※いつきのキャラが崩壊しました







好きで好きでたまらない。
駒を置く指も、その指から繋がる腕も、肩も、
気だるそうに投げ出された足も、
「おい、さっさと次置け」
面倒くさそうに(きっと、もう勝敗がついているから)
僕に投げかけるその声も、細められた目も。
ああ。全部が、好きで好きで、どうしたらいいんだろう。



恋せよ乙女




あまりにも気持ちが高ぶりすぎて、
ある放課後、僕はその思いをぶつけた。

「あなたのことが好きです、好きすぎて、どうにかなりそうです」

突然の剛速球に、彼は座りかけていた椅子から転げ落ちた。
いつも顔が近い、気色悪いと引かれて、
ウインクの一つも飛ばしてみるとあからさまに嫌がられ、
それでも、抑えることなんて出来なかったんです。


「いや・・・そうじゃないかと思ってたけど、
 そこまで言われるとは思ってなかったぜ」


椅子に座りなおした彼は少しため息をついて、そう言った。
やっぱり、バレていたようです。


「あのっ、あなたは、どうですか?」


ここまで言ってしまったら、もうどこまでだっていける。
嫌われてしまったら元も子もないけれど、
彼はそこまで嫌がっていないようにも見えた。


「どう、と言われてもなあ・・・」


僕は、あなたが望むことなら何だってします。
閉鎖空間だっていつでもご招待しますし「必要ないっ」、
テーブルゲームもいくつでも用意しますし「どうせお前弱いだろ」、
遅刻しそうなときはタクシーを呼びますし「ちょっと助かる」、
僕、一人暮らしなので、部屋を好きに使っていただいても、
構いません!「それも結構、いいな」



「しょうがないから、付き合ってやるよ」


やれやれと僕が肩をすくめる仕草の真似をして、
笑顔でそう言われたとき、
今なら神人100人だって一人で倒せる、と思った。








「お前の部屋、ずいぶんシンプルなんだな」


部屋に招待した最初の一言がそれだった。
昨日まで連日深夜に渡る清掃活動を行い、
これ以上ないってほど綺麗にした。
カーテンも、カーペットも、ベッドシーツもカバーも換えた。
おかげで機関から貰っている仕送りの桁が減ったけれど、
そんなことは問題じゃない。


「あまり物を置かない主義なんです」
「ふーん・・・ま、広く使えていいけどな」
「紅茶と麦茶とコーラとオレンジジュースとカルピスがありますが、
 どれがよろしいですか?」
「ありすぎだろ!古泉、水分取りすぎには注意しろよ」


大丈夫です。全て未開封ですから。


「じゃ、オレンジジュースで」
「はいっ」


喉に入っていくオレンジジュースが、うらやましいです。
あのコップはしばらく、洗わないでおきましょう。
ジュースの水分で濡れた唇に、目がいく。
ここは密室。彼と僕しかいない。涼宮さんに見つかることもない。




キス、したい、な・・・





キョロキョロと部屋の様子を見回す彼の横に擦り寄り、
そっと指先に触れてみる。


「っ!!」


あ、あ、あ、あ。

どうしよう。
ドキドキしすぎて、手に触れるのすら、
電流が走ったみたいになる。
触っていられない。



「なんだよ。静電気か、俺は」


失笑されました・・。

せっかく部屋に招待したのに。
何度かリトライして、やっと、来てもらったのに。
このままでは、全く先に進めない。
それじゃ、ダメなんです。



もう一度呼吸を整えて彼を見つめる。
前髪、いつも、短い。かわいい。
目は黒目が大きくて、いつも少し眠たそう。
はあ、やっぱり、好きです、すごく、好きです。
見ているだけでドキドキする。
こんなに近くにいられるなんて。
二人きりで、隣に、いるなんて。


「見すぎだろ・・・」
「はっ・・す、すみません」


見惚れてしまう。
何もできない。
何も言えない。






「あ・・・」


暖かい手。
逃げられないように、上から強く押し付けられた。
顔に血が上る。
彼が、彼のほうから、こんな!


「あのっあの、ぼ、僕、」
「古泉・・・お前はいいから、黙ってろ」




テレビも点けずに、
テーブルに置かれた残りのジュースにも手をつけずに、
僕達はずっとその状態で過ごした。
こんなことで心臓が爆発しそうになるほどしょうもない僕を、
彼は笑いもせずに、ずっと一緒にいてくれたんです。


何も言わなくても、何もしなくても、いいんですよね。
焦らなくて、いいんですよね。



やっぱりあなたでよかった、
あなたを好きになってよかった。
大好きです。
大好きです!




彼の妹から電話がかかってくるまで、
僕はその幸せな時間を満喫した。
彼の体温が僕の体に浸透してきたみたいに、体が熱い。


「悪い、そろそろ帰るわ」
「はい・・・また、来てくださいね」
「おう」



笑顔、好きです。すごく、好きです。



ぽーっとしながらも、彼を見送ろうとドアを開けたとき、
背後からガラスの音が聞こえた。
振り返ると、律儀にも、コップを片付けてくれている・・・


「だ、だめです!!」
「な、なんだよ!」
「困ります!勝手に片付けたりしたら・・・せっかく、
 あなたが口をつけたコップなのに、洗うなんて」


奪い取ってもう一度テーブルに置きなおす。全く、困ります。
直接はまだまだ時間がかかりそうですが、
コップ相手なら、僕だって・・・


「古泉・・・お前やっぱり、気色悪いな」
「ええ!?」


寄るな、とでも言いたげに手を払いながら、
彼は鞄を持って玄関へと急いでいる。
ど、どうしてですか!



「待ってください・・・!」


thank you !

キョンは壊しまくりでしたが、ついに毒牙がいつきにまで・・
乙女なだけで変態ではございません。

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