※えらく鬼畜です
※キョンが酷いです
※バイオレンスです






バレンタインには、チョコレートとストラップを贈った。
閉鎖空間での仕事を終えて、帰り道に見つけた物だった。
当日は渡す機会がなかったから翌日、部室に二人きりになったときに。



チョコレートは、たぶん食べてくれなかった。
彼女たちのように手作りではなかったし、
…男がこんなものを買ってくるなと、
いつもに増して冷たい声で言われた。
僕はすごく後悔して、
僕たちはただ体を重ねるだけの関係なのに、
勘違いをしているように思われたかもしれないと後悔して、
頬を叩かれても何も言えなかった。


僕が、悪い。



ストラップも、どうなったか分からない。
ただ一度も、携帯電話についているのは、見たことがない。
気に入らなかったかな。
あなたに、似合うと思った。
だけど違った、みたいです。






チョコレートみたいな甘さなんてどこにもなかった。
普段と変わらず、彼は僕を冷たい床に押し倒して痛いことばかりしてきた。
痕が残ると厄介だから、顔はそこまで強くは殴らない。
僕が必死に抵抗したり、逆に意識を失いそうになったときだけ、強く殴られる。
真っ赤に腫れた頬を見ると、いつも涙が出る。
ああ、彼は本当に僕が嫌いなんだ、と実感してしまうから。




0314






「終わったら、残ってろ」



朝比奈さんが着替えている間、ぼそりと小声で伝えてくる。
震える手を握り締めて、笑顔で頷いた。
三人へのお返しは終わって、
涼宮ハルヒも「まだまだだけど、あんたたちの心意気は認めるわ」との
言葉よりは上機嫌な笑顔を見せて帰っていった。
彼は、そんな彼女を見て満足そうに笑っていて、
今日は何もなく帰れそうだと思って、いたのに。


何をされるんだろう。
先週蹴られた痕がまだ腹部に残っていて、ずきずきと痛む。
真っ青になっていた当日よりはましだけど、
もしまた同じ場所を蹴られたら…、
しばらくは治りそうにない。
お腹、蹴られないといいな、
出来れば顔も、傷つけないでほしい。
彼女たちが幸せそうに笑っているのを見て久々に僕も穏やかな気持ちになれたから、
ほんの少しでもこの気持ちを保ちたい。



「ごめんなさぁいっ、時間がかかっちゃいましたっ」
「平気ですよ、朝比奈さん。転ばないように帰ってください」
「もう、キョンくんったら…大丈夫です!
 それじゃ、今日はありがとう、キョンくん、古泉くん」




足早に部室をあとにする朝比奈みくるを見送ってすぐ、
僕の背中が押される。
彼と二人きりの部室の中は、
…普段より暗くて冷たい。





最近何があったのかは分からないけど、
余計暴力的になった。
殴られるのも蹴られるのも当たり前のようにされて、
痣が数え切れないほど刻まれた。


怖い。
学校だろうと彼の行為は、容赦ない。





椅子に座るよう促されて、
震える足がもつれて転ばないように気をつけて歩いた。

ぎし、と椅子の軋む音。ぎゅっと目を閉じる。
叫んだり、抵抗したら余計ひどくなる、
何をされても耐えて受け入れよう、
大丈夫、きっと大丈夫、大丈夫。



「古泉」



名前を呼ばれたら顔を上げて目を開く。
どんなに、怖くても。


「はいっ…」




すぐに泣いたら嫌がるから、返事をしたら唇を噛んで泣くのを堪える。


いくら大丈夫だと言い聞かせても、
既に怖くて泣きそうだ。









「これ」
「……?」
「やるよ」




目の前に差し出されたのは、
真っ白な紙袋。
中を覗くときれいな紙に包装された細長い箱が入っている。





「え……?」
「ホワイトデーだからな」





「あ……あ、あっ………」







なみ、だが。


一気に溢れて、
止まらない。


我慢していたのとは違う、


怖いから、じゃない。
彼が、
僕のために?



「あり、が、と………ごっ……」



だめ、
声にならない。


僕のために。
わざわざこんな、お返し、を。
二人きりになったらひどいことをされると勝手に思い込んで恐怖に震えていた、
こんな、僕なんかに。





嬉しい。
すごく、嬉しい。
お返しなんて期待してなかった。
あなたはちっとも喜んでいなかったし、
殴られたから。


だけど本当は、少しは喜んでくださったんですよね?
だからこうしてお返しを準備して…。





「いつまで泣いてる気だよ」
「ごめ、なさいっ……嬉しくて、こんな、もらえるなんて…」




あなたの表情もいつもより柔らかい。
咎める声だって、優しい。



もしかしたら戻れるかもしれない。
こんなことになる前の関係に。
僕にも優しかったあなたに、また、会いたい。




駄目かな。
そんなのは、わがままかな。
それならやっぱり、今だけでもいい。
気まぐれでもいいから僕を殴らないで、
ひどいことを言わないで、




もし出来るなら、
抱き締めて、ほしいです。






隣に立つ彼に腕を伸ばそうと、また顔を上げる。
その前に言われた。




「中、見ないのか」





中…
こちらの、ですね。




たとえ何でも、
飴玉一つでも、
僕は嬉しいです。





「開けて、いい…ですか?」
「ああ」



涙を拭った手だと、
包装紙が濡れてしまう。
あなたからもらうもの、
何だって大事にしたい。




ティッシュで水分を拭き取って包みを開ける。
細長い真っ白な箱が出てきて、
上から開けた。





…
……
………?




これ…………






何?




「今から使ってやるよ。ほら、さっさと脱げ」
「え……、え、え………?」
「聞こえてただろ?早くしろ」





急激に、体温が下がる。
震えが全身に戻ってくる。



どういう意味か分からない。
彼は、
僕に優しくしてくれた、はず。
今日は、
何も怖いことなんて起きずにいられるはず、じゃ?




冷たい視線じゃないのにいつもより怖くて、
震える手を叩いてネクタイを外す。
脱げ、とだけ言うときは、全部。
部室で、全部脱がなきゃいけなくなるのは、恥ずかしくて一番嫌いだ。
すごく嫌で嫌で仕方がない。
だけど、彼に殴られる方が、嫌だ。


さっき溢れたせいで涙がすぐに出てきそうになる。
噛み千切りそうな力で唇に歯をあてて、
下着を床に落とす。
惨めで、情けなくて、悲しい。



「古泉」


顔、上げたくない。
こんな僕を、見られたくない。
でも、上げなくちゃ。




「っ……」
「お前がもっと中で感じるようにしてやるから」
「!!そ、んな、」
「これ、探すの苦労したんだぜ?
 こっちのスイッチで三段階、強弱を変えられるらしくてな」





箱からそれを取り出して、彼は嬉しそうに笑う。


強、弱?
分からない。
何に、使うんですか?
中?
僕に、それを?
あなたじゃなくて、
僕はそんなもので犯されるんですか?



「……、あ、うう………!!!」



自分の中で理解したとたん、涙が我慢出来なくなった。
口を押さえても止まらない。
唇を噛みたくても、震えすぎて力が入らない。






何も、変わらない。
元に戻るわけ、なかった。
今更だ。
ここまできて今更、
どうしてそんな期待をしたんだろう。
ずっとひどいことしかされなかったのに、
優しくしてもらえるなんてどうして思ったんだ。


彼は僕を傷つけることしか考えていないって、知ってたのに。





「泣くな」
「ご、ごめ、な、さっ……っく、うう、んうう…」
「泣くなって言ってんだ」




指に歯をたてる。
痛みで涙を止めようと、
血の味がしたけど構わずに続けた。
だけど。



「あうっ…!」



前髪が引っ張られて、
指を抜かれる。
くる、と思ったすぐあとに、
頬に焼けるような痛みを感じた。



「ご、め、なさい、ごめん、な、さ」
「言うことを聞けなかったから、あと2回だ」
「んううっ!!」


左にさらに2回、
強い衝撃が加わる。
見なくても、真っ赤に腫れていることが分かるくらい、熱い。






床に押し倒されて、
腰だけ持ち上げられる。
冷たい潤滑剤を乱暴に塗りたくられて、
何も慣れていないのに指がニ本、無理やり侵入してくる。



痛い。
痛い、痛い、痛い。
口には出せずに、
頭の中で叫ぶ。
ここからずっと、
僕は何があっても耐えなければ。
気が狂いそうになるくらいめちゃくちゃにされても、
決して意識を失ったりしないで、
耐えなければ。


「力抜け、じゃないと切れる」
「は……い、はい…っ」


力を抜けばさらに奥まで容赦なく入ってくる。
痛くて、苦しくて、大嫌いだ。


「あぐっ…!!」
「そうだ、そのまま緩めてろ」
「はいっ…は、ああ、ううーっ…!」




濡れた指が、中をぐちゃぐちゃに撫でてくる。
変な感覚に襲われる場所は、
触れられただけで一気に体が反応して、
気持ちよさなんかどこにもないまま、
射精させられる。





また、今日も。



「ひああっ…!!!」
「一回目」
「はあっ、あ、ああ」





床が白く染まる。
量は少ない。
こんな無理やり達せられるようになってから、
僕は一度も気持ちが良くて出すなんてことはなくなった。
だけど体は、反応させられる。
苦しい。
辛い。
やめてほしい。
怖い、
怖い、
今日は、
何回?
何時まで?
どこまで?







「ああうっ!?な、な、に…っ!」



指を抜かれて、
代わりに押し当てられたのは冷たくて堅い、何か。
彼が僕に渡した、
あの、変、な、



「やああああっ…!!」
「へえ…お前、入れられるとこうなるのか」





一気に体に押し込められて、
悲鳴を上げたから足を強くつねられる。
そのまま大きく開かされ、さらに、奥まで、入ってくる。
怖い、怖い、怖い、
彼の温度を感じない、
体に異物が入ってくる恐怖で涙が止まらない。
彼なら、
どんなに痛くても、構わない。
辛くても体が繋がるのは嬉しかった。
たとえ物みたいな扱いを受けても、
僕のことを何も考えずにただしたいだけでも、
僕を選んでそうしているなら、よかった。



だけどこれは違う。
怖い、
怖い、
やめてほしい、
やめて、
やめて、



「くだ、さ……」
「何?」
「やめ、て……!」



ずっと封じていた言葉で、訴えた。
抵抗したときの暴力よりも、もっと怖い。
こんなの、嫌だ。





僕じゃ、
なくたって、
いい、んですか?





「やめない。…この辺、擦るといいよな」
「いやああっ!!や、やだやだ、そこ、いや…!!」




また、あの場所を。
堅くて気持ちの悪いものが、
強く押してくる。
痛いくらい強く擦られて声を上げる間もないまま、放出した。



「二回目、と」
「はっ……は、う………い、や……」
「こんなんでへばるなよ」




かち、
と乾いた音を合図に。



呼吸が整うよりもずいぶん早く、
体の中のそれが、うねりだす。


喉が痛くて、
それでも掠れた叫び声を上げた。





彼は、
聞いてくれない。
僕の言葉を。
いやだ、
やめて、
くるしい、
かなしい、
もう、
おかしくなってしまう、
そう言ったって答えは一つだ。




おかしくなればいい、と。





「いや、っいや、あ、あう、い、痛い、痛い痛いっ…!!」
「まだ弱だ。我慢しろ」



左手で頭をかきむしって、
右腕を噛んで口を塞ぐ。
それでも体内を異物にかき回される痛みには、届かない。



彼の膝が、それをさらに深くに進めようと押してくる。
同時に腕を取られて、ネクタイできつく結ばれる。
抵抗しないと決めてから、腕を縛られたことはなかった。
今、こうして縛るのはきっと、
僕が本能的に恐怖を感じて抵抗するのを、防ぐためだ。





「いああああああ!!!!」
「中。結構、効いてるみたいだな」
「くる、し、は、あ、息、でき、なっ」





叫ぶのと泣くのと、それ以外に息が必要なんて、無理だ。







酸素が頭まで届かない。
視界が霞む。
ただ激しい痛みだけ、わかる。





いけない、
このままでは意識を失ってしまう、
彼に、
怒られる。




床に頭をうちつけて、意識を戻そうと、する。
加減をしちゃ、だめ、
強く打って、
はっきりさせなきゃ、



「は、あ、あ」



くらくらするけど、
すごく苦しいけど大丈夫、
意識さえ、はっきり、してれば、







「バカ、やめろ」
「ひう……」



四回目、をしようとして、頭を掴まれる。
同時に体の中からも、引き抜かれた。
まだ呼吸は出来ない。
彼がどうしてやめたのかも、わからない。





あなたが望むようにしました、
どこか、違いましたか?
また、
怒られてしまいますか?




「あ、あ、ご…め、はあっ…」
「血、出てる…古泉、息できるか」
「ごめ、なさ、あ、あう、な、さ、」
「いいから、落ち着け」






何を言ってるか、
聞こえているのに、
理解ができない。
ちゃんと答えなきゃ、
謝らなきゃ、
また嫌われてしまう、
怖い、
嫌われたくない。





なぜか背中を撫でたままの彼の腕は、
僕に次の痛みを与えようとしない。
やっと呼吸が戻ってくる。
視界がはっきりしてくる。
それでも涙で滲んではいるけど、
さっきよりは平気だ。





「古泉、わかるか?俺のこと」
「はあっ、はあ、はい、わか、ります」
「・・・まだ、キツそうだな」
「だい、じょぶ、つづ、きを・・・」





まだ、できます、
頑張るから、
嫌いにならないで、
ちゃんと我慢します、
何をされても我慢します、




「無理だろう、もう、今日は」
「平気です、僕、僕、頑張り、ます、」





頑張って、笑って見せる。
なんでも、してください。
あなたが望むこと。
僕はそのためにここにいる。

そのためにあなたを大好きになった。




「うれし、かった、から・・・」





たとえ僕を壊すためのものでも。
あなたが僕に何かをくれたこと。
一瞬でも、
幸せな気持ちにさせてくれたこと。







「あ、ああ、あああ」




今度は、
暖かいものが、入ってくる。





痛みは変わらない。
腕を縛られたままで声を我慢することもできない。
でもあなただから。
怖くない。
今までは、怖かった。
奥まで貫かれてめちゃくちゃにされるのが怖かった。
でももう、怖くない。
他に怖いものを、知った。
あなたなら。
痛くても苦しくても、怖くはない。












冷たい床に、横たわる。
解放された腕には感覚が残らない。
直接殴られはしなかった、
蹴られもしなかったけど、
床に押し付けられたせいで腹部が痛む。
頭も、
床に血が垂れたところを見ると、
手当てをしたほうがいい怪我をしているらしい。
ぐちゃぐちゃにされたところは、
もっともっと、痛い。



意識を失わなくてよかった。
狂ってしまわなくてよかった。
心は、まだ、壊れてない。
あともう少し、
彼が満足できるまで、もつかな。






「古泉」



「はい・・・・・・」



床から頭だけ持ち上げて、
既に制服の乱れを直した彼を向く。
お帰り、ですか。
帰り道は暗いから、
どうかお気をつけて。
部室なら、
彼女達に気付かれないように、
全て僕が片付けておきます。





腕が、引かれる。
体を起こされて、
僕の頭が、彼の胸に、当たる。


いけない、
あなたの制服を汚してしまう、



入らない力をなんとか入れて、
体を離す。
そうですね、
僕が横たわったままじゃ、
ちゃんと掃除するかどうか、不安になってしまいますよね。


できます、僕、
今までも出来ていたから、
今日もちゃんと、出来ます。




「は・・・・・・」



あ、れ?



また、体が床に落ちる。
殴られた方の頬が床に擦れて、そこも痛い。



まだ駄目だ、
起き上がれない。
もう少し、少しだけ。このまま。





「おい、寝るな」
「・・・・・・ふ、・・・」




ああ、眠いのかな、僕。
体力、最近、なくなってしまって。
体育も最後まで出席出来なくなってきたんです。



瞼が重い。
そんなに眠たいわけじゃないのに、
体全体も重い。








何度か大声で呼ばれたけど意識ははっきりしない。
殴ってくれれば、戻ったかもしれない、
だけど新たな痛みは加えられなかった。









「・・・・・・う」


意識が戻ったとき、
僕は自分の家のベッドの上にいた。
部屋は真っ暗で、伸ばした手でカーテンを開けても明るさは変わらない。
真夜中。
僕、どうやってここまで?




彼が、
連れてきて、
くれた・・・?






体を起こすとあちこちがずきずきと痛む。
制服も、着せてくれている。
頭に手をあてると、乱雑にガーゼが貼ってあった。
僕じゃない。
こんな手当ての仕方は、彼だ。
どうして?





当然のように書置きも、携帯へのメールもない。
彼の真意を、僕から聞くことはできない。
想像するしかない。
あまりに僕が酷かったから、
呆れて連れてきてくれたのかな。
明日は早めに学校に行って、
部室を掃除しよう。






瞼がまだ重たくて、洗面台に向かう。
電気をつけるとまぶしくて目がくらむ。
顔を洗ったらまた眠ろう。
起きてから、また考えよう。



「?」



腰をかがめたとき、水をすくおうとした手に、何かが当たる。




顔を上げて鏡を見ると、


首元に見たことのないシルバーの飾りが、光っていた。





錠、
がついている、ネックレス。




僕の持ち物じゃない。

裏には、英語で短い単語が書かれている。






支配欲、
という、意味の。






・・・彼が、僕に?




もしてかして、これは、
本当の、ホワイトデーの・・・?






膝の力が抜けて、立てなくなる。



手の中に抱きしめながら、


もう出なくなるまで、涙を流した。








僕は、これだけで、生きていける。
もっと、頑張れる。

もう、
何があっても、平気。



あなたが、
それを望んでくれているなら。





thank you !

おにちくすぎる!
すみません!
プレゼント分かりましたか・・・!

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