一年の幕開けというものはやはり、特別だ。
毎年それなりに今年はこんな年にしたいなどの決意を持ったり、
親戚を巡って一年の活力となる資金を調達したり、
茶碗に換算したら何杯になるか分からないくらいの餅を食べる。



去年は受験を目前に控えただひたすら合格のみを祈願していたっけな。
おかげさまで高校には無事入学することができたが、
その後がまったく平穏無事とはかけ離れた生活になろうとは、
知る由もなかった。
わけのわからない団に入れられ、
わけのわからないメンツに囲まれ、
わけのわからない事件にばかり巻き込まれ、
ああ思えば昨日まで大変だった、
しかし今新年を迎えるこの時ばかりは全員で円を作り、
年始の挨拶を交わしていたりすると、
悪くなかったなと思うわけだ。
滅茶苦茶で破天荒なハルヒに付き合う毎日も。



非日常な毎日が楽しかった、ただそれだけではない。
俺は去年一年でとんでもないものを手に入れたのだ。
もったいぶる必要もないだろう、
いわゆる恋人というやつである。





まだその呼び名はこそばゆい。
俺の恋人ですなんて紹介したことも一度もない。あってたまるか。
そんな名前で縛られるような間柄では・・・
いやいや、そんなことは、いいか。



今、隣で微笑みながら丁寧に挨拶をしてくる・・・
古泉一樹。
いつき、なんてかわいらしい響きに誤魔化されてはいけない。
こいつはれっきとした男子だ。
いくらきれいな顔をしていようと女子に見間違うことは絶対にない。
それでも俺たちがそんな関係になってしまったのにはあれこれ事情があるのだが、
簡単にまとめると俺も古泉もお互いにいつの間にやら惚れちまったってことだ。




「古泉」
「はい」
「俺の部屋で寝れば」
「・・・はい、そうします」



年始の挨拶を爽やかに終え、それぞれの部屋に戻る途中、
俺はもちろん古泉を呼び止める。
新年だぜ、
元旦だぜ。
ならこのまま寝るわけにはいかないよな?




「無事あなたと新年を迎えることができて嬉しいです」


俺の下心を知ってか知らずか、
あーいやいや、古泉が知らないわけがない。
俺も今はこんな風に古泉を誘い出すことに慣れてきたが、
最初の頃なんか99%は古泉から誘われていたからな。
爽やかな笑顔にまたしても騙されるところだったぜ。

ベッドで横に座ってから嬉しそうに言ってくる古泉を見ていれば、
まあ確かに俺も嬉しくなくはないさ。
顔も声も匂いもやたらと俺の心をくすぐるようなものばかりをもつこいつと、
たとえほかの連中もいるとはいえ、
一つ屋根の下でこうして肩を並べて新年を迎えられるのは、な。




「昨日はお疲れさん」
「ありがとうございます。あなたも、お付き合いいただいて」
「内容はしょうもなかったけどな。いい暇つぶしにはなっただろ」
「あはは、手厳しいですね。もっと頑張ります、僕」



そうだな、と生返事をして、
早速ベッドに押し倒してやる。
わ、と小さく喚いて、その後俺を見てから微笑んで腕を回してくる。
物分りのいい奴だ。好きだぜ、そういうところ。
話は回りくどいのに、こんなときだけやりやすいんだよな、お前は。



「ん、う・・・今年、も、仲良くしてください・・・」
「ん・・・まあ・・・お前次第だな」
「はいっ・・・ふ・・・頑張り、ます・・・」



唇を重ねる合間に新年お決まりの挨拶なんかを挟めてきて、
どうやらこちらのほうが本気で頑張ろうと思っているらしい、
そうだな、
推理ショーの台本を書くよりはこっちの方が向いてるだろうよ。
そんなに頑張らなくてもお前は、いいけど。


いつもより必死に舌を伸ばしてくる。
薄く目を開けて、それをじっと見てやった。
瞼と睫毛がふるふると揺れていて、
俺が少し奥まで舐めてやると指に力がこもってくる。
最初から飛ばしすぎるなよ、
あとな、昨日がそうだったように他のメンバーがいるから
キスだけで終わるなんて、思ってないだろうな?
もしかして、だからそんなに飛ばしてんのか?
昨日だって戻ったらお前とのキスのせいで準備万端の体を
一人で沈める羽目になったんだ、今日は我慢しないからな。


足の間に指を這わせると、やはり驚いたように目を見開いた。



「あっ・・・の、ここでは、あの」
「今日はやるぞ、古泉」
「えっ!?でも、皆さんが近くの部屋にいます」
「知ってる、でも姫始めしないと、まずいだろ」


何がまずいのかと我ながら苦笑する。
どこで覚えた言葉だったかね、これは。
いつものようにアホの谷口から聞いた言葉か?ま、なんでもいいか。
お前とやる理由になるならなんでもいい。



「まずい、んですか」
「ああ、まずいね」
「じゃあ、声・・・抑えます」



本当に物分りがいいな。
前々から思っていたが、たまには反論してもいいんだぞ。
俺、結構今までも、突拍子もないことやらありえないことやら、
好奇心に任せてお前に頼んでるけど、
いつも本当に無抵抗だよな。
たまに、言った俺が「マジかいいのかよ」と引くくらいだぜ。
今年はこいつに少しばかり、
その辺の程度を教えてやらんといけないかもしれないな。


と、
思うのはたぶん今だけで、
結局俺は受け入れられるのが嬉しいからやっちまう。
今だってもう古泉の衣類だけ全て取っ払って、
全身に舌を這わせているわけで。



「誰に聞かれてもまずいからな?」
「はい、分かって、ます・・・ん、んむ」
「こんな状況も、興奮するだろ」


スリリングなことにだな、
この部屋には鍵がついていないんだ。
鶴屋さんの親戚だけで使う予定だったらしく、
鍵なんか必要ないだろうということで、な。
つまりは何かがあってハルヒがどーんと飛び込んでこようものなら、
一発でアウトというわけだ。
古泉、お前が一番気にするところのはずなのに、
素っ裸じゃフォローしようにも出来ないんじゃないか?




「っう・・・は、あ・・・気持ち、いいです」
「うん、お前、すげえ濡れてる、ここ」
「恥ずかしいです、そんな、あっ」
「ちゃんと声我慢しろよ」


キスだけでこんなになっちまう古泉は、とにかく敏感だ。
先端からは零れそうなくらい透明な液体が出てきて、
ぬるぬると親指でまわりに塗りつけて撫でるだけで、
両手で口を塞がないと声が漏れてしまうくらいに感じている。


いつもなら古泉を何度かイかせた後にやっと俺のターンになるわけだが、
今夜はあまりゆっくりもしていられないだろう。
この調子なら古泉の体を慣らすのも楽そうだ。


合宿に行くのにきちんと鞄の中に入れてきたローションを取り出して、
古泉の体にぼたぼたと零す。
なぜ持ってきたかなんて聞くだけ野暮ってもんだ。
古泉も特に疑問には思っていないらしい。
体を震わせて、次にやってくる刺激を待っている。



「あああ、あ、んーっ・・・!」
「こら、声、聞こえるぞ」
「ごめん、なさ・・・」
「悪いけど、時間かけれないから、早めに力抜けよな」
「ん、んうっ・・・はい・・・!」



いつもより多めに濡らして、指で広げるようにして慣らして、
古泉も息を吐きながら俺のことを受け入れる。
その姿を見ていて思う。
この行為はちゃんと古泉のことを考えてやらないと、
辛いだけだよな。
今日はとっととやろうと思っていたが、思い直そう。
何度やったってここはこうするための箇所じゃないし、
気持ちよくたって辛い一面もあるだろう。


毎回、お前ん中出しちまうし。
お前が願ってるというのもあるが、
後処理は大変そうなのに俺もやめられない。
そういう意味でも負担をかけている。



俺、
お前のこと割と、ああ、いや、だいぶ、
好きだからさ。
大事にするよ、俺なりに。



「少しでも辛くなったらやめるからな。言えよ」
「ん、大丈夫、大丈夫です・・・」
「ここ、触ってもか?」
「ひあっ・・・!!で、で、ちゃうっ・・・!」


指がぎゅううと締め付けられる。
古泉ー、それは待て。
お前をもっかい復活させられる時間はない。
俺も今日はとっととイっちまうから、もう少し我慢しろー。


放っておくとすぐに出しそうなそこを強く握って、
涎を枕に垂らして我慢している古泉に、
ちょっとかわいそうだなと思いながらも、
もう大丈夫だと判断して、入れていく。




「んー、んんーーっ・・・!」
「あー・・・古泉ー・・・」
「い、き、たいっ・・・です・・・!」



さっきはよかれと思って中をソフトに刺激させて
いただいたのだが、それがあだとなったらしい。
こんなことなら余計な気遣いなどせずに突っ込んどきゃよかった、
いやそれはそれでどうかと思う。
これでよかったんだ。
古泉、
お前とやるたびに俺はいろんなことを葛藤して、
いろんなことを学んでいくけど、
同じセックスなんか1回もしたことがないな。
もっとお前がいいようにやれりゃいいんだけど、
まだまだ修行が必要そうだ。



とかしみじみ考えてる場合でもないらしい。
古泉、泣いてるし。
ああ、辛いか。
辛いって言えって言ったじゃないか。
言わないって知ってて、言ったんだが。





「おね、がい、いかせて、くだっ・・・あー、あううー・・・!」
「わかった、わかったから、声・・・!」
「いや、いやっ、離して、離して!」
「ちょっ・・・古泉!離すから、お前、」


おい、落ち着け!・・・落ち着くのは無理か。
相当余裕がなくなっちまってるらしい、
ここがどこだか分かってないのか、
古泉の家でやるときのボリュームで声を上げ始めた。
慌てて握っていた手を離して、
中を擦り上げるように動かしてやると、
すぐにベッドの上にどろり、と白濁した液体を落とした。


しかも、
また、声を上げて。



・・・口、手で塞いでやればよかった。
俺の責任だ。




ほぼ同時に俺も果ててしまったわけで、
今誰かが古泉の声を聞きつけて中に入ってきても、
何の言い訳もしようがない。
来るな来るな、誰も来ないでくれ、
散々大晦日まで騒いだんだから疲れ果てて熟睡していてくれ、
俺は天に祈った。



「ふ、えっ・・・ごめん、なさい・・・」



イっちまった後は少しは冷静に戻る古泉が、
状況をすぐに把握したらしく枕に顔をうずめて泣いて謝っている。
いや、俺のせいだ、お前は気にすんな。
とりあえず一緒に祈ろう。




「・・・」


と、古泉の頭を撫で始めた瞬間、
小さなノックの音が聞こえ、返事をする間もなくドアが開かれた。



心臓が止まるかと思った。
入ってきたのは長門で、すぐにドアを後ろ手で閉める。
古泉は気配を感じただけで顔を上げない。
俺になんとかしろってことかな、これは。




「ええと・・・長門・・・・これはだな・・・」



説明しようとするんじゃなかった。
続かない。
古泉から体を離すこともできないまま、長門からも視線を外せない。


長門の口がやっと開いたかと思うと、
意外な言葉をぶつけてきた。



「・・・涼宮ハルヒ達には気付かれないように情報を操作する」



マジか。
長門、
今の俺にとって神様はハルヒではなく、お前だ!



「何故今日ここでリスクの高い行動をしたか私には分からない」


長門にも分からないことがあるらしい。



「今後の情報操作の資料にするため、教えて欲しい」


何の資料だ、何の操作だ、それは。
しかしせっかく協力いただいたのだ、ここは正直に答えよう。


「いや、姫始めって言うだろ、元旦のは。1年に1度のイベントを
 逃すのもどうかと思って」
「・・・正直すぎますよ・・・」


さすがに古泉も俺にツッコミを入れてきた。
ああ、ちなみに長門は俺達がこういった関係であることは、
以前とあることで気付かれ知っている。
それでもここまで正直に言う理由にはならないと、
俺を見る目が言っているな。



「・・・姫始めは1月2日の晩に行うこと。あなたの知識には誤りがある」
「へ?マジかよ!確か、谷口が・・・」



谷口と長門の知識、どちらを信じるかなんて、
コンマ1秒も考えるまでもないことだな。
しかし長門、お前こんなことまで知ってるのか。博識だな。


賞賛の言葉でもかけようかと思ったが長門はそれだけ言うと
ほとんど音も立てずにすぐに部屋を出て行った。
やっと古泉から体を離すと、どろり、と古泉の内股に白い液体が流れる。
それをティッシュで丁寧に拭いてやって、
何やら難しい顔をしている古泉に口付けた。



「そんな気にするなって、長門も気にしてないだろうから」
「いえ・・・それはそうなんでしょうけど・・・」
「明日だってさ、姫始め。知らなかったぜ」
「ということは、明日も、するんでしょうか」


何だ、嫌なのか?
俺は365日やったっていいけど、お前、違うの?



「いえ、そういうことではないですが。
 今日・・・こんな、恥ずかしい思いをして、する必要はなかったな、と・・・」



ま、それもそうだ。
でもやりたかったんだ。
お前とここで。今日。
だってさ、



「仕方、ないですけど・・・」





新年ですから。

thank you !
元旦からほんとにしょうもないエロですみませんー!
もっとちゃんとラブラブなのにすればよかった・・・
姫始めやらせようと短絡的にエロにしちゃった・・・ティヘッ(妹風に)

inserted by FC2 system