近づいてくるあいつの顔が、
気色悪いと思っていたはずなのにだんだん近くにいるのが当然のようになっていた。
うさんくさい笑顔だって、
信用ならないと思っていたのに異常事態が発生したときに見れば安心する。
ああ大丈夫だ、こいつがいれば大丈夫だ、
こいつが何もできなくたって、
笑顔を見て俺が「こんなときにも笑ってられるのか」と呆れるくらいの余裕が出来るから、
安心する。



そう自覚してからは何もかもが好きだと思い始めた。
甘ったるい声を出す唇も、そこから吐き出される回りくどい話も、
柔らかく揺れる前髪も、俺にウインクなんかを飛ばしてくるうざったさも、全部だ。



そんなわけで、言ってみた。
いつものようにボードゲームをして、いつものように俺が勝って、
駒とボードを片付けようとしたときにその手を取った。


「なあ、俺、お前のことが好きなんだけど、お前もそうだろ?」


たぶんそうだと決め付けての発言だったがあいつは駒もボードも盛大に床に落とし、
普段の安物アイドル風スマイルとはずいぶんかけ離れた狼狽した表情になり、
だがその数秒後に見事に取り直し、



「それは人として、だと解釈してよろしいんですよね。実に光栄です」
「いや、男として。というよりは、精神病のような意味で」
「せ、精神病ですか?」
「ハルヒ曰く、な。恋愛って意味だ」



聞いたことのない声を上げて飛び跳ねたかと思ったら悲鳴を上げたらしい。
俺が、こいつのこんな様子も新鮮で悪くない、
などと思っているうちに部室を飛び出していってしまった。
なんだ、あいつの辞書にも動揺って文字はあったんだな。
横を見ると忘れられた鞄が、俺の鞄の横に仲良さそうに並んでいる。
なぜかそんなところにも幸福を感じつつ、二つとも鞄を持ち上げて、古泉の後を追いかけた。






お兄ちゃん






……というようなことが一ヶ月ほど前にあり、
ふらふらと帰り道を歩いている古泉の腕を取って鞄を持たせ、
驚いてまた逃げ出そうとするのを阻み、
もう一度同じ台詞を言ってやると観念して頷いた。顔を真っ赤にして。


古泉は何をするにも照れて、仕方ないから一切を俺がリードしてやっている。
普段の頼れる副団長はどこかへ消えてしまったらしい。
毎日のように部室や非常階段でキスをして、時間が許す日には古泉の家に行き、
それ以上のことだってする。
この一ヶ月、何度もしている、なのに古泉はいまだに慣れない。
いつだって初めてやったときみたいに体に力を入れまくって俺を手こずらせ、
恥ずかしがって声も出さない、顔も両手で覆って見せようとしないから、最中にキスもしにくい。


「ですから、…僕もあなたのことがずっと好きだったんです」


理由にならんだろう、それは。
むしろ反対だろ、ずっと好きだったんだからやりたいんだろうが。


「そんなあなたと…する、なんて、簡単にはできないじゃないですか」



おいおい何だそれは。全く理解できないぞ。
古泉とやるからこそ意義があるのに俺だと思ったら出来ない?
わからん、全くわからん。
それでも無理やりだとか、そんなのは今後の関係にヒビが入るだろうから駄目だ。
これでも古泉のことは大事だと思っているんだ。
だから毎回許可を取るし、気を使っていつも時間をかけてやってる。



今日も、あいつの家に行く日だったな。
たまには俺との行為に没頭する古泉を見てみたいものだ。







「どうぞ、コーラです」
「おう、サンキュ」



遊ぶものなんか何もない古泉の部屋、
わざわざ家でまでボードゲームをやるのも何だから、
いつも飲み物を飲んでスナック菓子を食べて、だらだらと会話をする。
隣で古泉は紅茶のカップを両手で持って飲みながら、
今日あった出来事を俺に話しかけている。
それはもう、楽しそうに。



クラスのなんとかが教師にあてられたときに面白い回答をしただとかそんな話らしいが、
古泉には悪いがお前のクラスの別の奴に興味は持てない、
よってこの話題も全て聞き流させてもらう。
俺はお前にしか興味ないんだ。




「それで僕も笑ってしまって、」
「ふーん……」
「って、え? 何ですか、何……」



長い指。
片手で十分だろ、こんな小さなカップを持つくらい。
わざわざ両手を使うなよ、かわいいから。
自分の指を絡めて、甲を指の腹で撫でてみる。
俺よりも滑らかな皮膚で出来ていて、気持ちがいい。



「綺麗な指してんな」
「え、い、いえ、そんな……」
「キスするか、古泉」
「えっ!!」



そんなに驚くところじゃない。
コーラと紅茶の味が混ざることも問題じゃないから、
大きく開きすぎなその目を閉じろ。
と、言っても今のこいつに出来るとは思えないから、
にじり寄って真っ赤な顔で床を見つめる古泉の瞼に指を当てて、閉じさせる。
動揺しすぎだ、そろそろキスの一つくらいは慣れてくれ。



「するぞ」
「は、ははは、はいっ………」



そんな顔も面白くて、ついついからかってしまうんだが。
言うことでこいつが余計緊張するのくらい、分かってる。
硬く閉じている唇に、そっと押し当てる。

目を開けたまま、力みすぎてぷるぷると震えている古泉を見ながら、
舌を出して舐めてみた。
びくん、と睫毛が揺れて、
握っている手にももっと力が入っているのが視界の隅に見える。
その手を取って指を開かせてまた自分の指を絡めてから、
そこに力をかけて床に押し倒してやった。



「あ、えっ!」
「口開けてろよ」
「っ、んう……! ん、」



驚いて何か言おうとした拍子に、そのまま舌を入れてやって、
噛むなよと心の中で願いながら古泉のそれに触れてみる。


「痛っ…!」
「す…すみません!」


願いはかなわず、触れた瞬間に口を閉じた古泉に思い切り、噛まれた。
舌がちぎれるところだったぞ、このバカ。
何回やったと思ってんだ。いい加減学習しろ。





「ごめんなさい、痛いですよね、ごめんなさい、びっくりして…」
「いいけど…今度は噛むなよ」
「ま、待ってください、ちょっと、待って」



再度口付けようとした俺の体を、古泉の両手が押し返してくる。
そこにあまり力は感じられないが、待ってやることにした。


「なんだよ」
「ドキドキするから、今日はもうできません」
「は!?」



冗談を言っている顔ではない。肩を抱いていた右手を胸に当ててみれば、
まあ確かに俺にまで伝わるくらいに心臓が脈打っている。気がする。


けどそれはない。
理由にならん、俺だってドキドキくらいしてる。
俺のこと本当に好きなんだろうな?
好きなら、俺が相手だからこそやりたいだろ?
ああやりたい、
やりたい、
もう、むりやりやっちま、



「!」


突然、テーブルに置いていた俺の携帯がにぎやかな着信音を鳴らす。
この音は、家だ。
出ないわけにはいかない。大事なところだってのに。


「……俺だ」
『キョンくん! あのねっ、今日のご飯、間に合うように帰ってくるのかって
 おかーさんが聞いてるよー!』
「あー…いや、たぶん間に合わないから、言っといてくれ」
『そうなの? わかったあ』
「悪いな。明日は宿題、見てあげるから」
『ありがとう、キョンくん! それじゃね〜』



短い会話ではあったが、
携帯を折りたたんだ時に古泉はもう起き上がって乱れた髪を正していた。
そして、俺に向かって微笑みかけてくる。


「妹さんですか? 宿題を見てあげるなんて、優しいんですね」


なんだよ、もういつものお前に戻っちまったのか? 立ち直りが早すぎる。


「普通だろ、別に。あいつはどうも要領が悪いからちょっと見てやるだけだ」
「でも、いいお兄ちゃんだと思います。面倒見もいいし」
「んなことはどうでもいいんだよ、
 俺は妹の面倒より、今はお前とキスがしたいし、やりたいんだ」
「や、やりっ…!」



俺はお前のことが好きなんだ、何もかも好きだ。
だからセックスしたいと思うのは当たり前だ。
思わないほうがおかしい。
だってやればやるほどお前を好きになるんだから。




「そんなわけで、今日は時間も出来たし、やりたい」
「う、うう………」
「お前が嫌なら、やらないけど」
「嫌というわけではありません、僕も、…したいですけど、
 ……僕はずっとあなたが好きで、絶対に叶わないと思っていたから、
 なんて言えばいいんでしょうか、恐れ、多くて……」


何だそりゃ。そんな大層な存在じゃないだろ、俺は。
ハルヒなら分かるけどよ。もっと簡単に考えろ、
って言ってもお前の性格じゃ無理か。





今日も無理かと、諦めて古泉の頭を撫でた。
唇を噛んで伏せられた顔を見ると、反省の念が沸いてくる。



「ごめんな、古泉。お前がやりたくないなら今日はいい」
「いえ、そうじゃなくて。……し、しても、いいです、したいです」
「本当かよ」
「僕、あなたのこと、好きです……だから、本当です」



この一ヶ月一度もなかったことだが、古泉のほうから抱きついてきた。
腰に回された腕が少しだけ震えている。
少し心配になりながらもこちらからも抱きしめてやって、もう一度キスをやり直した。
唇も今度はちゃんと自分で開けてくる。
中に入っていくと、腕にぎゅううと力が入って、痛いくらいだ。


俺とやるのが怖いのか? 痛くはないよな?
いつもシーツを取り替えないとどうしようもないくらいローションで濡らしてるし、
古泉が後ろだけでもそれなりに感じるようになるまでは慣らしてやってるし、
怖いなんてことはないはずだ。



「古泉、ベッド上がるぞ」

「は、はい………あの、あのですね、」
「どうした」
「あなたの、こと……お、…お兄ちゃん、て呼んでもいいですか」








………はい?



「あなただと意識しすぎると、緊張でおかしくなりそうで……
 先ほど妹さんと話しているのを聞いて、僕もそう呼んでも、いいかなと、」




そのチョイスはおかしいだろ、古泉。
おかしくなりそうとか言ってるけど、
たぶんとっくにおかしくなってるぞ、お前の頭ん中。





「いや…あいつは俺のことキョンくん、って呼ぶけど」
「え、あれ……そう、でしたっけ、……えっと」
「別にいいけどさ、何でも。お兄ちゃんでいいよ」




「ありがとうございます。……お兄ちゃん、大好き、です」





……………………。




ちょっと待て、胸の奥にものすごいものが湧き上がってきてるんだが、
これ、何だ?




俺は古泉を弟にしたいなんて思ったことはないぞ。
こんな弟がいたら兄貴としてコンプレックスが生まれすぎて確実に兄弟間に亀裂ができる。
妹はこいつによくなついているし、
二人で遊んでる姿を見ていると穏やかな気持ちになるのは確かだ、
けど、古泉をそんな目で見たことは一度もない。
兄弟にこんなことしようとするもんか。




それなのになんだ、これは。うずうずする、
つか、下腹部のあたりが、




「あ、あっ……もう、そんな」
「お前もやりたかったんだな、すげえ、キツそう」
「そんなこと、言わないでください……」




ぐりぐりと押し付けてやると、よかった、古泉もちゃんと反応してる。
お前、変な属性があるんじゃないだろうな。ブラコンとか。
て、兄弟はいないんだったか、てことは憧れてたのか?
兄貴がいる生活に。


俺も憧れてたよ、妹にそう呼ばれることに。
いつの間にかあだ名で呼ばれるようになっちまったけど、
結構好きだった。
実は今でもそう呼ばれたいとひそかに思っている。
お前に呼ばれるのも悪くないかもしれない、今日はそれでいこう。




ベルトを外して膝くらいまで下げて、
全部脱がす時間すら惜しいから、すぐに手をもっていく。
俺の焦りが伝わったらしく、
驚いてその手を止めようと掴んでくるが無言で跳ね除ける。

ここまできて待ったはナシだぜ、古泉。




「お兄ちゃっ…ん、恥ずかしい、です…」
「いいから、力抜けよ。優しいお兄ちゃんに任せておけ」
「は、いっ……」


今まで誰にも頼らずに生きてきたんだろう、
それなら今日は俺に頼りきりになればいい。
頬に軽くキスをしながら優しく撫でていると、
反応も徐々に大きくなっていく。
嬉しくなってにやけてしまうと、
それに気付いた古泉が恥ずかしそうに視線を逸らした。
それでも抵抗はしてこない。
今までは俺も気を使いすぎていたが、今日は少し変えてみようか。
少しでも抵抗されたらやめていたけど、今日は少しは強引にやってみようか。




「んう、う………」
「舐めてやるよ、そのまま横になってろ」
「え! 恥ずかしいです、そんなの駄目です、綺麗じゃないし」 
「お前の体で汚いところなんかねえから。黙ってろ、な」




額とか首筋とか耳元とか、
その辺りを舐めるだけでも古泉の皮膚の匂いとかうっすらと汗の味とかがして、好きだ。
あまり舐めると古泉の緊張が高まりすぎるので途中でやめさせられていたが、
今日はいけそうだな。
舐めたかったんだよなあ、ここ。




白くて無駄に長い足を押さえつけて、
真っ赤になっている古泉を見下ろしてから、
右手で掴んで舌を這わせて、滲んでいる液体を舐め取ってみる。

ああ、そう、こんな味をしてるわけね。
古泉に舐めさせたこともないししてほしいとも特に思わねえけど、
ずいぶん気持ち良さそうだな。
舐めるたびにびくびく震えてるじゃないか。
どんどん出てくるそれも、全部綺麗にいただいておこう。
変な味だけど、嫌いじゃないし。





「あああ、あ、もう、だめ……!」
「ん、イきそう?」
「も、舐めないで、あ、だめ、って……」
「いいから。出しとけ」


どうせお前、またやれるから。
強めに擦り上げながら吸ってみると、
左手を置いていた足が震えてきて、古泉の指が俺の頭を押さえ込んだ。





「おにい、ちゃん、い、っく……」


小さな声だったが、聞き逃さなかった。
なぜなら普段、こいつは絶対にこんなことは言わない。
声自体もこんなに出したことがなくて、
早くイかせてみたいと思って頑張ってみた甲斐があった。
名前じゃなくてお兄ちゃん呼びだというところに尚更興奮している俺は、
どうなんだろう。



すぐに口の中に広がってきた液体に驚いてむせそうになったが、
ここでむせたら古泉の腹の上に吐き出すことになってしまう。
それはない、俺が気持ち悪いと思ってるみたいじゃないか、
一瞬でそう考えて、口を手でおさえて飲み込んだ。


うえ、すげえ、量。


「は、あ……ん……? え、えええ!?」
「あー、お前、顔に似合わず結構出るよな」
「な、な、な、な、何で飲んで、るんですか!」
「だって、口の中に出したんじゃねえか。お前が」



咄嗟に体をまるめて、土下座でもしそうな勢いで謝ってきた。
謝ることじゃないぞ、俺がやりたかったんだから。



涙目の古泉の頭を撫でてなだめてから、
うつぶせにしてこれまた舐めるのは初めての箇所に口をつけた。
これには古泉も激しい抵抗を示したが、


「お兄ちゃんに飲ませたお礼に舐めさせなさい」



と言ってやると、お礼になるんですか、と目を伏せて呟いて、
俺が頷くとおとなしく俺の言うとおりに体勢を変えた。


普段ならローションでこれでもかというほど濡らすわけだが、
俺が舐めるだけでなんとかなるものだろうか。
なるのであればやってみたい。
ただどうにも、古泉の体が硬くなっちまってるな。
枕を噛んで、シーツが破れそうなくらい強く掴んで、
相当恥ずかしいんだろう、
髪が揺れるたびに見える耳が真っ赤に染まっている。



そして合間に何度も俺を呼んでくる、
繰り返しになるが普段は絶対に呼んだりしないのだ。
もういい加減認めてしまおう、お兄ちゃん呼びな、ベストアイディアだ。
これ、すごく、いい。


太ももからひざまで垂れるくらいまで唾液で濡らして、
指も中に進めていくと、いつもよりも枕元から漏れてくる声が大きく耳に届く。
気持ちいいんだよな、古泉。
ああよかった。
舐めるのに集中していて分からなかったが、また復活も遂げている。
これだけで満足してしまいそうになるぜ、
いやいや嘘だ。
俺の我慢もそろそろ限界みたいだな。




「古泉。もう、…いいか」
「っふ、う……はい、はいっ……いいです…」
「ん。体、楽にしてろよ。怖くないから」


心なしか、いつもより余裕のある俺。
何せ、お兄ちゃんだからな。





「あ、ああ、あ、ゆ、ゆっくりっ………!」
「分かってるって。ほら、痛くないだろ、な」
「あう、う、おにい、ちゃんっ……好き、好きです、好き…」



おー古泉、頼むからあまり興奮させないでくれないか。
もたなくなるぞ。
深呼吸して心を落ち着かせて、ゆっくりと侵入して、
ゆっくりと動かしていく、このくらいのスピードであれば大丈夫だろう、たぶん。
しばらく緩やかに動かしてから、古泉の耳を甘噛みして、


「なあ古泉、気持ちいいか?」



いつ聞いても答えが返ってきたためしのない質問をぶつけてみる。



「はっ、あ、お、にい、ちゃん……気持ち、いいです……」
「おお……」






不覚にも感動してしまう。なんてことだ。
こいつが正直に言うとは。
そしてやっぱり気持ちいいのか、よかった。
ちょっと今まで不安だったんだぜ、お前全然答えないからさ。



さて、俺もいつもなら、そう、いつもならもっと我慢できるんだ。
俺のプライドに関わる問題なのでそこは強調しておきたい。


だがしかし、今日は無理だと思わないか。
ああ、
できることなら古泉の声を聞きながら古泉の感じている顔を見ながら、
ラストスパートを駆けたいものだ。



「んうっ……!」
「悪いな、苦しかったら言ってくれ」



うつぶせから仰向けに変えて、周辺をぐりぐりと擦ってやって、
涙やら涎でぐちゃぐちゃになった顔を隠そうとする古泉の腕を頭の上に押さえ込む。



「やっ……! やだ、手、やだ……お兄ちゃんっ!」
「わがまま言うんじゃありません。ちゃんと見せろ、かわいいから」
「うう………はい…………」



万歳、お兄ちゃん、万歳。


オフクロ、俺を長男に産んでくれてありがとう!





「ふあ、あ、お、にいちゃ、い、いっちゃうっ……!」
「こい、ず、みっ……俺も、俺も、もう……」
「あ、あうう、んうううー…………!!」








事後、なぜか相当落ち込んでいる様子の古泉を、俺はしばらく抱きしめていた。
俺はというと勿論かなりの上機嫌である。
今日だけでいくつの初体験を経験できただろうか?
赤飯でも炊いてしまいたい気分だね。




「恥ずかしくて死んでしまいたいです……」



腕の中でようやく言葉を発したかと思えばそんな発言かよ。
俺は今まで生きてきた中で一番充実した時を過ごせたと言っても過言ではないのに。
まったく、何だって古泉相手にこんなに夢中になってしまうんだか。


……まあ仕方ないな、俺はこいつが好きらしいから。




「お前が死んだら俺も死ぬぞ」
「えっ!? 駄目ですよそんなの、あなたが、死ぬなんて、」
「だろ? だからお前は素直になってりゃいいんだ」


俺はお前がいない世界なんて興味ないんだからさ、と、
古泉の先ほどまでの素直さに感化されたのか
ついそんな恥ずかしいことを言ってやると、
また真っ赤になって恥ずかしそうに顔を伏せた後に、
上目遣いで俺を見て微笑んできた。



お前、こういうのが嬉しいわけね。分かったよ。



お前がお前なりに頑張って俺に素直に甘えられたら、
俺も普段は言わないような恥ずかしい台詞だって言ってやるさ。
だから恥ずかしがる必要なんかどこにもない、
これからも呼びたいなら何度でもお兄ちゃんと呼んでくれて構わない。
お前が心おきなく感じられるんだったら、むしろそう呼んでくれ。







おわり。




thank you !


没原稿らしいカオスさでお送りし・・た・・・
読み返すとめちゃくちゃっぷりに死んだ!

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