抵抗する古泉に頼み込んで、部室の机にその身体を押し付けた。


「こんなっ、ところで・・・」


普段は古泉の家でしかやらない、
それも悪くはない。
古泉の家は居心地がいいし、
ベッドは俺の家のよりもやわらかくて、いい匂いがする。
古泉を押し付けて俺の思うままにして、普段は聞かないような声を聞いて。

だけど古泉の家は少し遠い。
俺の家からも離れている。
ハルヒの話が長引けば、寄る時間が取れないこともある。





今日はそんな日だ。
そしてそんな日に限って、
俺は古泉に触りたくて仕方がなくなった。


ハルヒ達が先に帰ってから古泉に腕を伸ばして、
座っているところを後ろから抱きしめて、
戸惑う古泉の頬に、額に口付けて、
やりたい。と。



何度も首を横に振る古泉を説得して半ば強引にこの姿勢までもっていって、
ローションを手のひらに落としてすぐに古泉の体に塗りつける。
机に押し付けているから顔は伏せたままだが、
見える耳まで真っ赤になっていて、ますます興奮した。



べちゃべちゃに濡らして擦って、
古泉が必死に腕を噛んで声を殺してるのを見て、
ああもう、
古泉もだが俺も限界だ、
そろそろ、と乾いた唇を舐めたときに、






ノックの音が響いた。
部室のドアを3回ほど、少し早めに連続で叩く音。



ハルヒ達は帰ったはずだし誰だろうとは思ったが声をかける気はない、



「だ、誰かが・・・!」



と小声で抗議する古泉の身体を更に弄くって、
そろそろいっちまえよと動きも早くすると、
ぶるぶると足を震わせて我慢しているのが見て取れる。
我慢なんかすんなって、いつも言ってるのに。



「いいから、もう、いきそうなんだろ?」
「っ・・・・・・!!」



わざと音を立てて擦ってやる。
古泉が息を飲む、

もうすぐだ、








「す、涼宮ハルヒっ!いるんだろう!!我らのパソコ・・・
 !?!?!?!?」




扉の開く音。
同時に聞こえる、
どこかで聞いた覚えのある声。






鍵、
かけて、
なかったっけ?




恐る恐る首を向けると、
そこには隣室のコンピュータ研の、部長の姿。
顔面蒼白、とはまさにこのことか。


先ほどの台詞から察するにパソコンを取り返しに来たのだろうが、
突然扉を開けるという行為は、
もしハルヒがいたら飛び蹴りでは済まされなかっただろうし、




俺達にとっても、困る。
大変、困る。





喧嘩






その後。
コンピ研部長には、勝手に扉を開けたお前が悪いと言い張り、
俺達のことを誰にも言わないよう誓約書を書かせた。
誰かに告げた場合はあらぬ罪を着せてハルヒにコンピ研を
潰させるという、今考えれば非人道的なことを記して。
部長が涙目になっていたのは一体どれが原因だったか。


いつもならフォローといえば古泉だが、
その古泉こそ目を真っ赤に腫らして、
俺と部長を文芸部部室に残し、早々に帰宅してしまった。



電話をかけたものの繋がらず、
メールを送っても返事がこない。



家に行って直接話せばよかったのだが、
母親から今夜は寿司だと聞いてついつい足早に帰ってしまった。
食欲に負けたわけじゃなくて、
古泉なら放っといても大丈夫だろうという、
俺の高慢な考えだった。






翌日。
朝から謝りに行こうかと思ったもののいつもどおり遅刻ぎりぎりとなり、
古泉の姿を見ることもなく授業の時間となった。
昼飯一緒に食うか?とメールを送ってみたが、
これにも返事がない。
だんだんこっちも苛々してきた。
いやいや。古泉は悪くない。





3時間目が終わってから先に購買でパンを買って、
もちろん古泉の分もだ、
4時間が終わったと同時に9組まで走る。
古泉はちょうど教室から出ようとしていて、
俺を見たとたんに歩く速度を早めた。

追いかけて手を掴んで部室に連れて行く。
強い抵抗はなかったがいつものような笑顔とか、
照れて俯いているような表情はどこにもなく、
唇を硬く結んで窓の方ばかり見ていて、
部室にたどり着いても同じだ。
目の前に好きなパンを並べてやっても、
手を伸ばすどころか微動だにしない。
飯食わないと5時間目辛いぞ。
何も言わなくていいからせめて食え。
で、腹が満たされりゃ機嫌もよくなるだろうから、
それから和解しようぜ。な?



「・・・・・・」



袋を開けて一口大にちぎって唇に押し当てる、
だけど口を開かない。


もしかして古泉は相当怒ってるんだろうか。
そんな気がしないでもない。
顎を掴んで口を開けさせるとこちらをにらんできて、
それでも構わずに口の中に突っ込んだ。



「怒ってんの?お前」
「・・・・・・」
「何とか言えよ。イくとこ見られたのがそんなに恥ずかしかったか」




目を大きく開いて、
古泉の顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
同時に目に涙も溜まってきて、
あわてて俺から視線を逸らした。


昨日のことを思い出したんだろうな。
隣まで歩み寄ると、
制服をぎゅうっと掴んで俺とは反対に顔を向け、
視線は床に落ちている。
肩に手を当てて、耳元に顔を寄せる。





「昨日の続き、やってやろうか?」







・・・・・・




俺は古泉をよく理解できていなかったらしい。


真っ赤になって俯くから、
昨日を思い出してまたそんな気分になったのかと、
むしろ俺はなっていたので同じだろうと、
そういう気持ちで言ったんだ。




古泉が振り回した腕が顔に直撃して、


「いてっ!!!」


床にしりもちをついた俺を、
古泉は見下ろして唇を震わせた。



「あな、たはっ・・・僕を、そう、いう、
 目でしか、見ていないんですねっ・・・!!」




言い終えてから涙をぼろ、と零して、
袖でそれを拭って、
俺は腕をまた掴もうとしたがその手は宙を舞い、
古泉は走って部室を出て行った。


このまま放置してたら今度こそまずい。
すぐに起き上がって、古泉を追う。
目の前の階段ではなく非常階段の方に制服の裾が
消えていくのが見えて、なるべく足音を立てずに向かった。




古泉の足音も聞こえない。
だけど、気配はする。
扉をそっと開けて様子を伺うと、
階段の踊り場でうずくまって泣いていた。



高校生の男子が、
一人でこんなところで泣いているのはどうかと思うぞ、古泉。
お前いつからそんなに涙もろくなったんだ?
最初にやったときは泣かなかったくせに。
わざと、泣いているところを見たくてローションも使わずに、
少しの唾液だけで強引に入れてやったのに、
手の甲に痕が出来るくらい噛んで耐えただけで、
涙なんか流さなかった。


最近は違う、
普通にやるだけでも、
痛くないようにしてやっても涙を流して抱きついてきて、
前よりも声を上げるようになった。





・・・もしかすると、俺に心を許すようになったのか。
今、思いついた。
そうなのかもしれない。
色んな表情を見せるようにもなったし、
俺が好きだと言ってやれば、
遠慮がちに頷いて、「・・・僕もです」と言うようになった。
僕も好きです、だろ?と聞いても、
それは言おうとしない。
よく分からないところでブレーキをかけているようだ。






「古泉」
「!!!!!」



声をかけると、顔を上げてすぐに立ち上がろうとする。
俺が走って抱きしめる方が早い、
腕の中でもがいているのを無視して強く抱きしめた。




「古泉、まあ待て、逃げるな」
「いや、いやですっ・・・う、うう」
「反省してるって、だから許せ」
「なにが・・・何が反省ですか・・・!」



古泉にもこんなに力があったのか、
と少し驚くくらいの力で押し返してくる、
シャツの襟のところまで涙で濡れていて、
これを見てやっと俺は本気で反省し始めた。



さっきのが口先だけだったというのは、
気付かれているようだし。






「学校でやるときは鍵かける・・・いや、
 学校ではやらないように、するから」


・・・なるべく。



「放課後早めに帰ろうぜ。お前んち寄ってく。
 優しくしてやるよ、な?」
「・・・っ・・・」



あれ?
違う、のか?




そんな、
悲しそうに泣くなよ、
いかん、本気で理由が分からない。




「なにも、なにも、わかってない・・・」




抵抗していた力が弱くなって、
俺を押し返していた腕で顔を隠した。
何か言おうとしていたが、
嗚咽に変わってしまって言えていない。








昼休みが終わりに近づいても古泉はちっとも泣きやまず、
5時間目をさぼってハルヒに怒られるよりは出たほうが
古泉のためにもなるだろうと思い、
抱きしめていた腕を解いて立ち上がった。



「戻るぞ、古泉。トイレで顔洗ってから行けよ」



頭を撫でて立ち去ろうとして、

扉に手をかけると、

やっと、古泉も立ち上がった。



「もう、別れましょう」








「・・・は?」




今、古泉は何と?


別れる?
俺と、お前が?


なんで?





「・・・あなたが、僕を好きじゃないからです」
「何だ、そりゃ。いつも好きだって言ってるじゃないか」
「僕と、・・・したい、から、言っているだけでしょう」




したい、って。



ああ、


やっと理解した。




俺がやりたがりすぎた、ってことか。
まあ・・・そうかもしれない。
お前と二人きりになったとたん触ってるし、
いつだってお前の達する顔が見たいとか思ってるし。


けどそれはお前が好きだから、どんな顔もかわいいから、
見れば見るたび、触れば触るたびお前を好きだと、
そう思うからなんだぞ?



「そうじゃない。本気で、ちゃんと好きだ」
「そんな風には思えません」
「なら、謝る。やりたくないなら、・・・やら、な・・・」



やらないというのは・・・、無理、かな。



「とにかく、お前の嫌がることはしないから。
 別れるなんて言わないでくれ」



両手を掴んで頬にキスをする。
涙を舐めて、腫れている目元も舐めた。



「古泉、大好きだよ」
「・・・・・・・・・」
「大切にする。別れるのは嫌だ」



「・・・・・・もう、いいです」




引っかかる発言ではあるが、
別れるのは思いとどまってくれたらしい。
こんな顔じゃ授業には行けないと、
古泉は5時間目を休むと言ってその場にまた座った。







大切にすると言った手前、
古泉をここで一人きりにするのは違うよな?
そんなわけで手を繋いで隣に座ったが、
すぐに離されて戻るよう言われた。
涼宮さんの機嫌が悪くなったら困りますからと。
そのほうが辛いですと。





古泉がそう願うなら戻ろう。




教室でまた授業も大して聞かずに、
古泉のことばかり考えている。
今日は古泉の家に行って、
触ったり求めたりしないで、
飯でも作ってやって、
その後は・・・




その後は?
古泉と、
やる以外に俺いつも何してたっけ?




会話らしい会話なんて、
長門がいるときに部室でするくらいだ、
ハルヒや朝比奈さんがいれば俺はそっちと話していて、
古泉は、
少し離れたところでにこにこと見ている。




付き合う前に、
古泉は俺と話がしたいと言っていた。
だからなんでもない話をしていた。
毎日毎日、
古泉の家に行っても触ったりせずに。






古泉。


そうか、
俺はお前と話をする時間を、
もっと大切にしないといけなかった。
お前に触るのが、
お前を抱くのが気持ちよくて、
そればっかり求めすぎた。
どこでも、いつでも。





ちゃんと謝ろう。
ちゃんと話をしよう。
古泉、今度こそ反省した。
ごめんな。







早く、古泉と、話したい。
あいつの笑顔、1日1回は見ないと。







授業、
早く終わんねーかな・・・



thank you !

喧嘩ネタを!とリクをいただいて書いてみたんですが、
なんと仲直りが微妙に出来ていません・・・あれれ?
たぶん続きます。。キョンがひどい駄目男ですみません。(いつもですが)

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