おずおずと自分の部屋なのに一歩一歩確かめるように歩いてくる
古泉がもどかしくて、腰を上げて腕を引いた。


「や、やめてくださいっ」


反応が良すぎる。
だから、別に、何かしようってんじゃないんだ。
お前が、意識しすぎなんだよ。


「わかったから、さっさと来いって」
「・・・はい・・」


律儀にひざの上に手をあわせて座り、面白いほどガチガチに固まってる。
それでバレてないつもりなのかよ、お前は。バカか。知ってるけどな。



火傷−3 side k



普段の笑顔は見ているとどうも体に毒だが(いろんな意味で)、
こんな風に俺と目を合わせようとしない古泉は、観察しがいがある。
なめらかな肌に柔らかくて少し癖のある髪が揺れて、
そのたびに視線が少しずつ落ちる。そのたびに頬も赤くなる。
見られるだけでこれだ。
本当に、かわいいな、お前は。


「えっ・・・!」


ただ座ってるだけじゃ場所を変えた意味がない。
古泉の首が完全に直角に曲がってしまう前に、頭を腕で抱え込んでやる。
やわらかい後頭部に唇をつけると、古泉の甘い匂いと、少しの汗の匂いが
混ざって嗅覚を刺激する。嫌いじゃないな、この匂いは。


「こ、困ります。離してください、何もしないって言ったじゃないですか」
「これ以上はしない」
「いえ、これ以上とか、以下とか、そういった問題でもないのですが」
「なんだよ、我侭な奴だな。。」
「わがままですか!?」


抵抗するので仕方なく手を離すと目を丸くして驚いている古泉が見れて、
こんな顔も出来るんだなと感心した。
やっぱり言ってみて正解だっただろ、
お前もしょうもない演技をしなくてもいいんだよ、ここではな。


「古泉・・・お前、かわいいな」


ついついうっかり口に出しちまったが、出してしまったものはしかたない。
俺も男だ、腹を括ろう。ここまで来たんだからな、わざわざ。


「・・・あなた、本物ですよね?」
「どういう意味だ」
「言ってることが滅茶苦茶なもので」
「俺は正気だぞ」
「そうとは、思えないんですが・・・」


人が腹を括ろうと決心しているときに何だお前、それは。
しかし一度口に出してしまうと、あきれてため息をついている
姿すらかわいく見えるのは、俺の頭がおかしいのかね、やっぱり。


「あ、頭をなでないでください・・・」
「なんでだよ」
「うう・・・」


柔らかい。
形の整った頭を撫でていると、どうしても、したくなってくる。


「古泉、なあ、してもいいか?」
「はっ!?」
「口だけ」
「い、意味が分かりません!」


立ち上がろうとするので腕をがっちりと掴むと、
捕らえられた子兎のような怯えた目で見ている。
なんだよ、取って食っちまおうってわけじゃ・・・
あるかもしれないが、ちゃんと許可を取ったじゃないか。今回は。


「古泉」
「駄目です、駄目です。拒否します」
「俺はしたいんだが」
「ぼっ・・・僕は、したく、ない、です」
「本当かよ」


また顔、赤いぞ。
いつもの気持ち悪いくらい近づける癖はどうした、
今やっても怒らないぞ。
小さく頷いているが、わからん。そんなのじゃ。


両手でがっちり耳を掴んで抑えて、まじまじと、見つめてみる。


「離してください・・・」
「別に何もしてないだろ」
「そうですけど」


我慢、我慢。


「ほんとにかわいいな」
「思ってもいないことを、言わないでください」
「思ってないことを言うかよ」
「・・・本気ですか」
「さっきから言ってるだろーが」


まったく、どこまで素直じゃないのかね、こいつは。


「涼宮さんでもいいじゃないですか、お相手は」
「なんでハルヒが出て来るんだよ」
「可愛らしい女性ではないですか」
「まあ、そうだな」


ハルヒとはな、一応、したことはあるんだ、
思い出したくない過去だけどな。
あれは100%、誰が見ても不可抗力だ。


「でもお前としたいんだよ」
「分かりません」
「してもいいか?」
「人の話、聞いてませんよね・・・」
「お前が好きなんだよ」


「・・・え?」



そうだな、たぶん。
こいつからその言葉を聞きたくて家まで押しかけ、
とりあえずもっかいキスしたいと思うのも、
たぶんそうだからだろ。


ああ、
ハルヒも朝比奈さんも長門も同じくらい、
好きだと思うけどな?



「・・・。」



余計なことは言わないでおこう。
古泉は陥落寸前と見た。



「・・・古泉」
「あ、・・・」


頬が熱い。お前にも見せてやりたいよ、今の顔を。
そうすれば俺の気持ちが少しは分かるだろ。
我慢できるわけ、ないんだ。
ゆっくり、嫌なら拒否できるスピードで、口付けた。
びく、と小さく体を揺らしたが、今回は突き飛ばしてこない。


髪だけじゃないな、柔らかいのは。


ひとしきり唇を堪能させていただき、放心状態のままの
体を抱きしめてみる。8センチ差か、あんまり分からないもんだな。
猫背ってわけでもないし、まさか、俺の座高が高いわけじゃないよな・・・?


小さく首を振って古泉に目をやると、
相も変わらず真っ赤な顔で、
何かを言おうと考えをめぐらせている様子だ。



「何かあったら、俺が神様に謝ってやるよ」
「・・・そんな、そんなことで、済むとは」
「済まないような世界だったらなくなっちまえばいいって」


非難めいたことを言おうとしたのでまた口を塞ぐ。
開いていた口に舌を滑らすと、ずいぶんと熱を帯びた
古泉の舌にたどり着く。
さすがに驚いて腕を握ってきたが、抵抗の意ではない(と受け取る)。
動かない舌を必死に舐め続けていると、おずおずと動き出した。
舌先が触れ合うと頭がじんじんとしてきて、これがまた、たまらない。


息が続かなくなってようやく口を離すと、
端からどちらのかわからない唾液が顎を伝う。
想像以上の気持ち良さだった。なんだ、これは。


古泉の目もとろんと瞼が下がって、呆けている。


「古泉、好きだ」
「・・・、あの、その、」
「お前もだよな?」
「・・・・・・・・・・・・」
「違うのかよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・好きです」


強行突破、成功だ。


「ああ、知ってる」


古泉の体をゆっくり、ベッドに倒してやる。


ここからも強行突破・・・できる、か?




thank you !

キョンルートはキョンデレ(´∀`)もうデレデレですね!誰だよ!
続きはもうどうしようもない話になってます。バカ全開の18禁(ぬるめ)です。
続きを読んであげる

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