※イツキsideですがワケあってキョン視点です・・







「キョン君、どこに行ってたのー?帰ってくるの遅いぞー!」

家に着くなり、シャミセンを引き連れた妹が猫パンチをかましてきた。
適当にあしらって、メシは食べてきたからいらないと母親への言付けを頼み、
部屋の鍵を回す。


鞄を隅に放り投げてベッドに倒れ込むと、
すぐにさっきまでの出来事がプレイバック、だ。




目も頬も唇も真っ赤になって泣きながら、古泉は必死に抵抗した。
終始体は震えていて、
終わったときには気を失いかけていたような様子だった。
俺が何を言っても反応しなかったからな。

言い訳したって謝ったってどうせなにも変わらない。
する気もない。
俺はただ、明日も学校に来てくれよ、とだけ伝えたかったんだ。



古泉は、とにかく、かわいかった。
いつもの演技めいたスマイルなんざ、かけらもなかった。
ただ俺のことだけを考えて、
俺だけを受け入れて、
俺だけに支配されてたんだ。
機関とやらにあんなコトは、できないだろ?
怪しげな名前だからもしかしたらとも思ったが、
古泉の反応はどう見たって初めてだったからな。




あれ・・・
何か、忘れてないか?



火傷−5 side-I



翌日、
部室に一番最後に来た副団長の姿は、それはもうひどいものだった。
目の周りを腫らして何度も拭ったせいか赤くただれていて、
いつもつややかな髪もまとまりがなく乱れている。
いつものきっちりとした姿を見慣れているだけに、
ハルヒや朝比奈さんは目を丸くして、
長門も珍しく本から視線を動かした。


ちょっと待て、
俺は、
お前のことだから何事もなかったような顔をして来ると思ってたんだ。
なんて顔だ。
まさかハルヒに言うつもりじゃないだろうな?

「ちょっと古泉君!一体なにがあったの!?宇宙人にでも襲われた?」 

こんなときにも楽しそうなんだな、お前は・・・。
古泉はハンサムスマイルだけは崩さずに、肩をすくめてハルヒに言う。



「いえ、そんな楽しい話ではなくて恐縮なのですが、昨夜飼っていたハムスターが
 亡くなりまして。情けないことですが一晩中悲しみに明け暮れ、気がついたら
 寝ていたのですが、この有り様でした」


また風変わりなフォローをし出したな。
お前の家でハムスターなんて、見なかったぞ、勿論。
飼ってる姿も想像・・・は、できるな。なんとなく。


「そうなの…。それは辛かったわね。古泉君!今日は無理しなくていいわ。
 喪に服しなさい。これは団長命令よ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、今日はお先に失礼します」
「すぐには無理だと思いますけど、元気、出してくださいね・・・」

朝比奈さんは自分のことのように目を潤ませて古泉を励ました。
にこやかに礼を言い、部室を後にした奴を追おうと立ち上がったとき、
長門が袖を掴んだ。首を横に振る。




こいつはどこまで知ってるんだ、一体。
それとも普通に気遣ってるだけなのか?こんなときは一人にしてやれと。


逡巡しているうちに古泉の足音は聞こえなくなって、
仕方がないのでまた椅子に座り直した。
そして不意に、思い出す。





まだあいつの口から、好きだと聞いていないんだよな、と。
そのために家に行ったはずだったのに、
あいつの緊張しまくった顔を見ていたら頭に血が上って、
武力行使に出ちまった。


ちゃんと、聞かないと。




*************





チャイムをもう10回は鳴らした気がする。
ドアに耳をぴたりと押しつけても、物音ひとつ聞こえない。
携帯電話も留守番電話に直結だ。


そっちがそのつもりならいいさ。
何かで外に出ることもあるだろ、
ここで待たせてもらうよ。
最悪明日の朝になるかもしれないけど、それでも、待ってやる。








「あ…あの、こんなところで何を、されてるんですか?」


聞き覚えのある声と肩にかかる手の感覚で、
いつの間にやら落ちていた夢の世界から脱出した。
こんなとこで寝ちまうとは、案外俺も昨日の寝不足が効いてたみたいだな。
授業中は本日ほぼ陥落で合計睡眠時間はいつもよりオーバー気味だったのに。

古泉は制服姿のままで、手にコンビニの袋を持っていた。
なんだ、まだ帰ってなかったのか?



「軽度ですが閉鎖空間が発生しまして」

それは俺が居眠りしすぎたせいかもな。

「僕に、用ですか?上がられます?」


古泉の笑顔がいつもより寂しげに見えたが、
こいつが故意に俺を無視して居留守していたわけじゃないと知って、
安心した気持ちの方が大きいので、気にしない。




改めて古泉の部屋を見渡すと、本棚に収まっている1冊の本が目に飛び込む。


「なんだお前、ほんとにハムスター飼ってたのかよ」
「ええ。だいぶ前のことですが」
「中学ん時?」
「はい。一人暮らしは寂しいだろうと、機関が薦めてくれたんです」


手がかからないし、可愛らしかったですよ、と古泉はコップに麦茶を注ぎながら、言った。





中学の頃から一人暮らしかよ。
義務教育時代だぞ。
俺は今だって母親がやってること(洗濯とか、夕飯の準備とか)を
一人でやる自信なんかないぞ。
中学生なんて、ガキじゃないか。
一人暮らしって、なんだよ。


親はどうしたんだよ。
機関も、ハムスターじゃなくてもっと傍に置いてやるべきものがあるだろうが。


「古泉」
「はい?」


こいつの感情を隠すような笑顔は、機関仕込みか?
こんなことを教えるのが一番大切だったのか?
もっと教えてやることが、たくさんあったんじゃないのか?


「この部屋、機関以外で誰か来たことあるのか」



指を顎に当ててから、ハルヒにそうしたようにまた、
笑顔で肩をすくめる。



「機関どころか、あなたが唯一の訪問者ですよ」




あのな。

俺だってな、あんまり付き合いはいいほうじゃないが、
バカだけで集まって解けない宿題と奮闘したりとか、
新発売のテレビゲームを大いにはしゃいで遊んだことくらい、あるぞ。


お前には、何もなかったのか。
誰もいなかったのか。
ずっと一人だったのか。
そうして最初の友人が俺で、
最初に部屋を訪れたのも俺で、
そんな俺に、
あんなことをされちまったのか。



「そんな顔、しないでください」



どんな阿呆な顔をしていたのか、
古泉の声に動揺の色が混じる。
でも笑顔は、そのままだ。

こいつの表情が演技じゃなかったのは、
昨日の、あの時だけだった。
笑うな。
笑うな、古泉。



「あ、の・・・?」


立ち上がり古泉の腕を引く。
力の入っていない体をそのままベッドに放ると、
また泣きそうな顔になる。


「昨日のようなことは、嫌です」
「何が嫌だったんだよ」
「腕を・・・縛ったりだとか、口を塞ぐのとか」


今にも、泣き出しそうだ。
これが、誰にも教えられていない、
命令もされていない本当の古泉なんだ。
演技なんかしてない、本物の古泉。
俺が一番知りたい、古泉だ。


「分かったよ、じゃあそのままでいいから、でかい声出すなよ」
「え、ええと、痛いのも、嫌です」
「分かったから」


両手を枕の横に押しつけて震える唇を舐めると、
体全体に電流を走らせたように反応した。
昨日もやっただろ、敏感すぎだ。


舌で歯もその裏も舌もぜんぶ味わう間、
古泉はずっと堅く目を閉じていた。
勿体ないな。
開けていたらきっともっと、かわいいのに。








泣いて嫌がる古泉を得意の脅しで黙らせ、
昨日俺を受け入れた場所に口づけると、
古泉は聞いたことのない声を上げて震えた。
そんな姿がかわいくてたまらなく、
内股に垂れるくらいまで舐めてやると、
柔らかくするりと指を受け入れるように変化した。


中指で内側を撫でながら前もゆるやかに梳いてやると、
高い声で泣いて薄いブルーのシーツに真っ白な液体を落とす。




本当にたまらなかった。


何も言っていないのに泣いて謝る古泉が。
初めて出来た友人にこんなことをされて、
そうしなければ素顔を見せられない古泉が。



普段なら絶対にこんなことは言わないだろうが、
この時ばかりは雰囲気に飲まれてしまい、
俺は古泉の下の名前を呼びながら侵入した。



一度吐き出したはずの古泉は、
耳元で名前を呼んでやっただけでまたも反応してびくびくと動き出す。




なあ、古泉。


お前は、俺が好きなんだろ。
だからこうなるんだよ。
言わなくたってばれてるんだから、
もう言っちまえ。




一度引き抜いて仰向けにさせてから、
両足を肩にかけて再度、入る。
苦しそうに呻いたが、
こうしたほうが顔をちゃんと見れるんだ。


手の甲を噛んで耐えて、
涙で真っ赤な頬をぬらしている、
俺が一番好きな、お前だ。



「かわいいな、お前」
「や、いや、見ないで、くだ、あぁっ」


言葉になってないぞ。
ああ、かわいいな。
俺にだけでいいよ。そんなお前を見せるのは。
他の奴らに見せたら疲れるんだろ。演技する方が、楽なんだろ。
疲れるのも苦しむのも、俺の前だけにしておけ。
俺はお前が本当のお前を忘れないように、するから。


「ひっ、あっ、あああっ」


呼吸もままならない様子で喘ぎ続けて、さすがにキツそうだ。
俺としてはこのままがいいんだけどな。かわいそうか。
少し楽にしてやろうと、もう一度抜いてから体をベッドに押し付けて、
後ろからゆっくりと、焦らすように、入れる。


「ふ、あ・・・あ、ああ、う、」


また目の焦点が合わなくなってきた。古泉の体が限界に近いんだろう。
それとも、頭の方か?


「なあ・・・いつ、き」
「っ!は、い・・・あ、ううう、んんんっ」
「俺のこと、好き、なんだろ」


今なら言えるだろ。
聞いても、後で、聞かなかったことにしてやるよ。
お前は気を失いかけていたことにしたらいいじゃないか。


ベッドとの間に手を滑らせて前も触れる、もう、こっちも限界だな。
行為そのもので感じてるわけじゃないよな、
そんなに良くないだろう、まだ。
名前を呼んだから、こうなるんだよな、お前は。


「あ、ああああっ、や、やめ、て」
「好き、だよな?」
「う、ううっ、や、やだっ」



おいおい、今度は刺激に負けすぎだ。こっちが聞いてるのに、仕方ない奴だな。
まあいいか、お前が達する瞬間の顔は、好きだ。
声も、好きだ。



全部、好きだ。




「いや、いや、も、むり、っあああ・・―――!!」


奥まで一気に貫いてやると、呆気なく、
古泉の全身は一瞬硬直して、すぐに脱力した。


もう少し頑張れると自分では思っていたものの、そんな古泉の姿を
見ていたら臨界点を軽く突破してしまい、直後に俺もそんな古泉が
壊れるような扱い方をして、中に、全てを吐き出した。







呼吸が全く整わないままの古泉に、聞く。


「お前さ・・・気持ちよかった?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「2回も、イっただろ」


うつぶせのまま顔は見せずに、小さく一度だけ、頷いた。
そうか。
昨日は、かなり、自分勝手だったからな。一応、反省していたんだぜ。
よかった、お前もそう思っていたなら。


「あと・・・」
「・・・・・・・はい・・・」
「俺のこと、好きだろ」



動きが、止まる。
呼吸もやめちまったみたいに、動かない。
なんだよ、そりゃ。




じっと黙って答えを待っていたが、
返ってきたのは、古泉の泣き声だけだった。


「・・・・おい」
「・・・・・ごめん、なさい」


ごめんなさい。
ごめんなさい。


途切れ途切れに何度も、謝った。


そうか。



そんなにお前が抱え込んでるものは、重たくなってんだな。
じゃあ俺が、変えてやるよ。
何度だってこうしてやる。
お前は、きっと、いつか俺に負ける。
機関だとかハルヒだとか世界だとか、そんなもん、
どうでもよく思えるくらい、壊してやるよ。




そのときまで、しかたないから、

待っててやる。




thank you !

長いでござる〜!!2つに分けた方がよかっただろうか・・
side-Iなんですが、いっちゃん視点だとキョンの感情が見えてこなさ過ぎて、
どう考えてもハッピーにならなかったのでキョン視点に変更しちゃった。
(ひとえに力量不足であります。。。)
これがハッピーかどうかはおいといてw → いつき視点はこちら
side-I完結です、ありがとうございました!

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