今まで通りだ。
何も変わらない。



「いつも助かるわ、ありがとう、古泉君」
「いえ、そんな・・・僕でよろしければ、いつでも」
「古泉くん、また来てね!」
「ええ、また」
「それじゃ、送っていくから」
「では、失礼します」



相変わらず母親と妹には完璧なまでの笑顔を向けるし、
見えなくなるまで、手を振り続ける。

学校でも何にも態度は変わっていないし、
ハルヒに向けるそれも何も変わっていない。





俺が、その腕を掴むまでは、何も、今までと変わらない。




2回目





二人きりになると少し違う。
なんでもないような話を必死に振ってきて、
俺はあまりその話には乗らない。
完全に無視するわけでもないが、完全に別のことを考えているから、
どうしても気のない返事になってしまう。
それでも、古泉は話し続ける。
会話が途切れるのが怖いんだろう、そう思うと、興奮する。




あれから2週間、俺も何事もなかったように、接してきた。









「あの、ここまでで、構いませんので」
「・・・」
「もう、遅いですから。お気をつけて」
「公園、行くか」
「え?」




道を少し奥まで進んだところに、公園がある。
この時間になるともう真っ暗で、灯りは弱々しい。
無言で腕を引いて強引に連れてきて、ベンチに座らせた。表情はあまり見えない。
それでも触れている腕が震えているのは分かる。



「何か・・・話、でも?涼宮さ」
「ハルヒは関係ない。黙ってろ」




二言目にはハルヒか、俺と話すネタはハルヒしかないのか?
これだけ一緒にいて、他に言うことがないのか。
俺が何度そう思ったか、お前は知らないんだろうな。






肩を両手でおさえて、口付ける。
すぐに腕が動いて胸を押された。
一瞬でも、触れた唇は前と同じで柔らかくて、
だけど、外の気温で冷え切っていた。
あの時はもっと熱かった。



「何、するんですか・・・!」



胸を押している腕を引いてやり、もう一度口付ける。
逃げられないように強く抱き締めた。
口の中まで入りたい、だけど、硬く閉じていて入れない。
開けろよ、どうせ、一度、やっただろ。



「やめ、て、ください!悪い冗談は、」
「やらせろよ、古泉」
「何、を・・・あうっ!」



硬いベンチに押し倒すと、鈍い音がした。
夜の公園は人影がない。
犬の散歩くらいなら来るかもしれないが、ここはメインの通りから外れた場所だ。
見られたって構わない、お前がフォローしてくれるんだろ?




頭を打って、苦しげに息を吐いている古泉の頬を押えて、
唇を舐めてから中に入り込んだ。
組み敷いた体がびくりと反応するのが分かる。
ああ、中は、熱い。
古泉の、味がする。
たまらない、
古泉、古泉、好きだ。





「い、いやですっ・・・!」



唇を離すと抗議の声が上がる。
腕を伸ばして体を起こそうと必死だ。
だけど俺が体重をかけて上に乗っているから、うまくはいかない。
それでもこれからのことを考えると、あまり抵抗されるとやりにくい。



「あなたは、どうして、」
「抵抗するなら無理やりやるぞ。どっちがいい」
「こんなことは、やめてください・・・ あなたらしく、ありません」





俺らしい?
何が?

何も知らないくせに、俺のことなんか何も考えていないくせに、
よく言うな。
お前はいつも、俺の後ろにいるハルヒしか、見てなかったんだろ。
俺はずっと、お前のことを見てきたのに。





古泉のことは、好きだ。
一緒にいると、嬉しい。

だけど、時に、すごく、どうしようもないほど、苛々する。
今も、そうだ。







「・・・っ!!」




手のひらが一瞬にして熱くなる。
見下ろした古泉は、赤く染まった左の頬をおさえて、
呆然と俺を見上げていた。






殴った、のか。俺が。古泉を。




「黙ってろ」




自分でも、こんなに冷たい声が出せるのかと驚くような声だった。
そんなに強く殴ったわけじゃない、と、思う。
それでも古泉は、俺の態度で完全に萎縮して、抵抗を止めた。
ただただずっと、震えていた。






もう、順序なんてどうでもいい。
キスして、やれれば、それで、いい。
かじかむ手でジーンズのボタンを外して、チャックを下ろして、
膝の下まで、下げる。弱々しい街灯に照らされた白い肌を見て、
体温が上がるのを感じた。




うつぶせにさせて、唾液で濡らした指で触ると、
泣き声が聞こえる。必死に噛んで耐えている、唇と腕の間から。


そんなに噛んだら、血、出るぞ。
綺麗な、腕なのに。






「い、いたい、ですっ・・・」



前よりも、うまく入らない。
痛いだろうと思いつつも無理やり入れていくと、
泣きながら古泉が痛みを訴えてきた。
それでも、もう一度濡らして、中へ入れる。
逃げそうになる古泉の腰をもう片方の手でおさえつけて。



「う、っく・・・!いた、い・・!!」
「なら、力抜けよ」




できないのは分かっている。
力を抜いたら今以上に苦しくなる。
だから、できないんだよな。
じゃあ、無理にでも、こっちがやるしかないだろ。



おさえている腰に体重をかけて動けないようにして、
指をもう一本当てて、一気に奥まで突き入れた。



「んううううーっ・・・・・!!」




なんとか、入ったけど、これじゃ、無理だ。
もっと濡らせばいいのか?




指も痛くて引き抜いて、ふと、顔を見ると、
うつぶせになっていて表情は見えないが、
乾いた地面が涙で濡れていた。
小刻みに震えながら声や、何もかもを、堪えている。



腰を持ち上げて、指がかろうじて入るくらいのそこに、
舌を伸ばした。古泉の口からは耐えられなかった嗚咽が漏れてきて、
この行為がいかにこいつにとって恥ずかしくて、
嫌で嫌でたまらないのかを、感じさせられる。





俺だって本当は、こんなことを望んでるんじゃない。
もっと大事にしたい。
泣かせたくなんてない。

だけどお前は、こうしないと、手に入らないじゃないか。






柔らかくなるまで舐めて、少しでも、痛くないように、
指で慣らした。最初からこうしていればよかった、
きっとここまで傷つけなくて済んだだろう。
舐めるのは嫌じゃない、古泉の体で、嫌いな部分なんて、何もない。



だいぶ、力も抜けてきた。
古泉の泣き声も、小さくなっている。我慢してるだけかもしれないが。
もう、いいだろうか。
ベンチの上だと、やりにくい。
けど、地面に押さえつけるのは、抵抗がある。



「古泉」




口を離して、髪を撫でた。
外気のせいで冷たくなっている髪は、それでも綺麗で、柔らかい。
古泉はやっと、こちらを見た。







「こ、い・・ずみ」



腕が、真っ赤になっている。ベンチまで血が垂れていた。
顔も、ぐちゃぐちゃで、目も、頬も、唇も真っ赤だ。
殴った跡も、まだ全然消えてない。
泣き止んでなんて、いなかった。





胸が痛む。
こんな古泉を、見たい、わけじゃない。
ないのに。








「上、乗れるか」



動揺を悟られないように、表情も変えずに、聞いた。
古泉は首を横に振ることも、頷くこともせずに、
俺から目線を外して、涙を流した。




腕を引いて体を起こして、腰を持ち上げて、跨らせる。
ベルトを外して、脱いで、濡れた先端を、触れさせた。
血を流している方の腕は力なく垂れ下がったままで、
もう片方の腕を噛んで、古泉はまた声を殺している。



「あまり、強く、噛むなよ」




どうしてこんなやり方しかできないんだ。
形だけなら、抱き合ってるように見えるのに。
どうして古泉に嫌われるようなやり方しか、できないんだ。
好きなのに。
俺はお前のことが、好きなのに。







「うっ、く・・・!!い、や・・・・!!」



腰を掴んで、下ろしていく。
指を入れたときよりは柔らかくなっている、だけど、キツい。
少しずつ押し進めていくと、上から涙が降ってきた。



「こ、い、ずみっ」
「ん、ううっ・・痛い・・・痛い、ですっ・・・」
「・・・・。も、少しだから・・・」



力を入れて、奥まで押し込む。
古泉の体にも力が入って、悲鳴が耳に届いた。
だらりと下がったままの腕が体を引き剥がそうと少しだけ動いて、
すぐに力をなくして、元に戻る。




前にやったときより、奥まで入っている気がする。
少し動かそうとしたら、古泉が弱々しく首を振った。


「動かさ、ないで・・・苦しい、です・・・」
「我慢してくれ」
「・・ひど、い・・・もう、やだ、あ、あううっ!」




このままだって辛いだけなら、早く終わらせてやるから、
痛いのも、苦しいのも、我慢しろ。






泣き声も涙も、聞こえない、見ないふりをして、
ひたすら感覚だけを求めた。古泉と繋がっている、という感覚だけを。


好きだ。
好きだ、好きだ。



言ってしまいそうになって、古泉の腕を払って、
深く、口付けた。
血の味がする。
それでも構わない。
どんな古泉だって好きで、どんな古泉だってキスがしたい、
好きなんだ、すごく、好きなんだ。






「は、あっ・・・古泉・・・い、くっ・・・!」
「い、や、あ、ああううっ、痛い、痛いっ・・!!」




動きを早めて乱暴に打ち付けて、
古泉の体を強く抱き締めて、体の中に、奥に、
全てを出した。強く締め付けられて、気を失いそうになるくらいの、快楽の中で。









引き抜くと、古泉の太ももに体液が伝う。
拭うものが何もない。仕方がないからそのまま、ジーンズを履かせた。
自分のベルトを締めて、さっきのような体勢のまま古泉の頭を
撫でているときに、犬の散歩をしている人が通りかかった。
危なかったな。







「古泉、立てるか?」


しばらく経って、体の震えが治まった頃に、声をかけた。
小さく頷いたので背中に回した腕を離すと、
ベンチから足を下ろして、立ち上がり、



「こ、いずみっ!」



そのまま体を揺らして、倒れそうになった。
あわてて、抱きとめる。




「おい、大丈夫か」
「・・・・大丈夫、です」


押し返してくる腕は、ひじのほうにまで血が伝っているのが、
シャツを見て分かる。もう片方も、同じような状態だった。




「ご家族が、心配されますから、どうぞ、お先に」


いつもは笑顔で言うような台詞も、今日は、さすがに顔を上げない。




「送って・・・いこうか」
「それには、及びません。車で、帰りますから」
「そうか」






電話をかけて、呼んだのは、普通のタクシーだった。
乗って、車が見えなくなるまで見ていたのに、
俺も古泉も、何も言わなかった。
しばらくその場から、動けなかった。







古泉を、手に入れられたんだろうか、俺は。
これで、本当に、合っているのか?
あいつを傷つけて苦しめて泣かせて、それで、いいのか?







分からない。
だけど俺は繋がっていたいんだ。
何もないまま、ただの団員として、ただの仲間として過ごすなんて、
できなかったんだ。






thank you !

久々の痛いの更新です(とは言っても1週間ぶりくらい)
魔法とこれが他と違うのは古泉の気持ちが伝わってきてないとこですかね。
キョンが駄目男ですいません・・・

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