「・・・なんかお前の部屋、雰囲気変わってない?」



ついに2回目の訪問です。
前回は彼との間接・・・間接キ、スを目論んだばかりに、
しばらく冷たい目で見られていましたが、
10回誘って断られた後、ついにまた、彼が来てくれました。


前回は薄いブルーで統一していましたが、今回は、
グリーンです。なぜなら、彼がパソコンを見ながら
「ハルヒのサイトを見ていると目が疲れる・・・」と
嘆いていたから。


目に優しい緑。彼もこの部屋なら、落ち着くことでしょう。


「そうですか?気のせいだと思いますが」


努力は彼には言葉で伝えない。
それが駆け引きというものです。



続・恋せよ乙女



「別にいいけど・・・喉、渇いた」
「はい、紅茶と麦茶とコーラとオレンジジュースとカルピスと
 サイダーとアイスコーヒーがありますが、どれがよろしいですか?」
「増えてるし」


ど、どうしてため息をつくんでしょう・・・


「じゃあ、コーラで」
「はい!」


妹さんも好きですよね、コーラ。
あなたの家ではよく飲まれるんでしょうか。
僕は森さんに、「骨が溶けるからダメ」と言われて飲んだことはないんですよ。


「どうぞ」
「どうも」


手渡すだけでもドキドキしてしまいます。
こんなことじゃまた進めない・・・。
今日こそは頑張ろうと、心に決めているのに。
何度も何度もイメージトレーニングをしたんです。
授業中も、神人と戦っているときも。
逆に集中力が高まったのを感じたものです。


「古泉」
「はっ、はいっ!」
「ベッド借りていいか?」
「・・・はい?」
「今日、眠いんだよ。いつもはハルヒも授業中寝てるくせに、
 今日はずっと起きてて俺の睡眠時間を減らしやがったんだ」
「はあ・・・」
「19時になったら起こしてくれ、帰るから」


彼は言い終わると立ち上がり、すぐにベッドに横になった。
あれ、これは。これはどういう流れでしょうか?
僕のイメージトレーニングには出てこなかったシチュエーションです。
ベッド・・・ベッド。

ベッド!?
これはもしかして。
キ、キスどころではなく、その先まで、ということでしょうか!?


暗に、隣に来いと言っているのでしょうか、その背中は。
心臓の音、聞こえているかもしれません。
す、すごく、緊張します。
でも、あなたなら。


僕、あなたとなら、いいです。






「あの・・・」
「お前は入ってくるなよ、気色悪い」
「うっ・・・」



希望は無残にも打ち砕かれました・・・。




しばらく脇でじっとしていると、聞こえてくる、彼の呼吸。
規則正しいそれは、彼が眠っていることを示している。
そーっと壁際に向かっている顔を覗くと、

「っ・・・・・・」

見たことのない、彼の寝顔がそこに。


な、なんてかわいいんでしょうか。
すごく無防備です。僕にこんな顔を見せるなんて。
隣に、いるのに。
僕の、部屋なのに。


どうしよう、どうしよう。
すごくキスしたい。
彼の唇に触れたい。
気付かれたらきっと怒られる、
今度は20回誘わないと来てくれなくなるかもしれない。
ああ、でも。


荒い息をなんとか抑えて、彼に顔を寄せる。
近くで見れば見るほど耐えられない。
しても、いいでしょうか。


でも、怒られるのは、いやです。
嫌われたくないです。
気色悪い、とは言われ慣れていますが、できれば言われたくないです。
ああ、でも、したい。
好きです。
好きで好きでたまらないんです。


「うう・・・」


だけど・・・できない。
駄目ですよね。やっぱり。
寝てるあなたにするなんて、卑怯ですよね。
はあ・・・


「わ」

目が開く。
お、起こして、しまいました・・・!
そういえば思い切り、ため息を顔にかけた気がします。



「お前な・・・」


ち、違うんです!
まだ何もしてません!
ちゃんと、改心したんです!


腕が、痛いくらい掴まれる。
お・・・怒ってる?


「しょうがねえな、本当に・・・」
「すみません、すみません、そんな気はなくて」
「どう見たってあるだろ、そんな気が」


腕が引かれて、僕は顔からベッドに着地した。
い、たい。

はっ。
すぐ、隣には、彼の、顔が。
息が止まりそうです。いえ、止まってます。


「キスしたいのか」


あ、
え、
ええと、
それは。


「してもいいぞ」




・・・・え。
して、いいんですか?
ほんと、ですか?


し、します!!!


手を頬に当てる。寝起きだから、暖かい。
すごくドキドキする。
人生で一番ドキドキする。
心臓が壊れそうだけど、大丈夫。
息を止めたままだから苦しいけど、大丈夫。
僕がずっとずっと望んでいたことだから。


唇、近い。
あと、少し。
目、開けてるんですね。ずっと見てるんですね。
僕も、閉じれませんけど。
だって場所、間違えたら困りますから。


ああ、僕、あなたと、あな、たと、
キス、するんですね・・・



本当は、
本当は・・・・・・・・






「おせえ」

「あ、わっ」

隣にいた彼は機嫌の悪そうな声をあげて、
隣から上に位置を変えてきた。


「どれだけ待たせる気だ、お前は」
「す、す、すみません」


だって、僕は、僕は。


「あ・・・・・・・」







あ、
頬と同じで、唇も、暖かい、です。



「タコかお前は、赤すぎ」
「すみません」


でも、あなたも、少しだけ赤くなってるように
見えるのは、僕の気のせいでしょうか?


してしまった。
彼と、キ、ス。彼から。
僕はずっと思ってた。

彼からしてほしい、と。



あああ・・・・・


「おい、古泉!しっかりしろ!」


僕、幸せです・・・・








thank you !
こんな純情すぎるというかアホな古泉は嫌です(お前が言うな)
もうこれで限界だ・・・!


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