「は?何だって?」
「だからですね、その」






昼下がりの部室に、俺と古泉の二人きり。



昼食は僕が準備しますから、部室に来ていただけませんか。




そんな軽いメールをもらい、
タダで昼飯が食べられるならいいかとやってきた。
俺が食べ終えるのを今か今かと待っていた古泉に、
やっと用事は何かと聞いてやれば、
ずいぶん長い前置きをしたあとに真っ赤になって何かを言った。
前置きはほとんど聞いていなかったので忘れたが、
その何か、は、はっきり聞こえていた。
ただあまりに常識を外れている。
古泉が本気言ったとはとても思えない。
ハルヒから罰ゲームでも与えられたんだろう。
それなら少しだけ加担してやろうと思い、再度聞いてやる。





「僕の、舐めて、くださいませんか」
「だから何を」
「お・・・・・・お、ちっ・・・」





さっきは言えたくせに、今はもうダメらしい。
落ち着きなく指を絡ませて、
何度も言おうとしてはやめて、
そのうち泣きそうな顔で頭を抱えてしまう。







「お前は男のくせにチンコすらまともに言えんのか」
「わ、わ、わ!」






そりゃお前が谷口みたいに下ネタを嬉々として話す姿は想像できないが、
それにしたって潔癖すぎるだろう。
俺はお前のそういうところが気に食わんのだ。






逆に言えばそれ以外は割と気に入っている。







当人には言ってないし言う予定もないけどさ。








人助け






「だめ、でしょうか」






さして時間を置かずに古泉がまた問いかけてくる。
ハルヒの罰ゲームはどこまでがゲームなんだ?
ああ、あいつのことだからゴールなんて設けちゃいないだろう。
しかし、お前のそんな表情を見れば十分なんじゃないか?





「?」



辺りを見回し、ドアをあけて廊下も確認した。
古泉は不思議そうに、やや熱っぽい眼差しを向けている。




「で、ハルヒはどこに隠れてるんだ」
「え・・・涼宮さん、ですか?こちらにはいらっしゃいませんが」





言いながら、俺の背後にすり寄り肩に頭を乗せてきた。
いくら後ろからといえど、顔が近いぞ。





「罰ゲームか何かだろ?ハルヒが隠れて見ているなら、」
「そんなのじゃ、ありません。涼宮さんは関係ないんです」







関係ない?
ハルヒは?






「は、って、じゃあ誰なら関係あるんだよ」
「うっ・・・」
「正直に吐け」



古泉の指は制服の裾をつまんで引っ張ってきて、
肩に当たる頭はいやいやと横に揺れている。

俺は振り返り古泉の顎を持ち上げてやった。






「あ・・・っ」
「吐けよ」



やや乱暴なやり方だというのに古泉は逆に嬉しそうに頬を染めて、




「・・・・・・ゆ、たかさんが、」
「は?」
「裕さんがくれたジュースを飲んだら、こんなことに、」







つまりはこういうことらしい。


昨夜、裕さんが家にやってきた。
差し入れにジュースをもらったが、
アイスを食べたばかりだったので飲まなかったと。




で、今朝飲んでから学校に来たらたいへんなことになり授業どころではなかった。
頑張って一人で抜こうとしたが学校でやるなんてという罪悪感から集中できない。
しかし何とかしないといけない。
女子に一時の処理をさせるにはリスクが伴う上に古泉の性格が許さない。
で、頼めるような相手は俺しか思い浮かばなかった、と。





裕さんが古泉を狙ってたのか(マジで特殊な性癖の持ち主だったのだろうか)、
からかったのか(まあ、こっちの可能性の方が高いだろう)は分からんが、
古泉が本気で困っているのは分かった。




何せ、俺が少しからかってやるかと話している間、
耳や頬に指を滑らすだけでびくびくと体を震わせながら息を吐いて、
掠れた甘い声を漏らしたくらいだ。
だんだん俺までおかしな気分になる。
自分が撫でただけでこんな反応を見せられれば、
いくら相手が男といえど、顔はこの通りいいわけで、
少なからず俺はこいつを気に入っていたし、






「がまん、できない、です」
「・・・・・・」
「してくださいっ・・・」







止めることが出来たのに、
抱きついてきていつもより近い距離まで顔を・・・、
0ミリまで近付けられたが、抵抗する気にはならなかった。





セカンドキスは触れるだけに留まらず、
古泉は焦って舌を入れてくる。



むちゃくちゃだ、
どうせこいつはキスもしたことがなかったんだろう。
俺が初めてでいいのかよ。
駄目だろ。
普段真面目な奴ほどおかしくなっちまうもんかね。





「ん、んむ、はう・・・」
「こらこら・・・」





息が苦しくなって唇を離せば次は手を下に持っていく。
あー、これはこれは。
お前、いつからこうなってた?
抜きたいのに抜けなくてずっとこれか。
さぞかし辛かっただろう。
しかしだからといって俺がしてやっていいのかという疑問が湧くわけで・・・








「僕も、しますから」
「へ?」




自分のベルトを外しながら古泉は意味不明の言葉を放った。
その前に、待て。
ここでやる気か?
長門は・・・空気を察して入ってこないかもしれないが、
朝比奈さんがうっかりひょっこり顔を出す危険性があるのではないか。






「大丈夫です、鍵かけましたし、もう、授業始まりましたから」
「何! い、いつの間に」
「大丈夫です。しましょう」






なぜか本日の古泉には妙な自信を感じる。
溢れる性欲がこいつの気を大きくしているのか・・・と考えていると、
するする俺のベルトまで外している。







僕もする、って、あれか?
舐め合うっことか?


そりゃまずいだろ。
苦しんでいるお前を抜いてやるくらいなら出来なくはない、
人助けだとでも思えばいい。
しかしお前までしてきたら、完全な変態だ。
だいたいいくらお前を気に入っているからといってお前では勃たない。
ベルトだけは外させて、脱がせようとしてきた手は止めた。






「?」
「いいから、お前が脱げ」
「は・・・はいっ」





いちいち喜ぶなって。
舐めないぞ。
手くらいなら貸してやる、それだけだ。







「ぐ・・・」
「お願い、します」







いそいそと膝まで脱いで、
いくら気が大きいといっても恥ずかしがってまくりあげたシャツを噛みながら、
古泉はその姿を俺に見せてきた。



独特のにおいがする。
俺とはまた違う。
意外と嫌な気分はしない・・・かもしれない。
すっかり上を向いて我慢した証で先端を濡らして、
古泉の綺麗な顔にもこんなもんがしっかりついているんだなとなぜか感心したりして、
やたら色が綺麗なところは実に古泉らしいが、
なんとも言い難い空気になった。





今更、後には引けない。
一度出してやれば古泉も我に返るだろうし、
借りを作るのもいいだろ、何かと使える奴だからな。






床に座る古泉の背後に周り、腕を腰に伸ばして撫でる。





「んっ・・・!」





それだけで気持ちよさそうな声を上げて唇を噛んだ。





すげ、敏感。




「古泉・・・」
「はぁっ・・・み、みは・・・」
「好きなのか?」
「あっ!わ、からない、ですっ・・・でも、気持ちいい・・・」
「ふーん」






耳くらいなら舐めてもいい。
耳たぶを軽く噛みながら舌先で舐めていると、
腰をくねらせて声を上げた。
仕方がないのでそれに指を絡ませて、
ゆっくり上下に動かしてやる。
すぐに先端から体液が指までこぼれてきた。








「あーっ、あ、うう・・・!きもち、いいっ・・・!」
「そっか」
「もっと、強く、してください・・・っ」
「ん」







男の喘ぎ声など聞いても萎えるだけだと思っていた。
よっぽど、
声を出してきたらネクタイで口を塞ごうかと思ったくらいだ。
だが、古泉の声は、いい。
むしろ聞きたい。







「ああっ、あ、きもちいです、すごくっ」
「そりゃよかった」
「ふ、うっ・・・あの、あのっ」
「ん?」







しばらくしごいてやったのだが、
古泉はいきそうだったくせに俺の手を止めさせ、
くるりとこちらを向いた。








「い、っちゃう、ので」
「だろうな」
「見てて、ください」






・・・・・・。



なんだ、その趣味は。




見られたいのか。
恥ずかしいだろうからわざわざ後ろに回ってやった俺の配慮を何だと思ってる。
まあ、お前がそう言うなら、
見てやらんこともないが・・・







「分かったよ」
「ありがとう、ございます」





向かい合って、
左手で太ももをおさえ、
右手で強く握る。
搾るように先まで擦るとぷくりと液体が滲んだ。
もう、あと少し。
わざと顔を見ながら擦り続ければ俺の名前を呼びながら高い声で喘いで上り詰めていく。







「も、うっ・・・だめっ・・・!」
「・・・・・・」
「いっ、ちゃ、い、ますっ・・・!あ、あああっ!」









涎を口の端から垂らして、
目を潤ませて、
眉は歪んで、
頬なんか真っ赤で、
手は俺の肩をしっかり掴んで、
甘く高い声で、
白い液体を勢いよく出して、
古泉は、達した。











まずい。

緊急事態発生だ。









制服に古泉のが飛び散ったことも問題だがそれ以上に、
なぜか俺が、
勃起しているじゃないか。




なぜだ!
古泉の痴態なぞに興奮してどうする!









「はあっ、はあ、はあ、ふ・・・きもち、よかった、です」
「お、おう」
「でも・・・足りないんです・・・」
「え?」
「もう一回、だめですか・・・?」






顔をのぞき込んで、うっとりした表情で聞いてくる。
同時にまた、俺の制服のボタンに手をかけて。





「一緒に、できそ、ですね」







俺の異変にいち早く気付いたらしい。
これは仕方がない。
事故だ、アクシデントだ。
英語にしたところで事態は変わらないが、そうなんだ。







「脱がして良いですか?」
「・・・勝手にしろ」
「はい。ありがとうございます」











人助けをすりゃ、
礼をもらうのも間違っちゃいない、
こんな礼だとは思わなかったにしても。
そして俺たちはお互い膝まで下着を下ろした格好で見つめ合うという異常な状況に置かれた。
何をやっているんだ俺は。
バカか、バカという言葉で片付けられるのか。
見られることに快楽を感じるわけでは決してないのに、
古泉に潤んだ瞳で見つめられるとやたらと鼓動が速まる。





「僕・・・乗った方がいいですか」






古泉もいつの間にか大復活、
早くしてくれと言いたいだろう、俺の肩を押してくる。



古泉が上になる、というのはいけ好かんな。
それなら俺が乗る。
ここまでやってしまえば仕方ない。
自分に言い聞かせ、古泉に跨った。
DVDでしか見たことのない姿勢だ。
俺の顔は古泉の股間を向いていて、逆に古泉の顔の前には、







「がんばり、ます」
「う、ぎゃ」
「んっ・・・」
「くぅっ・・・!」






心の準備をし終えるより前に、
体温をじかに感じる口内にそれを含まれた。
古泉だって初めてやるんだからぎこちない動きだが、
柔らかい舌が丁寧に絡みついてきて、
だ、
だいぶ、気持ちがいい。







「くそっ・・・!」







やられてばかりでたまるか。
お前がそうくるなら、俺だって、やってやる。



目の前で震えるそれを手で捕まえて、
舌を伸ばす。
出した後だから一部残っているわけで、
俺は自動的にそれを口にする。






うむ・・・苦い、に近い味だ。
旨くはない。
けど、そんなに、悪くもない・・・


わけないだろ、俺!







「あふ、うっ・・・舌、きもちい、れふ」
「喋るな、ばか」
「ふぁい・・・」








下からの刺激に耐えながら、俺も真剣にやってやる。
俺より敏感と見られる古泉は反応がよく、
ちょっと舐めたり吸ったりするだけで、
声を漏らしてびくんと体を跳ねさせるからつい楽しくなって、がんばってしまう。
これが古泉の罠なのかもしれないが・・・今は敢えてひっかかろう。






そして多分これも罠だった。
あとは少しの好奇心。
口に含んで舐めながらその辺を撫で回すと、
やたらとひくひくしている箇所があったものだから、
つい溢れた体液や垂れた唾液のついた指を擦りつけてしまい、








「んんっ!!そ、こは、だめっ」









とか嬉しそうに抗議してきたから爪くらいまで入れてみると、
口の中で古泉が震えた。








「んぐっ!!」
「ああっ、あう・・・!!!」





生暖かいものが口内に広がる。
吐き出すのはかわいそうだろうか、
というお人好し精神が働き、一気に飲み込んだ。








「ごめ、なさいっ・・・口に、出し、ん・・・ふ!?」










そして飲んだ瞬間、なぜか俺まで、出してしまった。










「ん、んっ」









不意打ちに驚きながらも古泉はしっかり飲み込んでいるようで、
変な征服感で満たされた。
飲み終えてから、
きれいにするように先端をちろちろ舐めてくれて、
その軽い刺激で俺の若さは再度情熱を取り戻してしまう。







「ふふ・・・元気、ですね」
「うっさい。お前だって二回目じゃないか」
「はい・・・気持ちよくなってもらえて、嬉しいです」








見られていることに気恥ずかしくなってきた俺は、
ひとまず顔を古泉の顔があるほうに向けた。






真っ赤になった唇が何かで塗れている。
俺の味がするんだろうか。
どうせ俺だってこいつの味がするんだ。構わないだろ、




「あっ・・・・・・・・・」 





キスくらい。




















「あ、あっ、あっ」
「古泉っ・・・」
「ん・・・、も、いいです、よ」
「まじか」
「はい・・・」





で、この状況。







授業もさぼって、
毎日来なきゃいけない部室で、
その床に古泉を横たわらせて、
俺は今、
初体験を迎えようとしている。





さらば我が貞操。


いやそれは古泉の台詞か?








「入れるぞ・・・」
「はいっ・・・」








お前はそっちの趣味があるのか、
元々俺とやりたくてこんなことをしたのか、
なんてことは聞かない。



別に、そうだとして何だというんだ。
事実俺は古泉に誘われてやりたくなってしまい、やることにした。
どうせ結果は変わらないんだ。








「あっ・・・あなた、のがっ・・・!」







きっつい入り口をこじ開けるように中に入る。
俺だって痛いから、古泉にかかる負担は相当だろう。
だが古泉には気にしないよう言われている。
だから遠慮なく、
入っていくしかない。






「入っちゃう、あなたのが、はい、っちゃい、ます」
「あ、ああ」
「嬉しいです・・・!」










嬉しい、か。





一つ分かったことがある、
こんな状況で一つだけ。
お前の意図はよくわからんが、
お前の気持ちは分かった。









「もう、ちょい」
「はいっ・・・!!」
「痛いだろ」
「ふ、う、うっ・・・だいじょ、ぶ」






泣くのも痛がるのも堪えながら俺を受け入れる古泉を見て、
興奮が収まるわけもない。


二度も出した上に痛い思いをさせられて、
辛いだけの癖に古泉は笑って見せる。
大丈夫です、
続けてください、
嬉しいから、大丈夫です。










「入った、けど・・・動いていいのか・・・?」
「はいっ」
「すぐいくかも、すまん」
「はいっ」







動くたびに顔が歪む。
ひっ、と悲鳴をあげて、
だけど、我慢して力を抜く。








きっかけなんてどうでもいい。







古泉、
お前に今だけ、言ってやるよ。









動きを早めにすると、
ついに涙が頬を伝う。
頭をわしわし撫でて、
キスをしながら押し込んだ。
そして耳元で言ってやる。






「・・・・・・古泉、好きだ」
「!!!!」
「一回だけな」
「・・・ぼ、ぼく・・・!!」







言わなくても分かってる。
話すのは辛いだろう。
お前の気持ちは十分伝わってきた。








今だけなのか、
我に返っても言えるのか、
分からないからずるい台詞だ。
それでもお前が喜ぶなら・・・いい、よな?









「こ、ずみっ・・・出、る」
「はあ、あ、うれし、ですっ」
「悪い・・・動き、早くする」











声を殺そうと手で塞ごうとしていたから、
そいつを押さえつけて出し入れを繰り返す。
古泉はびっくりして手をじたばたとさせたが、
俺が見たいんだ。
お前が苦しみながらもちゃんと受け入れる顔が見たい。
こんなの今日しか見れないから。
お前も、俺も、最初の日。
今日だけだ。



















事後、体を拭いたりしているうちに、
6時間目も終わろうとしていた。
さぼった理由を考えよう。
ハルヒの機嫌が悪くならない理由を真剣に。





「ん・・・・・・」





腕の中で俺の胸に頬を寄せて、
目を閉じている古泉が、
やっぱり、
愛しいような気がするから。







この後に閉鎖空間に向かうのはきつい。
俺が全力で阻止しよう。










「なあ」
「はい・・・?」
「今日の、ことさ」








言ってる途中に古泉が体を離した。
ごめんなさい、
小さな呟きと一緒に。









「あなたに甘えてしまいました」









先ほどまでの態度とは全く違う。
我に返ったのはお前か。
俺の気持ちは変わってないのに。
まあある意味、変わったか。
する前とした後じゃ。
けど、してる最中と後は同じだ。




「謝るなよ」
「で、ですが」
「古泉」







不安そうな目。
こっちから、
始めちまったから。






頭を二度撫でて。
俺は言ってやった。








「好きなときに甘えればいい」








今日が最初の日だから、
今日から始めよう。






俺・・・




お前が好き、だ。







thank you !

古泉を助けるキョン・・を書きたかったんですが、
ご覧の通りただの誘い受になりました。
裕さんの真意はご想像にお任せします(・∀・)

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