まった。



「すみません…こんなこと言うつもりではなかったのに」


ぽかんと口を開けたまま無言を貫く俺に、
古泉は再度謝罪をした。


返した言葉は一言だけ。


「別に、いいけどな」









初めてキスをしたのは先週の火曜日。
部室で二人きりになったときに、
距離感を計りかねている古泉の不意を突いて、キスをした。
たぶんそのほとんどは、好奇心と勢いで。


「あ、あの、今のは、あの…」


予想以上に真っ赤になって腕を震わせて、見つめる目には迷いの色が浮かんでいる。


「あなたは、その・・・、僕の、ことを」



そこまで言ってからたっぷり3分は沈黙が続いただろう。
ウルトラマンを呼んだのに何もしないまま帰ってもらうような時間だ、勿体無い。
言いたいことがあるなら、さっさと言ってくれ。


「…すみません。何でもないです」


聞かれりゃ、答えてやらなくもなかったのに。









その夜、
俺は初めて、古泉で抜いた。



柔らかい唇。
柔らかい前髪。
茶色ががった瞳。
長い睫。
濡れた唇。
首筋に流れる髪。
泣きそうな瞳。
真っ赤な頬と耳。


自分のことを好きかどうかすら聞けない、臆病な古泉。


「はっ…く、う…」


一瞬の出来事を思い出すだけでえらく興奮した。
きっと深くキスをしたりすると熱い息を吐くんだろ、
髪に隠れている箇所を舐めるだけで涙を浮かべながら喘ぐんだろ。
古泉はシャツをきっちり着ているから、
白い肌に痕だってつけられる。
男だし胸なんざ感じないだろうが、
俺が触るってだけでじゅうぶん、興奮するはずさ。


あー、やばい。
古泉の表情が想像できてしまう。
こんなに想像力が逞しかったとは。


体を折り曲げて、下着を下ろす。
これは、やばい。
谷口から借りたDVDでだってこんなに興奮はしなかった。
少し擦るだけで先端が滲む。


「ん、う…こい、ずみ」
名前を呼ぶとより一層、興奮が高まって、頭の中の古泉の声が上がる。


二回目は、焦らしてやろう。
来週まで我慢して、不安に駆られているときに、またしてやろう。
もしかしたらもっと進めるかもしれない。



「こ、いずみぃっ…」


手が自然に早まる。
人差し指と親指がぬるぬるする、
なんだよ、考えて一人でやるだけで、なんでこんなに気持ち良いんだ。


もう、もたな、い。
まだ頭の中ですら古泉とやってないのに、このざまだ。
意味がわからん、何をこんなに興奮してるんだ。



「こいずみ、こいずみ、こ、いず、み…!」


頭まで突き抜ける快感と共に、
大量の体液をティッシュに落とした。
うっかりこぼすところだったぞ、危ない。



まだまだ若いね、俺も。







そんなわけで、俺自身もかなり我慢をして、1週間ほど経った日に、
古泉を非常階段に呼び出した。



「・・・・・・」




また泣きそうな顔だ。
部室での当社比120パーセントな笑顔はやっぱ、演技か。


興奮する。




「古泉・・・」


頬に手をやるつもりが気がはやり耳まで伸び、
あー、もういい。耳でもいい。顔を近寄せられるならなんでもいい。


毎晩毎晩想像していたキスだ。
だけど現実は、けた違いだ。


「ー…!!」


抗議しようと押し当てられた拳はすぐにそれを諦めてほどけた。
閉じたままの唇を舐めてやると、びくびく震えながらシャツを握り締めてくる。

けた違いだ。



「口、開けろ」
「え、あ、はい」


言われたとおりに開いた唇に舌を滑らすと、大きく体を上下してすぐに引き剥がされた。
そんなにびびんな。
何も悪いことをしようとしてるわけじゃない。



「嫌がるなよ」
「・・・そ、ういう、わけでは」
「じゃあ抵抗すんな」
「あの。あの・・・」



お前が言いたいことは分かってる。
だけどな、そんな顔を見せられたら、
ゆっくり聞いてやる余裕なんかないぞ。


「ん、んうっ」


壁に押し付けて再度舌を入れる。
中が熱い。舌、熱い。
ざらざらした表面を舐めるとやばいくらい気持ちがよくて、
力をこめて頭を固定させて息が続かなくなるまで舐めた。
こりゃ、勃つな。



繋がった唇から漏れる古泉の声も、実に想像以上に荒くてかわいくてたまらない。


たまらずぐりぐりと右足を下腹部に押しつけてみると、


「ああうっ、や、だっ…!!」 


舌を入れたとき以上に震えて突き飛ばされた。
いてて。

でも、
こいつも、興奮してるよな。
足に当たった感触は…


やばい、触りたい。
すごいこと、してやりたい。



「だめ、です…これ以上は、できません…」



何言ってんだ。
まだ始めたばかりだろ。



「もう、やめてください」



おまえ、それ、どうすんだよ。
俺だってこのままじゃ部室になんか行けないぞ。


「無理だろ、そりゃ」


無理だ。 


「な、便所、行こうぜ」


さすがにここじゃまずいのは、わかる。


「!!!」


元々俺よりは大きな目をさらに大きくさせて、めいっぱい首を横に振られた。
こっちだって意を決して言ってんだ、そんな力強く拒否すんなっ。


掴もうと伸ばした手もはねのけられ、
この場から逃げる隙を伺っているような様子なのに、
興奮がおさまる気配すらない。


触りたい。触りたい。


体ごと押しつけて強引にベルトに手をかける。
同じ制服を着ているから、勝手は分かってる。


「や、やめ、やめてくださいっ」


少しだけ緩めた状態で手早く中に滑り込ませた。
すぐに触れる。
これが、古泉の、


「やっ…やだ…!」

両手で腕を痛いくらいに掴んでくるが、気にならない。
こんなになってんのに放っといたら体に悪いぞ、たぶん。


「やめて、ください…!っあ、あ、あ」


やりにくいが上下にさすってやる。手のひらから直に伝わる熱で、自分の吐く息も熱くなる。


顔、見たい。

「こい、ずみ」
「や、やだ、あ、ふあっ」



赤い。目元も、頬も、唇も、真っ赤だ。
下まつげが涙で濡れて、小さな窓から漏れる西日で光ってる。
すげー、かわいい。
もっと、良くしてやりたい。




「古泉、お前、かわいい」
「っ!あ、うっ、んん」
「誰か来たらまずいよな」
「あ、あ、はっ、い…」



一旦引き抜いてチャックを上げる。
惚ける古泉の腕を引いて、恐らく一番人が来ないであろう旧館の男子トイレに連れ込んだ。
個室に二人とは狭いがその分古泉を近くで見られる。
もう一度長いキスをしてから、制服と下着を膝までおろしてやる。
恥ずかしいと泣いて訴える古泉が、とてつもなくかわいくて、
後ろからぎゅうと抱きしめた。
そのままの姿勢で、唾液を手のひらに垂らしてから、
ぴくぴく震える古泉の、その、なんだ、前を、握る。



両手を壁について腰を突き出し、
泣きながら喘ぐ姿はあまりにも淫靡で、
妄想を遥かに凌駕していた。


我慢して漏れる液体が指に伝う。
あぁ、お前、気持ちいいんだな。



「出していいぞ、古泉」
「は、あ、ああっ、やっ・・・」


我慢比べなら負けないぜ?
だってお前、とっくに限界だろ。
腕も足も、力が入りすぎて震えてるぞ。


耳を舐めてさらに体を震わせてから、囁く。


「イくとき、見てるから」


「!!やめ、て、くだ…はずか、し…は、あうぅっ」



首、綺麗だ。
汗、すごいな。
痕が残らないくらいの強さで吸いつくと、
古泉の汗の味がした。


「ああっ!あ、う、や、も、」


首弱いのか。
じゃあずっと舐めてやるよ。


「うあぁあ、んう、はっ…!やだ、や、あ、で、るっ…」


一気に手の動きを加速させて強く擦りあげ、耳元で名前を呼んだとき、


「んんんんっ!!」

自分の腕に噛みついて、床と壁に精液を飛ばして、果てた。



俺の息もだいぶ上がってる。
我慢の限界だ。

体勢を維持するのが精一杯な古泉を見ながら、
自分のも触る。見てるだけでイきそうだった。


「はっ…こ、いずみ…」
「あ、ぅ……」


古泉がこっちに目をやり、何をしているか分かってまた目を丸くした。
仕方ないだろ、お前のあんな姿を見せられたんだからな。
って、見てるのかよ。
別にいいけど、余計興奮するじゃねーか。
早いとか、言うなよ!


「うっ、ん…ああ…」



ダメだな。
一人でするより、
お前と一緒の方が、数倍・・・どころじゃなく気持ちいい。


「古泉、古泉、こいず、みっ」
「・・・!ふ・・・」




あーー・・・・・・・




かからないように自分の手で受け止めたつもりが、
ほとんどこぼれ落ちて古泉の足やらおろした制服やらにかかってしまっている。




「悪い・・・汚しちまった」
「いえ、だい、じょうぶです…」


拭き取れるだけ拭き取ってみたものの、
じっとり濃く色付いた箇所はどうにも不自然だ。
これは…クリーニング代を出した方がいいな、うん。



出してみると冷静に戻るもので、
学校でしかもこんな場所で何をやっているんだと、
自分に苦笑したが古泉を見るとやっぱりやるしかなかったなと思った。
かわいくてしかたない。本当はもっともっと先までしたい。


余韻でまだ冷めやらぬ唇をもう一度重ね、飽きることなく求めた。
もう近付けるだけ近付いているのに、
もっと古泉の近くにいきたい。
背中に腕を回して抱きしめて、何度も何度も口づけた。






ああ、そうか。
俺、古泉のことを、


「あの…」

腕を弱々しく掴んで、目を伏せた古泉がまた必死に言葉を紡ぎだそうと深呼吸をしている。


言ってみろ。



こんなことになってもまだ不安がっている古泉が、
かわいくて、かわいくて、こっちまで顔が赤くなっちまう。
たまらなくなって頭を撫でると、古泉がやっと沈黙を破り呟いた。




「…あなたは、その…僕のことを、」
また、大きく息を吸う。
「好き、なんでしょうか?」



こらこら、まだ何も言ってないのに泣きそうになるな。
そんなに不安にさせるようなことは、
一切してないつもりだったんだが。




「まあ、そうだな」



あれ。
なんだ。
いきなり、気恥ずかしくなってきた。
好きだと言ってやろうと思ったのに。



「…」



肯定はしたものの、言い方が微妙すぎて古泉の表情はいまいち晴れない。
そりゃそうか。


好き、って言うのは、
こんなに、緊張するものなのか?



そうだ、俺、古泉が好きだ。
だから、キスもしたいし、興奮するし、抱きしめたくなるんだ。



「あのな、古泉」



今度は俺の番だ。
深呼吸を二回すると、先ほどまでの、そして先週の古泉の気持ちが痛いほど分かる。
すまんな、古泉。
頑張ってたんだな、お前。



「…好きだよ」



は、
恥ずかしい…



「…ほん、とうに?」
「俺はあいにく冗談は苦手でな」
「…嬉しいです」


なんだその笑顔は。
いつもと全然違うじゃないか。
そんなふうに笑えたのかよ。
俺に見せるのか、それを。


「あ、あっ…」



ずっと抱きしめていたい。
キスしていたい。
相手は古泉だぞ、どうかしてる、しっかりしろ、
なんて頭の片隅にあった警鐘はもう鳴らなくなった。


「好きだ、好きだ、古泉」
「ん、う…ぼ、くも…好きです」


神に背くことになったって、今は、いい。
俺、こいつのこと、好きだ。




thank you !

これ自慰ネタ?自慰ネタになってる?(自慰を繰り返さない!)
いつき苛めようとしつつも途中で方向転換でラブラブという・・
このあといつきの制服は濡れたまま部室行ったんでしょうか?

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